216.呆気ない決着
第216話
「.........といった形で私は岩倉様が大好きになったって感じですかね~?」
「へぇ~。」
「なるほど、そうだったのですか...」
美織ちゃんからの説明を聞き終えた私はというと...
(忘れてた...あの時の私って予想以上に悪役令嬢ムーブしてたんだったー!)
心の中で動揺を隠せていなかった。
確かにグループディスカッション発表会の時は最後の最後で口が勝手に動きだすという私が予想していなかった謎の現象があった事を差し引いても、日咲の罪を暴露して断罪しようとした事は他ならぬ事実なのだから...
(待って...この子、もしかすると私の悪役令嬢ムーブを崇拝しちゃってる?)
もしも、美織ちゃんがグループディスカッション発表会での私の行動を正義の鉄槌などではなく、悪役令嬢の横暴な振る舞い...的な感じに認識しているとするなら非常にまずいのだ。
なぜなら、この子の話がきっかけで【岩倉玲奈=悪役令嬢】という誤った認識が広まってしまえば、将来的に私の破滅に繋がってしまうかもしれないからだ。
「ふ~ん?じゃあ、今までの過剰すぎるまでの礼儀正しさも中山家の人間を欺くために身につけたもので、今のが素なんだ?」
「はい!自分でやっててなんですが正直、気持ち悪いな~!と思ってたんですよ!」
第三者から見ると一見、美織ちゃんはただの礼儀正しい子に見えるだろうが、中にはその振る舞いに違和感を覚える人間だっているだろう。
そう...特に他人への観察眼が非常に鋭い上位の貴族の人間とかにはね...
「えっと...それで美織ちゃん、ちょっと質問なのですが...あなたから見てグループディスカッション発表会の時の私はどんなイメージで印象に残ったのですか?」
「えっ?う~ん?...まぁ、そりゃ~!悪の女王様的な感じですかね~?伊集院日咲とかいう奴とその一味の策を瞬く間に見抜き、容赦なく断罪する姿はほんとにかっこよかったですよ~!なので、私も目的のためならば...」
あちゃー!やっぱりかー!私、完全にやらかしちゃってるじゃん...
(まずい...何とかしてこの子の私の認識を改めさせないと!)
美織ちゃんの返事を聞いたほんの数秒の間に私は頭の中で必死に上手い言い訳を考えていた。当然、美織ちゃんには悟られないようにね...
そして...
「美織ちゃん、一つ訂正しておきますね。あの時の私は悪役令嬢みたいな感じで断罪したのではなく、この学園の指導者として一部の生徒の誤りを正したに過ぎません。私はあなたが思っているような人間ではないと思うのですが?」
「わ~お!言いますね~!まぁ、確かにここ最近は他の公爵家や皇族の方達に同年代の子は少ないので岩倉公爵家の娘であられる岩倉玲奈様がそう言うのも納得ですかね~?」
内心では思わず口から出てきてしまったと焦ったが、実際に現時点の明成学園には皇族の生徒は在籍しておらず、公爵家の生徒も私を除いたら兼光と莱們ちゃん、耀心くん姉弟のみなのであながち間違ってはいない。
その事を思い出すと私は冷静さを取り戻した。
「というわけですので...悪の女王ではなく、この学園の指導者的な感じで認識していただきたいのですが...」
「そうだよ!玲奈お姉ちゃんは正義の味方を人の形にしたようなものだもの!」
陽菜ぁ...擁護してくれるのは嬉しいんだけどね?私はあなたが思っている程、良い人間というわけではないんだよ?
「う~ん?私的にはどっちでも良い気もしますがね~?」
いや、私が良くないんだよ!!
心の中でそう突っ込んだ時、突如として電話の音がした。音は私と陽菜の携帯からではなく、今城家の電話から鳴っているようだった。
「あっ!少々お待ち下さいね~!」
そう言うと美織ちゃんは電話に応答し、誰かと会話しているようだった。
そして、しばらくして会話を終えると...
「玲奈様に陽菜様!良かったですね~!お二人が気にしてるであろう高松家の一件ですが...どうやら、全てが解決したみたいですよ~?」
「はい?」
いやいや!こうも呆気なく解決しちゃうものなの!?




