177.最高で最低な謀略の回想 ②
第177話
『蛇茨ちゃん、先程は見事な演技でしたよ。』
『だろうね。周りのギャラリーはおろか、グループメンバーさえも気づいてはいないと思う。』
校庭で見事なまでの大喧嘩を演じてみせた二人は、誰もいない教室にて密談を交わした。
『ただ、罪悪感はありますね...他のメンバー達を騙してるってことに...』
『私も...優里なんか、特に悲しそうにしてたし...』
本当は仲良しのままの二人だからこそ、上手く演じられたと同時に心の中で葛藤も生まれてしまう。
『でも、ここまで来た以上は引き返せない。それが玲奈の選択なんでしょ?』
『はい、その通りです。皆さんには申し訳ありませんが、敵を騙すには味方からとも言いますので...』
玲奈と蛇茨、二人の頭の中にはもう、引き返すなんて言葉は残っていなかった。
・・・・・
その日の放課後、
『玲奈が言った通り、筑波百子って子が私に接触してきたよ。』
『さっそく、動いてきましたか...』
玲奈を一方的に恨んでいる百子から見ると、今回の喧嘩で玲奈グループに亀裂が入ったのはメリットしかない。そのため、あたかも玲奈に歯向かったように見える蛇茨に接触してきたのはある意味当然だろう。
『というかさ、あの女...喋り方がウザすぎるんだけど⁉いかにも【こちらを見下してます!】みたいな雰囲気出してるし...これなら入学式の時に絡んできた奥田何とかって奴の方が100倍マシじゃん‼』
『気には触ると思いますが、ここはグッと堪えて彼女との親交を深めてほしいです。』
『はぁ...分かってる。だけど、さっさとあの女にはご退場願いたいんだけどね...個人的に超ムカつくし...』
『あぁ...それは私達次第ですね。』
・・・・・
『まさか、玲奈の言った通りの展開になるとはね...』
『えぇ、想定していた事ですから。それで、蛇茨ちゃんは上手くグループを組む事はできたんですよね?』
グループディスカッション発表会のグループ決めにて、蛇茨は玲奈から、もうすぐ百子が接触してきて、【日咲と百子と3人でグループを組む】という話になるだろうという事を事前に聞いていた。だからこそ、百子の前でもあそこまで冷静でいられたのだ。
『ただ...伊集院日咲って子とは組めたけど...筑波百子とは組めなかった...あの女、あぁ見えてかなり用心深いんだけど...』
玲奈にとって、唯一の誤算は百子自身が蛇茨とグループを組まなかったという点だ。玲奈と仲違いしたとはいえ、完全に気を許してないところから百子は意外と頭が切れるようだ。
『それは困りましたね...今回の一番の標的は筑波百子に他なりませんのに...』
『玲奈はあの女が今回の件の黒幕と思ってるんだっけ?』
『もちろんです!あんな大規模な嫌がらせを伊集院日咲や敦鳥ちゃん達だけでできるとは思いませんから。』
実際には、今回の件の本当の原因は憩美への気遣いを怠った玲奈と正義感で先走る形となった日咲にある。嫌がらせが大規模に広がったのも玲奈の予想以上に憩美の人望があっただけであり、百子達はむしろ、今回の件に便乗して玲奈を陥れようとしているに過ぎない...
だが、もちろん、玲奈がそれに気づく事はなかった...




