186.敦鳥は断ち切る...
第186話
今日は、6年生の先輩方の卒業式...
「玲奈ちゃん!短い時間だったけどありがとう‼」
「奈乃波さん、こちらこそありがとうございました‼」
私は今日で卒業する奈乃波さんの見送りにやって来た。
「奏?清芽?私の分まで、玲奈ちゃんを頼んだわよ!」
「ううっ‼...はい‼」
「あなたに言われなくとも、そのつもりです。」
清芽ちゃんはともかく...奏ちゃんの方は、なんだか名残惜しいような表情をしている。
普段は私を巡って言い争いをしてるとはいえ...いなかったら、いなかったで寂しい気持ちになるのだろうか?
「お~‼玲奈ちゃん、来てくれたのかい?」
「ごきげんよう、尚先輩...」
そして、三聖徳会元会長の尚喃磨も声をかけてきた。
「これからも兼光君と仲良くね~。玲奈ちゃん。」
「はい?」
おいおい...彼からは、私と兼光がいったい、どういう関係に見えているのだろうか?
「こらっ‼尚!行くわよ‼」
「えっ⁉奈乃波ちゃん...ちょっ‼いってーって‼」
すると...奈乃波さんが突然、喃磨の耳を引っ張ったかと思うと、そのまま引きずっていってしまった...
後には、突然の光景に唖然とした私達だけが残される...
「まっ...まぁ‼とにかく!お二人とも、卒業おめでとうございます!」
私は去っていく二人に祝辞を述べるのだった...
・・・・・
体育館裏にて...
「敦鳥ちゃん...待たせてしまい、すみません...」
「いえいえ...私が急に呼んだのが悪いんですから...」
私は敦鳥ちゃんに呼び出されて、話をしようとしていた。
「呼び出された理由は分かっています...伊集院日咲の件ですよね?」
「はい...」
蛇茨ちゃんと同じように...敦鳥ちゃんもまた、日咲の件で私がゆるせなかったのだろうか?
「私...あれ以来、自分でもどういう気持ちなのか分からないんです...日咲を許して欲しかったという気持ちはありました。ですが...かといって、玲奈お姉様の事を嫌いにもなれないんです。」
彼女は、日咲への友情と私への崇拝...二つの気持ちで心が揺れている感じか...
ならば、その心を私の方へと傾けておく必要があるね...
「敦鳥ちゃん...よく打ち明けてくれたね。」
「玲奈お姉様...」
「ごめんね...断罪するためとはいえ、私はあなたから見ると、非常に許されない罪を犯してしまったのかもしれない...恨むなら好きなだけ恨んでほしい...殴りたいなら好きなだけ殴ってほしいの...」
まぁ、こればかりは本心だが...
「それでもだよ...私も...敦鳥ちゃんと仲違いはしたくないの。敦鳥ちゃんが良ければだけど...もう一度だけ、私に敦鳥ちゃんに誇れる先輩になれるチャンスをくれませんか?」
「ううっ‼...玲奈お姉様~‼」
私の言葉を受けた、敦鳥ちゃんがギュっと私に抱き着いてくる。それを私はそっと...優しく受け止めた。
そして、彼女はついに1つの決断をくだす...
「決めました!私は日咲が好きでした‼...ですが!日咲は自分の過ちを気づけずに玲奈お姉様達を苦しめた...なので!今、ここで彼女への想いを断ちきります...そして!玲奈お姉様に賭けてみます!今度は私をあんな気持ちにさせないでくださいね‼」
「ありがとう!敦鳥ちゃん‼」
こうして、私は敦鳥ちゃんとの仲をつなぎ止める事に成功したのだった...
 




