145.容赦のない奴らめ...
第145話
「玲奈ちゃん大変です‼」
「真里愛ちゃん、どうしましたか?」
この日、登校するなり早々に真里愛ちゃんに声をかけられた。しかも、何やら酷く慌ててる様子だ。いったい、どうしたというのだろう?
「これです!これを見て下さいよ!」
「どれどれ?」
真里愛ちゃんが渡してきた3枚の手紙...そこに書かれていた内容はというと、
【河合優里の両親は犯罪者。過去に殺人を犯したが、賄賂を払って事件を揉み消した。】
【兼藤姫由良は他人の弱みを握って、いいように使う事に快感を覚えるサイコパス。】
【大坪蛇茨はとある1年生に酷いいじめを行っている悪女。】
「これは...あまりに酷いですね...」
「そうです!いったい、誰がこんなことを⁉玲奈ちゃんは心当たりはないんですか?」
心当たりねぇ...ありすぎる!まさか、1年生達が私のみならず、私のグループの皆に対してもここまでしてくるとは想定外だった。
しかも、グループメンバーの中で最も家格が劣るこの3人を狙ってきたのもタチが悪い。
「全学年の生徒にこの手紙が広まってて...もう、私はどうすればいいかわかりませ~ん‼」
「落ち着いて下さい。とりあえず、教室へ向かいましょう!ついでにグループの皆も呼んで来てください‼」
「はい!」
もう、これ以上は皆に隠し通すのは難しいだろう。事を大きくしないように何とか穏便に解決しようとした結果、グループの皆を巻き込む事になるだなんて...
私は複雑な気持ちを抱きながら自分の教室へ、真里愛ちゃんは他のクラスのグループメンバーを呼びに別のクラスへと急いだのだった...
・・・・・
私が自分のクラスに着いた時には教室内はざわついていた。どうやら、全学年にあの手紙が広まっているというのは本当だったらしい。
「あっ‼岩倉様⁉あの噂は本当なのですか⁉」
「河合さん達が...いいえ‼私は信じてませんよ!」
私が教室へ入るなり、何人かの生徒が私に話しかけてきた。さっそく、今回の噂の信憑性が知りたいのだろう。
「それについては後程、説明いたしますので...ひとまず!皆さんは少し落ち着いて下さい!」
私がそう呼びかけると教室内は一気に静かになり、私の元に来た子達も自分の席へ戻っていった。だが、疑心暗鬼というものは一度生まれてしまうと中々払拭されないらしく、何人かの生徒達は小声でコソコソと会話を続けている。
「...玲奈ちゃん‼皆さんにあの事を話すとは正気ですか⁉この件は公にはしないと言ったではありませんか⁉」
「前は確かにそう言いました...ですが!こうなった以上は仕方ありません...」
「ううっ...」
清芽ちゃんには申し訳ないが、このままでは1年生達が更なる暴走を始めてしまう可能性がある。いっそ、私はそうなる前に皆に話しておいた方が得策だと判断したのだ。
「玲奈ちゃん、皆を連れてきました!」
「玲奈!これってどういうこと⁉」
「私...ビックリして言葉が出ません...」
そこへ、真里愛ちゃんがグループメンバーを引き連れて私のクラスへと入ってきたのだが...
「姫由良ちゃんの姿が見えませんが⁉」
「あっ‼それは...」
噂を流された1人、姫由良ちゃんの姿がない...その点を指摘すると蛇茨ちゃんがやけにオドオドしているし...
「とにかく、先に何でこんな噂が流れているのか教えてほしい!それに併せて姫由良の事も説明するから‼」
「わっ...わかりました...」
蛇茨ちゃんの剣幕に押された私はグループメンバーとクラスメイトに1年生との間のトラブルを説明したのだった...
私の説明を聞いた皆は最初こそ唖然としていたが...
「...玲奈ちゃんがそんな事に巻き込まれてただなんて...でも私は玲奈ちゃんの味方ですからね!」
「私も...あんなデマなんかに負けない!だから玲奈も頑張ってね!」
優里ちゃんや蛇茨ちゃんの返答を皮切りに...
「岩倉様‼私達にも何かできる事があれば言って下さい!」
「私も玲奈様の力になります‼」
「私は...1年生に知り合いがいるから、その子と話してみようかな?」
「私はこんな悪質なデマに騙されないように他のクラスに話してくる~‼」
「私は...え~っと‼やれる事はないですけど...とっ!とにかく玲奈様の味方ですぅ~‼」
「皆さん...」
クラスメイト全員が私の味方になる事を誓ってくれた。もし、これが私ではなく、ミラピュアの玲奈お嬢様だったらどうなっていたことやら...
...なんて思っていると、
「...それで...玲奈さぁ...あの...姫由良の事なんだけどね...」
「はい...」
蛇茨ちゃんが私にしか聞こえないように耳元で姫由良ちゃんの事を話し始めた。
「まさか...姫由良ちゃんがあんな事に...」
「うん...玲奈お願い‼姫由良を助けてあげて‼」
「もちろんです!」
その内容には流石の私も耳を疑ったよ...
この後...私の話はグループメンバーを介して、あっという間に3年生の他のクラスへも伝わってゆき、結果として3年生ほぼ全てが私の味方についてくれたのだった...