178.最高で最低な謀略の回想 ③
第178話
『それで、日咲とまた一緒に遊びに行く事になってさ...』
『なるほど...すっかり、彼女の信頼を得られたようで何よりです。』
冬休みに入ってからというものの、蛇茨からの報告は相手側の状況というよりも、日咲との日常についての事の方が多くなってきた気がする。
『最初は私達に嫌がらせをしてきたから、ろくでもないやつと思っていたんだけどね...日咲は...思ってた感じと違ったな...なんていうかさ...ただ、正義感が空回りしちゃうタイプの子ってだけなのかもしれないね。』
『蛇茨ちゃんがそんな事を言う日が来るとは...』
『あははっ‼玲奈と出会う前の私なら、そんなこと絶対に言わないだろうね。自分でも知らない内に徐々に性格が丸くなっちゃったかもね。』
以前の蛇茨なら、こうやって上位貴族の玲奈と気安く話したり、奥田美留世の元取り巻きだった優里を同じグループのメンバーとして受け入れたりはしなかっただろう。
前世を思い出した玲奈の行動によって、大坪蛇茨という人間を良い方向へ変えられたのかもしれない...
・・・・・
『明日から、新学期です。気を引き締めて下さいね。』
『もちろんだよ。グループディスカッションの発表会も迫ってるからね。』
あっという間に冬休み最終日、この日も玲奈と蛇茨の電話による密談は進む。
『この件が解決したら約束通り、お礼として蛇茨ちゃんとお出掛けしますので頑張ってくださいね。』
『ねえ、そのお礼のお出掛けの件について話があるんだけど...』
『はい?どうかしましたか?』
『気が変わった。お出掛けはいいからさ...代わりに私のお願いを1つ聞いて欲しいんだけど...』
蛇茨が玲奈との二人っきりのお出掛けの権利を返上してまで叶えたいという願いができてしまったようだ。
『別に構いませんよ。...それで、蛇茨ちゃんの願いとはいったいなんでしょうか?』
『あのさ...あの子を...日咲を許してあげる事ってできないかな⁉』
どうやら、日咲と過ごす内に蛇茨の中で情が生まれてしまったようだった。
『あのですね...蛇茨ちゃん⁉自分が何を言っているのか分かっているのですか⁉あの子達、強硬派は敦鳥ちゃん達、穏健派と違って己の非を認めるどころか、筑波百子と組んで私を陥れようとする始末...正直、許したくはありません!筑波百子もろとも報いを受ければいいんですよ!』
『だっ...だけど‼あの子はこの件が終わったら、長寿院敦鳥と仲直りしたいと思っているくらいなんだよ!一緒に過ごしてきて分かってきたけど、彼女は根っからの悪人じゃない‼筑波百子って奴に利用されているだけだから...』
蛇茨はせめて、日咲だけでも助けてあげたいと思っているのか、必死に玲奈に訴えかける。
『お願いだよ...玲奈...今回の私の働きに免じて日咲を許してほしいの。あの子はまだ、やり直せるはずだよ...』
『蛇茨ちゃんが今回、私のために働いてくれたくれたのも事実ですからね.........考えておきます。ただし、あまり期待はしないで下さいね。私以外にも姫由良ちゃんや優里ちゃんの気持ちも考えないといけませんから...』
『玲奈...』
この瞬間、日咲がどんな運命を辿るかどうかは全て玲奈に委ねられたのだった。




