207.知らぬ間にとんでもない恨みを買っていたらしい...
第207話
「陽菜?いったい、何があったのですか!?」
「ううっ...玲奈お姉ちゃん!ぐすっ...」
私は泣いている陽菜を何とか宥めて事情を聞こうとしていた。
「あのねっ!ぐすっ...!美冬ちゃんのお父さんがね...!ううっ...」
「ん?美冬ちゃんのお父さんがどうかしたのですか?何かトラブルでも?」
えっ?美冬ちゃんのお父さんは高松家の現当主だよね?陽菜とその人との間で何か些細なトラブルでもあったのかな?なら、私からも何とか仲裁に入ってあげようかな?
...なんて、軽い気持ちで聞いてみた私は次の瞬間には己の考えの無さを自覚させられる事になる...
「美冬ちゃんのお父さんが...!私と玲奈お姉ちゃんと莱們ちゃんを殺すって...!そう言って皆が人質にされちゃったの!」
「「はぁっ!?」」
私と...陽菜の話を盗み聞きしていたらしい宇土丸くんは驚愕していた。
いやいや!だってだよ!?仮にも子爵家という貴族であるはずの高松家の当主、高松是政が私と陽菜と莱們ちゃんを殺そうとしてるだって!?驚きでしかないじゃん!!いったい、何が起こってるというの!?
「いったい、どういう事ですか!?」
「私にも分かんないよっ!!美冬ちゃんの家に隠れていたら、美冬ちゃんのお父さんがいきなり...」
「それに莱們ちゃんと萌留ちゃんと滓閔ちゃんが人質にとられたですって!?」
「うん...美冬ちゃんが私だけ逃がしてくれたの!!玲奈お姉ちゃんに危険を知らせてほしいって!」
今のところ...話は断片的にしか聞けていないが、それだけでも私一人では到底、解決できそうにはない。
とりあえず、待たせている憩美ちゃん達には申し訳ないけど...ここは一旦、家に帰って親達と相談するしか...
「それとね!私達が捕まった後、美冬ちゃんのお父さんは近くにいた怪しい男の人達に岩倉家に向かえって言ってたの!!ひょっとして、パパやママも殺されちゃうんじゃ...怖いよぉ!!」
おいおい...それが事実なら家にも帰れないじゃん!万が一にもその男達と鉢合わせでもしたら、私や陽菜がどんな酷い目に遭わせられるかどうか...
「とりあえず、岩倉様は妹様を連れて車でどこかに逃げておくべきっすよ!」
「そうですね。あっ、宇土丸くん...あなたにお願いがあるのですが、憩美ちゃん達に私が急に戻れなくなる旨を伝えてきてくれませんか?ダメならば構いませんが...」
「もちろんっす!自分にお任せを!それよりも岩倉様は早く妹様を連れて安全な場所に避難するといいっす!」
私は宇土丸くんに憩美ちゃん達への伝言を頼む事にした。使いっ走りみたいで申し訳ないが、今はそれを謝る猶予もないくらいの緊急事態なのだから...
「さぁ、陽菜!とにかく車を停めてある駐車場へ行きますよ!詳しい話は車の中で聞かせてもらいますからね!」
「うっ...うん!」
果たして、この日...陽菜達の身に何が起こったというのだろうか...




