202.ほんの些細な悪戯心
第202話
ゴールデンウィーク2日目の事だった...
「よし!準備完了だね!」
「はぁ...何か玲奈お姉様に悪い事をしてる罪悪感があるんだけどね...」
「うん、私もドキドキするよ...」
「ドキドキが止まらないのです~!」
陽菜、莱們、萌留、滓閔...そして、美冬の5
人...いわゆる、3年生組は美冬の家に集合していた。全ては陽菜が考案した計画を実行するためだった。
「美冬のお父様も...わざわざ、陽菜の勝手な計画にご協力していただき本当にありがとうございます。」
「いえいえ!三条様。私としても娘の友人の力になれたらと思っていたんですよ。たまにはこういうのも悪くはありませんね~!」
「へぇ~、美冬ちゃんのお父さんって優しいんですね!」
笑顔を浮かべて笑いながら、莱們や陽菜に話しかける是政を美冬は複雑な気持ちで見つめていた。
自分だけ...美冬だけは分かっているのだ...
父の優しそうなあの笑顔は全くの偽りであり、実際に心の中では莱們の事を仇の家の娘として強く憎んでいるということを...
遂に今日、陽菜が立てた計画を利用して高松家に復讐を果たそうとしていることを...
そして、何より...なぜか、母と姉の死には無関係なはずの岩倉家の姉妹をも同時に始末しようと考えていることを...
(あぁ...陽菜ちゃん...玲奈お姉様...)
百歩...いや、一万歩譲って今回の標的が莱們だけであったのなら、まだ良かった。
今や、すっかり友達となった莱們が傷つけられるのは酷く悲しいが、復讐すべき高松家の娘として生まれた事を恨むべきなのだと心のどこかで必死に言い聞かせる事ができたのだから...
しかしだ。莱們のみならず、玲奈や陽菜も標的とされているとなると話が変わってくる。莱們と違って、母と姉の死には無関係なはずなのだ。それなのになぜ、自分達の復讐に彼女達を巻き込んでしまわないといけないのだろうか?
「美冬ちゃん、どうしたの?顔が強張ってるけど...」
「あっ!いや?何でもないよ!」
「ノーノ~!萌留ちゃんは分からないのですか?美冬ちゃんは緊張の塊...緊塊と化してるのですよ~!」
「まぁ、そんなところ...って!人を金塊、ように例えないでよ~!」
陽菜や莱們だけではない...今もこうしてじゃれあっている萌留や滓閔も自分と父の計画を知った時、果たしてどのような反応をするだろうか?
失望による呆れ?
裏切りに対する怒り?
このどちらかには違いないが、どっちだったとしても今まで通りの関係を続けられなくなるのだけは確かなのだ。
(ねぇ?ママ...お姉ちゃん...私はいったい、どうすればいいの!?)
美冬が天国にいる母と姉に心で問いかける合間にも計画は進んでいった...
・・・・・
「あっ、憩美ちゃん!お待たせしました!」
「玲奈さん!待ってましたよ~!」
こうして、運命のゴールデンウィーク2日目が幕を明ける...




