149.新たなるイベントの始まり
第149話
蛇茨ちゃんと喧嘩をしてから1ヶ月が過ぎた。あれ以来、蛇茨ちゃんは私達はおろか、姫由良ちゃんさえも露骨に避けるようになり、常に単独行動をしている。
グループの皆は私達をなんとか仲直りさせようと動いてくれてるみたいだが、はっきり言って無駄だ。
「...ねえ、蛇茨...今度さ...」
「...余計なお世話!」
「そう...ごめん...」
好奇心からか、蛇茨ちゃんの教室をこっそり覗いてみると、これまた別クラスからやって来ていた奏ちゃんが蛇茨ちゃんに何かしらの誘いをしていたようだが、蛇茨ちゃんには冷めたく拒絶されてしまい、寂しそうに自分のクラスへと帰っていった。
私はそんな様子の奏ちゃんに多少の罪悪感を覚えた。ミラピュアの時とは違い、それまでの二人の仲は良好且つ、良きライバル的な関係性だった。それを私のせいで壊しちゃったからね...
「玲奈ちゃん‼蛇茨さんの事なんて気にしないでください!あの裏切り者の分まで私が玲奈ちゃんに尽くしますから‼」
「清芽ちゃん、私の為にありがとうございます...」
それに対して清芽ちゃんは他のメンバーと比べて、蛇茨ちゃんに対する当たりが異常に強くなった。今も私にスキンシップをしながら、蛇茨ちゃんに対する愚痴を吐いている。
まぁ、実際にはそんな事思ってないんだろうけど、私に気を遣っているばかりに必要以上に蛇茨ちゃんを責めてしまっているに違いない。
(清芽ちゃん...私のせいで汚れ役をさせてしまってごめんなさい...)
その時、チャイムが鳴り響き、担任の先生が入ってきた。
「帰りの会を始める前に次のイベントに関してのお知らせがあります。まずは資料を配るので目を通してくださいね。」
そう言うと、担任の先生はクラス全員に次のイベントに関する資料を配り始めた。
「玲奈ちゃん、これって...」
「どれどれ...【全学年合同グループディスカッション発表会】ですか?」
説明しよう。グループディスカッションとは、人のグループにテーマを与えて議論させ、グループとしての結論を出させる事だ。
「今回、皆さんには最低2人、最高で5人までのグループを作ってもらい、事前にグループディスカッションをしてもらいます。そして、話し合いで出た結論を当日に発表してもらう形です。」
つまり、私と清芽ちゃんの2人だけでもグループは成立するということか...
「先生、質問です!テーマは何ですか?」
「テーマは自由です。日常的な悩みでも良いですし、ニュースで聞いた話題などでも構いません。」
テーマは自由って言われてもなぁ...むしろ、その方が悩んじゃうんだよね...
「先生!私からも質問よろしいでしょうか?」
「菊亭さん、どうぞ。」
そんな事を思っていると、今度は清芽ちゃんが先生に質問を始めた。
「その...組む相手も自由ですか?」
「はい、上級生、同級生、下級生問わず、誰と組むかは完全に自由となります。」
「やった...!」
先生の返答を聞くと、なんだか清芽ちゃんが目を輝かせてこっちを見てきたんだけど⁉
「玲奈ちゃんと二人っきりで...うふふっ‼」
「あの...清芽ちゃん?」
その目がまるで、絶好の獲物を見つけた肉食動物のように見えたのは果たして私の気のせいだろうか?




