222.空白の半年間の日常
第222話
高松是政が引き起こしたゴールデンウィークでの事件から半年が過ぎた。
その間の期間は色々と忙しかった。
まず、懸念だったのは美冬ちゃんに対する学園の皆の反応だったが、これに関しては事前に岩倉家や三条家が『高松美冬は父である高松是政に無理やり従わさせられた可哀想な娘』という話をあちこちで広めていたため、美冬に向けられる視線は幸いにも同情や心配というものが多かった。何より、陽菜や莱們ちゃんが今まで通り...いや、今まで以上に美冬ちゃんと仲良く接していたのも大きかったのだ。
最初はかなり落ち込んでいた美冬ちゃんも時間が経つにつれ、段々と元気を取り戻していった。友人関係もそうだし、さらには拘置所に拘留されている是政との月に一度の面会が叶っているというのも一因だ。
美冬ちゃん曰く、自分と話す内に是政も少しずつだが正気を取り戻しつつあるのだとか。何なら、このまえは美冬ちゃんの学園生活の話を聞いて是政は何年ぶりかの心からの笑顔を見せてくれたらしい。
『玲奈様!本当にごめんなさい...そして、本当にありがとうございました!』
顔を合わせる度に美冬ちゃんからは何回もこう言われたっけ...そのぐらい、私は美冬ちゃん感謝されているのだ。
それでも、一部の生徒の中には美冬ちゃんに心無い発言を浴びせていた意地悪な輩もいたが、私やグループメンバー、陽菜や莱們ちゃん、さらに憩美ちゃんや美織ちゃんにも協力してもらって、各学年にてそういった発言を取り締まった結果、5月が終わる頃には美冬ちゃんの件は話題に挙がる事もなくなっていった...
運動会ではとあるアクシデントで眞美ちゃんが拗ねてしまい、その原因を作ってしまった憩美ちゃんが必死に平謝りしてたり...筑波百子とその一味から、とある競技にて強引に勝負を挑まれたり(もちろん、勝敗は言うまでもない)と波乱尽くしだったが、意外と楽しい思い出になったものだ。
次に夏休みだが、今年は事前に本人にキツく忠告をしていた事もあり、滓閔の宿題騒動にも巻き込まれる事もなく無事に満喫できたよ...!
...と、言いたいところだったのだが、とある別の出来事で私は悩まされる結果となった。あの出来事は今でも思い出してしまうと、心臓がバクバクしてしまう...そんな感じだ。
(まぁ、ここで言うのも恥ずかしいし...この話は今度にしようかな...)
その後、秋になってからは特に変わった出来事はない。単に3年生の時よりもテストの回数が増えたくらいだ。
しかし、日々の勉強会の成果もあってか、私達のグループで赤点を取る子が一人も現れなかったのは本当に良かったものだ。
(ふぅ...これで玲奈グループは家柄とかだけではないと十分に証明できてるはずだよね?)
そして、今はというと...
「玲奈様~!今日も私に色々と教えてくださ~い!」
「玲奈お姉様!今城様ばかりずるいです!私にも教えを授けてくださいよ!」
「えっと、美織ちゃん...敦鳥ちゃん...」
私はなぜか、岩倉家の屋敷にて美織ちゃんと敦鳥ちゃんにそう迫られている最中だった。




