148.仲間割れはNG
第148話
「どういう事なのさ!玲奈⁉」
「どうって...こちらにも事情があったのです!」
「玲奈ちゃんに蛇茨さんも落ち着いて‼」
その日の朝、校庭にて繰り広げられている光景に玲奈のグループのメンバー達は困惑していた。周囲にいた学生達も何事かと野次馬になって様子を見ている。
「あの子は...姫由良はねぇ!泣きながら私の家に電話をかけてきたんだよ⁉『私は玲奈ちゃんにそこまで大切されてなかったのかな?』ってね‼その苦しみが分かる?」
「まさか...姫由良ちゃんのメンタルが、思っていたよりも弱いとは思わなくて...」
「ほんっと‼信じられない!あれほど頼んだのに!」
事の発端は玲奈が昨日、早退した姫由良を慰めに行く事なく、別の用事を優先した事だった。そのせいなのか、姫由良は塞ぎこんで今日は登校しなかったのだ。
その事について姫由良と特に仲が良かった蛇茨は玲奈に対して激怒しているようだ。
「それに関しては本当にすみません...私の判断ミスでした。」
「謝って済む問題じゃないでしょ⁉姫由良の身にもなってほしいよ!もう、玲奈なんか知らない!」
「あっ⁉蛇茨さん‼」
ついにはそう怒鳴りながら、蛇茨は走り去ってしまった。残されたのは落ち込んでいる様子の玲奈だけだった。
「ちょっと‼あんた達ねぇ!見せ物じゃないんだから!解散よ‼解散‼」
「申し訳ありませんが、野次馬の皆さんはこの場から離れていただきたいのですが...」
空気を呼んだ清芽と奏が即座に野次馬を解散させると同時に他のグループメンバー達は玲奈の元へと駆け寄ってきた。
「玲奈ちゃん...」
「あはは...こんな事になるなんて...」
自身を心配して駆け寄ってきたメンバー達に対して玲奈はただ、そう呟く事しかできなかった。
・・・・・
その日の放課後、
「それで...なんとか二人を仲直りさせる方法はないのかな⁉」
「「「う~~~ん...」」」
いつもの空き教室に集まったメンバー達はどうにか、玲奈と蛇茨の仲を改善できないかを話し合っていた...
「はぁ...こんな集まりは時間の無駄ですねぇ...」
「なっ!清芽‼今、何って言ったのかしら⁉もう一度言ってみなさいよ!」
清芽を除いてだ...
「蛇茨さんは自らの意志で玲奈ちゃんに歯向かったんです!そんな裏切り者の為に時間を遣うのは無駄だと言ったんですよ‼違いますか⁉」
「何ですって‼清芽!あんた、蛇茨の気持ちも少しは分かりなさいよ!人の心がないわけ⁉」
そんな清芽に奏は怒りを隠せない。ミラピュアの時とは異なり、蛇茨とそれなりに仲良くなっていた今の奏は彼女の気持ちが多少は理解できる。
自分だって、敬愛する玲奈様の事を悪く言われたら今日の蛇茨みたいに激昂していたに違いないからだ。だから、蛇茨を一方的に非難したりはしない。
「私達はたとえ、何があっても玲奈ちゃんに従い、玲奈ちゃんの道具にならないといけないのです!それなのに蛇茨さんは玲奈ちゃんを罵り、侮辱した‼もはや、あの人を友達とは思えません‼」
「言い過ぎよ‼玲奈様だってそこまでは思ってないわ‼」
奏から見て玲奈様は絶対に自分達を道具扱いしたりなどせず、友達として向き合ってくれているのは明らかだ。実際に真里愛や沙友里も奏の発言にウンウンと頷いている。
「...とにかく、私から見てこの時間は無駄でしかありません。続きは皆さんで適当にやっておいて下さい。では、失礼します...」
「ちょっと‼待ちなさいよ!ねぇ‼清芽⁉」
話が噛み合わないとみた清芽は奏が止めるのも聞かず、さっさとその場を立ち去ってしまった。
残されたメンバー達の空気は最悪だった。
「ううっ...玲奈ちゃん...私はこれからも8人で一緒がいいよ...」
そんな中、優里の口からボソっと漏れた言葉は恐らく、ここに残ったメンバー全員の共通認識だったに違いない...
・・・・・
「あらあら!貴女が岩倉様と大喧嘩していた大坪蛇茨先輩ですよねぇ?」
「はぁ...そうだけど?というか、あんたは誰よ?」
「オホホッ‼初めまして、1年の筑波百子ですわよ~‼」
(コイツ、喋り方がうっざ...)
一方、蛇茨も蛇茨で非常に厄介ともいえる相手に絡まれていたのだった...




