122.萌留は燃える?
第122話
運動会が中止になった事で明成学園の生徒達はみんな落ち込んでいた。無論、うちの妹も例外ではないようで...
「つまんないの~、あんなに楽しみにしてたのに...」
「陽菜、どれだけ言っても結果は変わりません。辛いでしょうが今年は諦めましょう...」
「ううっ...」
あの後、私も両親を通じて何とか運動会が開催できないかを話し合ってみたが結局、学園側の判断は変わる事はなかった。もう今年の運動会の開催は絶望的だろう。
「今年は莱們ちゃんや萌留ちゃんや滓閔ちゃんと一緒に同じ競技に出ようねって話だったんだよ‼それなのに...」
「......」
前世の記憶がある私はともかく、陽菜のような純粋な子供達にとって運動会は楽しい一大イベントなのだ。それを中止にされるのはたまったもんじゃないだろう。
(仕方ない...一肌脱ぎますか。)
運動会は中止になったがその分、別の事で思い出を作ればいい。そう思った私は陽菜にその旨を話してみた。...すると、
「じゃあ~‼萌留ちゃんと滓閔ちゃんを誘ってバーベキューがしたい!」
それが陽菜の答えだった。
・・・・・
数日後、
「玲奈お姉ちゃん!早くお肉を焼こうよ~‼」
「はいはい、ちょっと待ってくださいね。」
バーベキュー会場には私と陽菜と萌留ちゃんと滓閔、そして...
「玲奈ちゃん‼焼くのはお姉さんに任せておきなさい!」
「ありがとうございます、奈乃波さん。一応、私も手伝いますね。」
奈乃波さんの姿があった。なぜ、彼女もいるかというと、私達がバーベキューの材料の買い出しに行った際に偶然出くわして今回のバーベキューの事を知った。そこで『自分も混ぜて‼』と言い出したからだ。
正直、奈乃波さんが加わってくれたのはありがたい。私は前世ではバーベキューの存在自体は知っていた。しかし、実際にバーベキューをやる事は人生で1回もなかったのだ。
(だから自分1人で上手く焼けるかがちょっと心配だったんだよね...)
下級生達には自力で焼かせるのはやけどなどの心配がある。さらにそれぞれの両親もこの日に限って多忙だった。かといって、使用人に焼かせるんじゃね...普段と変わりないようでなんかしっくりこない。
というわけで上級生の奈乃波さんが焼く担当を務めてくれる。
「奈乃波お姉ちゃんも今日は楽しもうね‼」
「もちろんよ、萌留ちゃん。」
ちなみにバーベキュー会場は萌留ちゃんの家の庭だ。わざわざこのためだけに庭を貸してくれた萌留ちゃんにも感謝だ。
「私が火をつける~‼」
「なっ⁉バカ!」
「ストップ!ストップ!萌留ちゃん!」
「えっ?」
ごく自然に着火剤に触れようとした萌留ちゃんを私と奈乃波さんが慌てて止めに入った。
「火は私がつけるから手出し無用よ!いい?」
「は~い。」
危なかった...ふぅ、萌留ちゃんは不用心過ぎる。この様子だと火の扱い方を誤ってやけどとかしかねない。そうなると彼女にとって火はトラウマになってしまうかも...
(萌留ちゃんだけに燃える...なんて‼笑い事じゃないからね!)




