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ミラピュア~破滅回避への物語  作者: たかくん
初等部4年生編
201/317

198.哀しき悪役として...


第198話



ゴールデンウィークが目前に迫っていた頃、岩倉家の屋敷とは別の場所では...



「ほぅ?そうか!そうか!上手く岩倉家の小娘を利用できて何よりだ!美冬、本当によくやったな!!」


「はい、ありがとうございます...」



高松子爵家の当主である高松是政が自らの娘の美冬の事を絶賛していた。



「これで、ついに...憎き三条家へ復讐を果たせる!惟子と真冬の仇がとれるのだ!」


「.........」



三条家の者の手によって最愛の家族を失った二人から見れば喜ばしい事のはずだった...しかし、その内の片方...美冬の表情からはなぜだか喜びらしき色は見えていなかった。



「ん?どうしたんだ美冬。やっとだぞ?お母さんとお姉ちゃんを奪った相手に復讐ができるというのに...」


「...あっ!いいえ!!私も本当に喜ぶべき事だと思っていますよ!!」



美冬の様子を不審に思った是政が声をかけるが、美冬は咄嗟に取り繕う。



だが、心中は穏やかではない。何せ、自分達の復讐に大切な友人を巻き込んでしまう事に完全に罪悪感を抱いているからだ。



「まぁ...気持ちも分からなくはないぞ?偽りとはいえ、お前は三条家の小娘とは友達として接してきていたからな...」


「えっ?では...」



父の言葉に美冬は一瞬だけ期待した。もしかしたら、莱們を巻き込まずに済むのかもしれないからだ...



だが、現実は非情だった...



「しかし、心を鬼にしないといけない時もある。三条家の人間を根絶やしにしてこそ、俺達の復讐は果たされるのだからな!美冬にとっても心苦しいだろうが我慢してほしい」


「そう...ですよね...」



予想はしていたが...やはり、莱們を救う事はできないみたいだ。



(莱們ちゃん、ごめんなさい...この罪は死んだ後に地獄で償います!)



父の言葉に覚悟を決めた美冬だったが、続いて父の口から放たれた言葉は予想外のものだった。



「それとだ。前から伝えようと思っていたが、計画を少しだけ変更する...三条莱們と同時に岩倉家の姉妹も始末する。」


「えっ?...なんて...」



突如として三条莱們のみならず、岩倉陽菜と岩倉玲奈を始末すると言い出した父に美冬は驚きを隠せなかった。



百歩譲って三条莱們だけなら、大切な肉親を奪った家の娘として生まれたのが不運だったという事で非情になれる事ができたかもしれないが、全く無関係なはずの陽菜や玲奈を巻き込むだなんて美冬からすればとんでもない話だ。



「どういう事ですか!?復讐すべき相手は三条家の人間だけで十分なはずですよね?なんで、陽菜ちゃんや玲奈お姉様を!...」


「そんな事をお前が知る必要はない。お前はただ、俺の指示に従っておけばいいんだ!」


「ねぇ!パパ!」



その瞬間、パチン!という音が響き渡る...数秒経って、美冬は自分が父親にビンタされたという事を認識した。



「ふん!こっちが下手に出ておれば、調子に乗りおって!!...パパだと!?お父様だろうが!!大体、お前は俺の教育を忘れたのか!?俺は言ったはずだぞ!!三条家に対する復讐心を忘れるなとな!それなのに取り入った後は三条家の内情を聞き出せたわけでもなく、かといって三条莱們を陥れるような行動を起こしたわけでもない!なぁ?いつまで待たせる?お前はいったい...何の結果を出した!?いつから、他人に対して情けを持つまでに腑抜けたのだ!!!」


「ううっ...」



是政の言葉に美冬は何も言い返せなかった。だって、全てが事実で間違いないからだ...莱們達と仲良くなってから、もう今更...復讐心にとらわれていた昔の自分に戻るなんて事はできなかったのだから...



「ほら、話は終わりだ!もう消えろ!!このでき損ないが!!」


「はい...」



そう乱暴に言い放つと、是政は美冬を残して部屋から出ていってしまった。



(ううっ!...パパ...もうあの頃の笑い合っていた私達に戻るのは無理なのでしょうか...だって、私が本当に望んでるのは...)



残された美冬は、陽菜と玲奈への懺悔の気持ちと父への悲痛な気持ちで胸がいっぱいで、その場で一人...すすり泣く事しかできなかった。




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