191.癖者揃いの新入生 その③
第191話
今帰仁男爵家...爵位こそ男爵家止まりなのだが、実は第二尚家の分家にあたり、かつては琉球王族の一員にも数えられていたほどの名家なのだ。
私はそんな名家の娘がさっきから、私の事を尾行していた理由が気になって仕方がない...
「あなたは、ご両親から私を探るようにと言われたそうですが...具体的には私の何を探るおつもりなのでしょうか?」
「それは...ですね...」
この修羅ちゃんという子は結構な恥ずかしがりやなのか...さっきから、言葉がたどたどしい様子だ。
「その...私は修羅っていう名前に似合わず...気が弱い子なんです...ですので、パパとママからも...がっかりされてて...」
うん、私にもそれは分かる...修羅というのは阿修羅の略称であり、争い事や武人を表現している言葉だ。
なので一見、見るからに気が弱そうな彼女とは極めて程遠いネーミングだと思うのだが...
「ある日から、岩倉様を見習えって...パパとママに言われるようになって...それで、岩倉様の凄さを探ろうと思いました...」
「なるほど...」
要するにこの子は名前負けになる形となり、がっかりされた結果...自分とは大違いな私を見習おうと思ってこんな行動を起こしたってわけか...
(いやいや!すごいと言われてもな~...)
残念ながら、私は原作知識を利用して...破滅フラグを回避するために巧妙な立ち回りをしているにすぎず、自分で誇れる要素は何一つないと思っているんだけどね...
「...あいにくだけど、修羅ちゃん?私は他人からはすごい人に見えるかもしれないけどね?私自身はこれといって、自慢できる要素はないと思ってるんだ!」
「えっ?そっ...そうなのですか?」
「うん、だからね?...あんまり、私を意識しなくてもいいと思うよ?」
「.........」
私がそう言うと...修羅ちゃんは自分なりに少し思うところがあったのか、黙り込んでしまった。
「そういうわけだから!できるだけ、安易な尾行はやめてほしいな?その...紛らわしいからさ...」
「えっ?あの...紛らわしい...とは?どういう意味でしょうか...?」
「あっ...いや、別に~!何でもないよ!?じゃあ、私はこの辺で~!!」
安易に自分の近くにいると中山家からの刺客と勘違いしちゃいそうだし、逆に修羅ちゃんが危害を加えられる可能性も否定できないからね...




