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ミラピュア~破滅回避への物語  作者: たかくん
初等部3年生編
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128.守るべきもの


第128話



梅雨が明け、7月になった。



「玲奈ちゃん、今年の夏休みは私と遊びに行きませんか?」


「いいですね‼でも...どこへ出かけましょうか?」


「それか、私の家にお泊まりでも構いませんよ。」


「そういえば、沙友里ちゃんの家にはまだ一度もお泊まりした事なかったですね。」


私はたまたま会った沙友里ちゃんと夏休みの予定を話しながら校庭を歩いていると、


「貴女‼平民の癖に調子乗ってんじゃないわよ!」


「きゃっ‼」


突然、誰かの怒鳴り声と、また別の誰かの悲鳴が聞こえてきた。


「玲奈ちゃん、どうします?」


「もちろん、行きますよ!」


私と沙友里ちゃんが声がした方向に向かうとそこには1人の女の子の胸ぐらを掴む令嬢とその取り巻きの姿があった。見た感じ、当事者はどちらも恐らく1年生の生徒だろうか。


「貴女達‼何をしてるのですか⁉岩倉玲奈の名において暴力は見過ごせません!」


「「「ひっ‼岩倉様...」」」


私が名乗ると令嬢の取り巻きの子達は私に恐れをなしたのか、ガタガタと体が震えている。


「へぇ~...貴女が岩倉玲奈...おっと失礼、岩倉玲奈様?」


「なっ‼...貴女は⁉」


だが、当の令嬢の方は私の存在を気にも止めた様子もなく、私に対しても挑発的な態度と余裕を崩さない。


「ねえ、貴女‼玲奈ちゃんに向かって...」


「沙友里ちゃんストップ‼」


「えっ⁉玲奈ちゃん?」


その態度に何か言いたげだっだ沙友里ちゃんを私は宥めた。沙友里ちゃんは彼女の事を知らなかったのだろうが、私は知っている。


「お初にお目にかかりますわ‼わたくし、筑波百子ですよ‼」



筑波百子。一見、ただの筑波侯爵家の令嬢で私から見ると大した相手ではないように見えるが、


「そちらの先輩もよろしくですわ~‼オーホホホッ‼」


「くっ...生意気な‼...」


彼女の父の筑波影仁は元は皇族であり、宮家の1つ、山階宮家の生まれだった。そこから臣籍降下して今の筑波侯爵家を設立した経緯を持っている。そのため、娘の筑波百子は現在の皇室の方々とは従姉妹にあたるのだ。


「はぁ、部下のしつけぐらいはちゃんとなさってくださいよ~‼玲・奈・様・?」


「沙友里ちゃんを侮辱しないでください!」


「いやいや‼高貴な血筋の私がですよぉ!たかが、華族の先輩方をいびって何が悪いんですか~?ねぇ‼」


どうやら百子も自分の立場に自覚があるのか、私と沙友里ちゃん相手でも全く動揺する様子はなく、むしろ私達を煽っている。


「あーあ、これ以上言っても私のありがたーい考えが先輩方には理解できないようなので失礼しまーす!」


「ちょっと...玲奈ちゃんの話はまだ終わってないわよ‼」


「聞く意味がありませーん!ほらっ‼貴女達も行くわよ!」


「「「はい...」」」


そう言うと百子は自分の取り巻きを連れて、沙友里ちゃんの言葉を無視して私達の横を通り抜けて反対側の方へと去っていった。


その際、百子は私の耳元に顔を近づけるとボソリと囁いた。



『覚えてろよ...』



百子は確かにそう言ったのだ。



(面倒な事になりましたね...)


私が懸念しているのはこの一件で百子が私に対するあらぬ事を皇族の方々に吹き込む可能性だ。いくら岩倉家でも皇族の方々を相手にすると勝ち目はないだろう。


「あの...先輩方、助けてくれてありがとうございました。」


「貴女は...」


私が苦悩していると、先程、百子に絡まれていた女子生徒が私にお礼を言ってきた。


「宮ノ楯眞美です!本当にありがとうございました!」


「えっと...眞美ちゃん、気にする事はないわよ...」


私は宮ノ楯眞美という名の少女を見つめる。


もしかしたら逆恨みした百子は私のみならず、眞美ちゃんにも何らかの報復を行うかもしれない。


もしもそうなったら...私がこの子を守ってあげないと‼







・・・・・


その日の放課後、



私は三聖室に来ていた。


「玲奈お姉ちゃん‼さっき聞いたんだけど嘉孝おじいちゃんが今度、私達を老人会に招待してくれるんだって‼行こうよ!」


「いや、老人会に小学生を?」


「うん‼」


「考えておきますね。」


「あっ...玲奈お姉ちゃん...」


陽菜が言ったこの件については後で考えて置くとしよう。私が今、会って話をしないといけないのは...


「あっ!いた‼憩美ちゃん‼」


「玲奈さん?」


おっ?早くもお目当ての後輩を発見‼正直、今日いなかったらどうしようかと思ってたよ。


「筑波百子を知ってますよね?」


「えぇ、あの...傲慢なお姫さまですよね。思い出したくもありませんが...」


今日、三聖室に百子がいなくて本当に良かったと思っている。彼女いたら話が拗れていた可能性があったからだ。


「それでですね...」


私が憩美ちゃんにさっきの一件を話して眞美ちゃんを守ってあげられないか頼んでみると、


「玲奈さんに言われなくても眞美は元々、私のお友達ですよ‼あの子は絶対に守ってみせます!」


「憩美ちゃん...」


どうやら憩美ちゃんは学園生活初日に既に眞美ちゃんと仲良くなっていたようで私の心配は無用だったようだ。


「ただ...向こうが何をしてくるかは...まだ分かりません。玲奈さんの力をお借りする時もあるかと。」


「もちろん、その時は手を貸しますよ!憩美ちゃん、ありがとう!ほんとにいい後輩を持てて私は嬉しいな!」


「玲奈さん...私も玲奈さんが頼ってくれて嬉しいです!」


そんな感じで私と憩美ちゃんの仲がまた深まった。


(まさか...あの玲奈お嬢様と憩美ちゃんがこんな関係だなんて...ゲームをプレイしてた人が見たら何て言うかな?)












...だが、玲奈は気づいていなかった。



(あの子ばっかり‼...玲奈お姉ちゃんにとって妹は私だけのはず...それなのに!...憎い‼)



その様子をずーっと見ていた陽菜が憩美に激しく嫉妬していたことに...




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