221.高松美冬は光を得た
第221話
そんな感じで陽菜を逃がした際の事を思い出していた美冬の目にはいつの間にか、溢れんばかりの涙が溢れていた。
(莱們ちゃんも...陽菜ちゃんも...萌留ちゃんも...滓閔ちゃんも...皆が私を許してくれた!)
是政が警察によって連行されていった後、美冬はグループメンバー全員の家に謝罪しに回っていた。
幸いにも莱們の両親からは莱們から高松家の過去の事情を聞かされていた事もあって『今回の件は自分達にも非があった』という事でむしろ、向こうから謝罪を受けたぐらいだ。
莱們の両親と同じように陽菜の両親からも過去の一件を同情され、美冬が責められるような事はなかった。
その一方で全員が優しく許してくれたというわけではない。萌留と滓閔の両親からは物凄く責められた。
まぁ、それも仕方のない話だろう。元々、萌留と滓閔は美冬の過去の一件とは全くの無関係であり、こんな目に遭ったのは明らかに理不尽すぎたからだ。
さらに責め立てようとする両親を萌留と滓閔が必死で止めているのを見て美冬は改めて本当に申し訳ないと思っていた。
(うん!せっかく、皆が赦してくれたんだもの...これからはその恩を返すために頑張らないと!)
ゴールデンウィークが明けた後の学園生活では自らの父である高松是政がやった犯罪やその末路が噂され、後ろ指を指されるような日々が待っているだろう。
今回の件にて岩倉家や三条家の配慮により、表面上は美冬は傲慢で暴力的な父親に無理やり従わさせられた可哀想な娘という事になってはいるが、それでも実の父親が犯罪を犯した事は事実なのだ。きっと、陰で美冬を悪く言うような輩も出てくる事に違いない。
それでも、美冬は挫けるつもりはなかった。
(莱們ちゃん...陽菜ちゃん...萌留ちゃん...滓閔ちゃん...私!あなた達がお友達でいてくれて本当によかったよ!もう同じ過ちは繰り返さないから!そして、玲奈様!私にもう一度チャンスをくださって本当にありがとうございます!私...これから、自分がすべき事が分かった気がします!!)
こうして、高松美冬という一人の少女は玲奈や陽菜や莱們によって救われ、光を得たのだった...
・・・・・
とある場所の一室にて、誰かがポツリと独り言を話していた。
「あ~あ...奥田家に続いて高松家でもダメだったか~!どうやら、思った以上に岩倉玲奈のスペックと彼女が築き上げた人脈は凄いみたいだね~!うん!やれやれ、高松美冬は失格か~。」
がっかりしたような台詞を吐いてる割に、その人物は笑みを浮かべていた。
パキンッ!!!!!
そして、同時にその人物の近くの棚に置かれていた無数の不気味な仮面の内の一つ...『高松美冬』という字が彫られているライオンの形をした仮面が誰も触れていないにも関わらず、突如として大きな音と共に粉々に崩れていった...
ゴールデンウィーク編終了~!




