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ミラピュア~破滅回避への物語  作者: たかくん
初等部3年生編
146/315

143.陽菜と憩美 『裂』

陽菜視点です。憩美は今回は出ません。


第143話



岩倉公爵家の二女、岩倉陽菜には心を許せる友達が4人いる。



1人目は尊敬する玲奈お姉ちゃんと同時に出会いを果たした三条公爵家の娘、三条莱們。



2人目は莱們の紹介で親しくなった地下家出身の清水萌留。



3人目はこれまた、莱們の紹介で親しくなった一般庶民の有明滓閔。



...そして、4人目。地下家出身の高松美冬。



陽菜はこの4人の事をとても大切に思っていた。



なにせ、過去に実の家族によって心に深い傷を負わされた陽菜は他人をそう簡単には信用できない性格だ。


実際にこの4人以外のクラスメイトや同級生に対しては表面上は明るく接しているが、内心では信用していない。


「陽菜ちゃん、今日の帰りにどこかへ遊びに行きませんか?」


「美冬ちゃんと二人で⁉行く行く~‼」



今日も4人の内の1人、高松美冬に声をかけられ、一緒に遊びに行く約束を交わした。


美冬は第三者による紹介で親しくなった他3人とは違って、自分から陽菜に話しかけてきた事をきっかけに仲良くなった。他のクラスメイト達が岩倉公爵家の名前を恐れて陽菜に気安く話しかけてくれなかった中で美冬だけは先入観なしで話しかけてくれたのだ。


その割に最初の頃は美冬がグループ内での上下関係を過剰なまでに気にしたりと若干の矛盾があったが、すっかり友達と言えるようになった今を思えば何ともないだろう。


「あっ‼美冬ちゃん...」


「陽菜ちゃん?どうしましたか?」


「貴女にね...ずっと伝えないといけない事があったんだよ。」


「なっ...何でしょうか⁉」



そんな美冬の事を陽菜はとても気に入っていた。だからこそ、この言葉を伝えたいと思っていたのだ。



「こんな...私なんかとお友達になってくれて...本当にありがとう‼」


「陽菜ちゃん...」


陽菜の言葉に美冬は少しばかり、沈黙した後、口を開いて返事を返した。



「こちらこそですよ...私なんかと仲良くなってくれた事、本当に感謝してます...ただ、陽菜ちゃんが思っているほど、私は綺麗な人間ではありませんから...」


「それってどういうことなのかな?」


「それはですね...」


美冬がさらに言葉を続けようとした時だった。



「貴女が...貴女が!憩美様が言っていた岩倉陽菜先輩ですか⁉」


「えっ⁉」


怒鳴り声が響いた方を見ると、そこには5、6人程の男女の姿があった。みた感じと先輩呼びからして、後輩の1年生だろうか?


そして、なぜだか、その全員が陽菜に対して怒りを隠しきれていない様子だ。


「そうだけど?あの...貴方達は私に何か?」


「貴女さえいなければ...貴女さえいなければ!憩美様は‼」


「陽菜ちゃん‼避けて!」


その内の1人...一番怒っていた子が陽菜に向かっていきなり殴りかかってきたではないか!咄嗟の美冬の声もあって、陽菜は辛うじてその一撃を避ける事に成功した。


「ちょっと落ち着いて‼」


「うるさい‼あいつのせいで憩美様は...」


「でも‼暴力は良くないって!」


殴りかかってきた子は陽菜が避けた事に気づくと追撃を入れようとしたが、そこに他のメンバーが止めに入り、そのまま揉み合いになっている。どうやら、その子以外はさすがに暴力行為に訴えるつもりは全くなかったらしい。



「美冬ちゃん!逃げるよ!」


「えっ?でも‼まだ話を聞いてませんが...」


「そんなのどうでもいいから!」



その隙に陽菜は美冬を連れてその場から走り去った。後ろから自分達を呼び止める声が聞こえたが、これ以上、話に付き合うつもりはない。








・・・・・


(さっきは酷い目に遭ったな~...)



何の面識もないはずの1年生に一方的に因縁をつけられるだなんて絶対におかしい。今回の事には何か裏があるのでは?と誰でも予測してしまう。


「あの子達、【憩美様】って言ってましたよね。それと何か関係があるのでしょうか?」


「はぁ...関係あるも、なにも...もう、あの子達とは話したくないなぁ...」



100%、あの憎ったらしい後輩の指示で間違いないと陽菜は確信している。


もし、憩美の指示でないのならばわざわざあの子達が憩美の名前を出す必要がないはずだ。なにより、先輩で一応は公爵家の娘である陽菜に不遜な態度を取ったり、ましてや暴力行為に出るだなんて不自然だ。


そのため、陽菜自身とほぼ同格か、それ以上の家の人間があの子達のバックについているのは間違いない。


「島津憩美...まさか...ここまでするだなんてね...」


「陽菜ちゃん?様子が...」


「あははっ‼大丈夫だよ!美冬ちゃん‼私はあれぐらいの事、気にしないもん!」



尊敬する玲奈お姉ちゃんに取り入って、寵愛を得るばかりか、陽菜自身にも自らの学年の子達を使ってこんな嫌がらせをするだなんて...



(島津憩美...よくも私から玲奈お姉ちゃんを...アイツは絶対に許さない...許さない...ユルサナイ‼)



春休み辺りから陽菜に芽生えた黒いモノが、少しずつ...陽菜の体と心を侵食し、蝕んでいった...




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