139.厄介な子達に絡まれたようで...
第139話
喃磨にはあんな事を言われたけど...今のところ、私は兼光と付き合ったりする予定なんてない。なにせ、兼光はゲームの玲奈お嬢様の攻略対象であり、宿敵でもあるからだ。
(破滅回避のためにも兼光には無難にヒロインと結ばれて勝手に幸せになってればいいのに...喃磨はほんとに余計なお世話なんだから‼)
玲奈からみた兼光の印象は、あくまでゲームでの彼の印象であり、今の兼光は玲奈との出会いで180°人間性が変わっているのだが、なぜか玲奈はそれに気づいていない...
(それに...兼光は私の事を好きなんじゃなくて、私を高野藍葉に重ねて依存してるだけなんだよね...)
無論、兼光が高野藍葉への想いを断ちきり、岩倉玲奈という1人の女子の事に目を向け始めているという点にもだ...
・・・・・
「玲奈よ。久しぶりだな。」
「麻呂さん、お久しぶりです!」
確か...3年生が始まる直前以来だったかな?夢幻世界で麻呂さんと会ったのって。
「久しぶりのところ、申し訳ないんだが...本来、今日はお前と会えるはずではなかったんだ。だが、極楽にいる息子に無理を言って何とか急遽、この場を設ける事ができたんだ。」
「よくバレませんでしたね...」
麻呂さんの地獄での生活がどうなっているのかなんて分かりっこないけど、地獄の監視って思ったよりも緩かったりする?
「あぁ、それは最近の地獄での私の態度が良いからな。それが地獄の上層部にも考慮されて見張りも前ほど厳しくなくなったんだ。」
「それは!何でです?」
「ふん!こうでもしないと閻魔の目は欺けんからな。まぁ、そのお陰で私の地獄の刑もだいぶ甘くなった!もしかすると、近い将来、極楽と変わらない暮らしができるかもしれん...」
「それはないと思います...地獄を舐めすぎでは?」
ほんの一瞬でも更生したの⁉なーんて期待した私の時間を返してほしいなぁ...
「おいおい、玲奈に地獄の何が分かる?...そうだ!もし良ければだが、地獄の体験旅行に来ないかね?」
「行きません、私に貴方のような地獄行きになる要素なんてあるわけないじゃないですか。」
まぁ、ゲームの玲奈お嬢様ならありそうだけど...今の私は違う。たとえ、体験だとしても地獄に行くぐらいなら、まだ破滅した方がまし?かもしれない。
「ちっ‼極楽か、もしくは、生きてる者を地獄の体験旅行に勧誘して応じてもらえたら、一人につき、100年程だが刑が減刑される処置があったのに...」
「さりげなく私を利用しないで下さい!それと...恐らくでしょうが...閻魔様の許可があるとはいえ、そう簡単にこの世に戻れたり、天国に行けたりするんですか?」
「1年につき、30日だけ、しかも魂だけの移動しか認められんがな。」
「へぇ~‼」
なんか地獄にも救済措置があったのは意外だけどそれって成功率低すぎない⁉魂だけの状態で、しかも地獄に勧誘なんて無理に決まってるでしょ‼
「お察しの通り、勧誘が成功する事はごく稀だ。体験する者のそのほとんどが人の心のない大悪党か、無鉄砲で怖い者知らずのバカのどちらかの時点でな...」
「ですよね...」
いったい誰が好き好んで地獄を体験するんだよ⁉と突っ込みたい気分だ。
「さて、そろそろ本題に入らせてもらおうか。」
「......‼」
地獄の裏事情を聞かされるなどして、話がだいぶ脱線したがいよいよ本題に入ってくれるらしい。
「お前の学園生活は明日からは騒乱の日々となろう。」
「騒乱⁉ってどういう事ですか?」
「それはな...」
ブチッ‼
「えっ?麻呂さん⁉」
私が麻呂さんに話を具体的に聞こうとしたところ、突如として周りの景色が変わり、麻呂さんの姿も消え失せていた。
(ここは...ベッドの上⁉)
気づけば、私は自分の部屋のベッドで横になっていた。
確か...麻呂さんは最初に言っていたっけ...
〃本来、今日はお前と会えるはずではなかった〃と。
そして、
〃極楽にいる息子に無理を言ってこの場を設けてもらった〃とも。
これは私の予想だが、その麻呂さんの息子さんの夢幻世界を作り出す力?が途中で尽きてしまったものと思われる。
麻呂さんの口ぶりからみて恐らく、夢幻世界はそう何度も簡単に作れるものではないのだろう。それでも麻呂さんが無理を言った結果、できた夢幻世界は不完全だったため、今回のように途中でシャットダウンしてしまったのかもしれない。
(麻呂さんに息子に無理強いしないよう行っとかないとね...)
こんな自分勝手な父親を持つ息子さんには強く生きてほしいものよね...いや、息子さんもとっくに死んでたんだった‼
・・・・・
(眠~い...)
「玲奈ちゃん、大丈夫ですか?」
「あはは...清芽ちゃん、お気になさらず...」
あの強制シャットダウンのせいで、私はあの後はなかなか寝付けず、完全に睡眠不足だった。授業が終わった直後の今も終始、ウトウトしていて清芽ちゃんに心配される始末だった。
(とりあえず...やっと昼休みになったんだ...今ぐらいはゆっくりしよう...)
...なんて思っていると、
「失礼します!岩倉先輩はいますか?」
「はい?」
私が声をした方を見ると、そこには二人の少女の姿があった。見たところ、1年生だろうか?
「岩倉先輩は私よ。貴女達は?」
「私は1年の伊集院日咲ですよ!」
「はじめまして、1年の長寿院敦鳥です。」
そんな二人の様子は...なぜだか分かんないけど、とても怒ってるように見えるんだけど⁉
特に日咲って子の方は私を睨み付けているし...私、この子達に何かしたっけ?
「岩倉先輩にお話があります。ここでは目立つので外に出ましょう。」
「あの...私の都合は?」
「はぁっ⁉...貴女に拒否権があるとでも?」
「なさそうですね...」
とにかく、彼女達は私と無理にでも話したい事があるらしい。私個人には心当たりはないということは、私の友人や後輩絡みの話...二人は1年生だから憩美ちゃん絡みの話である可能性が有力だろう。
具体的には聞けなかったけど、もしかして麻呂さんが言っていた騒乱の始まりってこれの事なのだろうか?
当たり前ですが、麻呂さんの言う地獄の話はこの小説の中での話。
なので、実際の地獄がこんな救済措置を設けるかは分かりません。




