18.私のクラスと三聖徳会
第18話
「ごきげんよう、清芽ちゃん、奏ちゃん。」
「あっ、おはようございます‼玲奈ちゃん!」
「おはようございます!玲奈様‼」
今日は明成学園の初登校の日だ。私はどこか楽しみであり、どこか緊張している。
「私達3人共クラスが一緒で良かったですね‼」
「えぇ、そうですね。」
今年の初等部1年生は5クラスに分けられており、私と清芽ちゃんと奏ちゃんは2組だった。ちなみに1組には兼光、4組には蛇茨ちゃんと姫由良ちゃんがいる。ある意味当然の割り当て方だった。1~3組は貴族の割合が多く、4組は逆に一般学生の割合が多い。そして5組は他のクラスの余りが集められた形の構成になっている。ミラピュアではこの構成が原因でいろいろ揉め事が怒ったが、この世界ではどうなるのだろう?
「あっ!クラスに着きましたよ。」
「では入りましょう。」
私達3人はクラスに入るとそれぞれ自分の席に着いて授業開始を待ったのだった。
・・・・・
初登校日はあっという間だった。
ホームルームでは先生や生徒の自己紹介が行われたのだが貴族の中には平民の自己紹介を馬鹿にして微笑したりする者がいたりと空気が最悪だった。
その最悪の空気の中、私の番が来たのだが私の自己紹介を聞いたものは貴族は畏怖や尊敬の目で私を見ており、平民は平民で面白くなさそうにしていた。平民から見れば私は自分達を馬鹿にする貴族の上位、しかもこのクラスではトップなのだ。敵視されてもおかしくない。
(私も他の貴族と同一視されてるんだろうな...)
私は複雑な気分だった。
その後は初日という事で短い授業を終えてその日は下校という事になった。だが、私達3人はまだ下校ではない。
「では玲奈ちゃん‼三聖徳会へ参りましょう!」
「はい。」
三聖徳会とは明成学園の行事を決定したりなど学園の運営をする組織だ。それだけ聞けば大した事ないように聞こえるが構成員が公爵家、侯爵家、伯爵家と上位の家の者達のため初等部での発言権はとても強く学園長でも頭が上がらない。流石に1日でブラジルから戻ってこいとかあまりにも無理がある要求なら断れるが多少無茶な要求であれば応じなければならない。逆らいでもしたら自分の首が飛ぶとも言われているくらいだ。
まぁ、例えば新しい行事を作る際は予算なんかは自分達で用意するのであってあくまで学園側は許可をして日程を調整してくれるだけでいい。もちろん、度重なる問題行動を起こしたりと三聖徳会にふさわしくない行為をしたメンバーは多数決で除籍できるという権限も一応あるので皆が思っているほどそこまで自分勝手な組織というわけではない。
だが欠点もある。それは公爵家の者には拒否権がある事だ。自分以外の全メンバーが賛成した事でも公爵家の者一人が拒否権を行使すれば白紙にできるのだ。拒否権は使う側への非難の声も多く、よっぽどの事がない限り使用されない。実際にゲームでも過去30年もの間、拒否権は一度も使用されなかったと解説されている。だが、ゲームの玲奈お嬢様はこの拒否権を悪用し自分に不都合な物事に次々と拒否権を行使し続けた。そのため三聖徳会の評判は下がるばかりだったのだ。ましてや初等部では三聖徳会の対抗組織ともいえる生徒会が存在しないのでなおさらだった。
(破滅回避のためにも拒否権は使わないようにしないと...)
数分ほど歩いてようやく三聖徳会の説明会場に着いた。私達が中に入るとそこには既に何人かのメンバーがいた。そのメンバー達は私達を見ると驚いたように固まっていた。
唯一の例外を除いて...
「岩倉さん、元気にしてましたか?」
兼光に声をかけられる。流石にみんなの前ではあの口調では話さないようだ。
「ごきげんよう、二条様。私の事でしたら心配はいりません。」
素っ気なく言い返すと私は空いている席に着いて説明会が始まるのを待った。その際に何故か清芽ちゃんと奏ちゃんが私に話しかけた兼光を睨み付けていたのだがどうしてだろう?
そんな事を考えていると一人の上級生が入ってきた。どうやら説明会が始まるようだ。
「新たなるメンバーの皆さん、ようこそ三聖徳会へ‼説明を担当させてもらう烏丸奈乃波です!よろしくね~。あはは~‼」
(随分と天真爛漫な先輩だなぁ...)
烏丸家は藤原北家日野氏流の名家だ。伯爵の爵位を授かっており、メンバー内では下位だがれっきとした三聖徳会のメンバーだ。ゲームでも彼女はちょい役で出てた気がする。特にヒロインと絡むことはないのだが。
「じゃあ、さっそく説明していくね~。」
彼女の無邪気な一言で説明会が始まるのだった。
ちなみに三聖徳会メンバーとそれ以外の子達とは制服が微妙に違うので見分けるのは容易です。




