142.憩美も知らなかったらしい...
第142話
さっきの休み時間は日咲と敦鳥に絡まれて散々な時間だったなぁ...それにしても憩美ちゃんも憩美ちゃんで何かしらの不満があるのであれば、わざわざクラスのお友達に伝言を頼んだりせず、私に直接言ってくれたら良かったのに...
そんな複雑な思いを抱きながら、私は放課後の三聖室の扉を開いた。
「あっ‼玲奈様!清芽から聞きましたよ!何やら1年生に連れ出されたそうですね‼いったい何の話をしたんです?」
「私も‼話の内容までは聞かされていませんが...気になって仕方ありません!教えて下さい!」
「二人とも落ち着いて...」
日咲と敦鳥との話の内容を清芽ちゃんに教えなかった事からも分かるように私は今回の件でできれば他の皆を巻き込みたくないと思っている。あくまで私と憩美ちゃんの問題だからだ。
その旨を二人に伝えると、
「だとしてもです!だったら‼せめて私と奏だけにでも教えて下さいよ~!私達二人と玲奈ちゃんは学園入学前からの関係ではありませんか~!他の子達とはわけが違います‼」
「えっ⁉」
「ちょっと‼清芽⁉他の皆を除け者にする気かしら?」
てっきり、頭脳派の清芽ちゃんは今回の話の内容をグループメンバーと共有する事を提案してくるとばかり思っていたため、この返答は意外だった。
「奏は何か勘違いしてるようですが、そうは言ってませんよ。ただ、もしですね...玲奈ちゃんにとって、あんまり公になるとまずい話かもしれません。玲奈ちゃんのプライバシーを守るためにも玲奈ちゃんが最も信頼する私達だけの秘密にしておいた方がいいかと思いまして。」
「でも...」
「だったら、陽菜さんも加えてもいいですよ。」
「ううっ...」
そこまで言われると奏ちゃんもさすがに反論しにくいらしく、清芽ちゃんの意見を受け入れたようだ。
(なんか...もう、私が話さないといけない流れに持っていかれてるね...)
「では!玲奈ちゃん‼さっそく教えていただけますか?」
「分かりました...ですが、あまり話を広めないで下さいね。」
『『もちろんです!』』
清芽ちゃんと奏ちゃんの固い返事を聞いた私は観念して日咲と敦鳥との会話の内容を二人に話したのだった...
・・・・・
「あっ‼玲奈さん!こんな時間に私に何かご用ですか?」
「憩美ちゃん...」
その日の夜、私は日咲と敦鳥との会話の内容を憩美ちゃんにも話した。本当なら放課後に聞きたかったのだが、生憎、憩美ちゃんは今日は三聖室に来なかったのでこうなったというわけだ...
その結果、思わぬ収穫ができた。
「日咲と敦鳥がそんな事をですか⁉しかも私に無断で⁉」
「えっ?憩美ちゃんが二人に頼んだのではなかったのですか⁉」
「...私、二人が言うほど玲奈さんに嫉妬してませんし、陽菜さんを恨んでもいませんよ‼」
なんと、今回の日咲と敦鳥の行動は全て憩美ちゃんに無断で行われたものだったらしく、憩美も非常に困惑していた。
「とりあえず‼日咲と敦鳥を叱っておきます‼私に無断で勝手な行動をした事を...玲奈さん!私のクラスメイトが本当に申し訳ありませんでした!」
「気にしてませんよ、それより、あの二人を何とかよろしくお願いしますね...」
「もちろんです!」
ふぅ...これで誤解が解けて、日咲と敦鳥の私に対する偏見がなくなるといいんだけど...




