193.珍しい組み合わせ
第193話
「なるほど...それが、河合先輩が悩んでらっしゃる事なんですね?」
「はい...」
学園内にて...偶然出くわした優里、憩美、美冬の三人はお互いの悩みを打ち明けていた。
「私...何も出来ませんでした!玲奈ちゃんと蛇茨ちゃんが仲違いしちゃった時も...」
「いや、それは...ほらっ!!お二人のはただの演技だったじゃありませんか!気づける方が難しいですよ!」
確かに...玲奈と蛇茨が仲違いしたかのように見えたのは、結果的には二人の演技だったため...優里が悔やむ必要はないはずなのだ。
「それでもです...あの時、私はどうして気づけなかったんだろう?って思っちゃうんです。...こんな事で、お二人の友達なんて堂々と名乗れるのでしょうか?...」
「「それは...」」
涙目になって、俯いている優里を励まそうとした憩美と美冬だったが中々、励ましの言葉が思いつかない。
なぜなら...自分達だって...似たような悩みを抱えているからだ。
「いや、河合先輩!それを言ったら、私も似たようなものですよ。」
憩美は話し始めた...
グループディスカッション発表会での一件のそもそもの要因は言葉足らずだった自分にもあり、日咲を救えなかった自責の念に苦しんでる事を...
「グループディスカッション発表会の日以来...日咲はいまだに不登校の状態です...私としては、どうにかして彼女に立ち直ってもらいたいんです!」
そんな、優里や憩美の個人的な悩みを聞いていた美冬は思っていた...
(はぁ...お二人の悩み...私の悩みなんかより、はるかにマシじゃないですか...)
美冬が抱えている悩みに比べれば、大した事ではないという事を...
しかし、それをこの場で言っても、二人にはなんの慰めにもならないという事実を分かっているためか、美冬本人が口を開く事はなかった。
「河合先輩...やっぱり、玲奈さんに直接話してみるのが一番だと思いますね...玲奈さんは優しい方ですから、こんな細かい事で河合先輩を責めるような事をしませんよ。」
「そうなんでしょうか...」
(岩倉玲奈様...か...)
お二人の会話に出ている張本人...岩倉玲奈様ならば自分の悩みを解決してくれるのかもしれない...
美冬自身の心の中にそのような淡い期待の気持ちが生まれつつあったが、すぐにそれはできないのだと打ち消したのだった。
なぜなら、それは父の意に背く事になってしまうと分かっていただから...




