121.今年の運動会...はまさかの...
第121話
5月になった。いよいよ今年の運動会の種目決めがはじ...
「納得いきません!なんで今年の運動会は中止なのですか⁉」
「理由を聞いても教えてくれないし...何かの陰謀ですか⁉」
...まらなかった。
「奏ちゃん、清芽ちゃん落ち着いてください。」
必死で二人を宥めている私だったが、私自身も心の中で激しく動揺している。
「急遽、運動会が中止だなんて!」
「こんなの...あんまりではありませんか‼」
なんと今年の運動会が突如として中止になってしまったのである。去年のような天気による延期などではなく、今年は完全に中止なのだ。
「玲奈様!私、理事長に抗議してきます!」
「私もです!.........せっかく、玲奈ちゃんと同じ競技を選んであんな事やこんな事を...」
清芽ちゃんが最後の方は何を言ってるのかは聞き取れなかったが、このままでは二人とも怒りのあまり、学園の上層部との間でトラブルを起こしかねない。
「ふぅ、奏ちゃん、清芽ちゃん、もう一度言います。落ち着いてください。きっと、理事長にも何か考えがあったのですよ。」
「私達の楽しみを取りあげるのにどのような考えがあったというのですか⁉」
「運動会ほどの大イベントを中止するくらいですから、恐らく相当いい考えなんですよね⁉」
そんなの分かるわけない。いや、むしろ私の方からも理事長に聞きたいぐらいなのだ。なにせ、運動会が中止になった理由は学園上層部...明成学園の最高責任者ともいえる理事長の鶴の一声が影響したらしいのだから...
「理事長...許すまじ‼」
「許さない...許さない...」
「二人がとても悔しい気持ちは分かります。ですが、怒りを鎮めて下さいね...」
「「ううっ...」」
こうして私はしばらくの間、奏ちゃんと清芽ちゃんの理事長への怒りを鎮めてもらおうと必死に二人を宥めたていたのだった。
・・・・・
とある場所にて、
プルルルルッ‼
(ちっ...こんな面倒な時に‼かけやがって...)
その場所にいた男の携帯電話が鳴り響いた。初等部の運動会が中止になった事で先程から保護者の抗議の電話が鳴り止まなくてうんざりしてたというのに...
どうせ今度もそうだろうという軽い気持ちで電話をかけてきた相手の名前を見ると彼の顔色が変わった。
本当なら今は無視したい気分なのだが、それだと後で大目玉を喰らいかねないのでしぶしぶ応答することにした。
「はい、もしもし。」
『私だ。聞こえてるかい?松殿くん。』
「はぁ...大丈夫ですよ、理事長。それよりも説明していただきますよ。なぜ、初等部の運動会を中止にしたのかを。」
かかってきた電話に出た人物...明成学園の副理事長の松殿嘉孝はため息をつきながら電話をかけてきた理事長と話し始める。
『......まぁ、そんなところだ。これで分かったかい?私がなぜ初等部の運動会を中止したのか。』
「えぇ、嫌でも分かってしまいましたね。」
『君にもちゃんと働いてもらうからね。』
「それで...私が何かやらかしたら私を切り捨てるのですか?前の初等部の校長のように。」
前初等部校長の副木芳文は賄賂を受け取り、学園の機密情報を流すという学園上層部も無視できないような重大な事をやらかしてしまい、切り捨てざるを得なくなった。表向きは急病による辞任という事にしたが実質的には解雇である。
それ以来、なぜか初等部校長の席は空席となっており、初等部の方針などは全て理事長が決めていた。
『それは君次第だ。せいぜい頑張りたまえ。』
「もちろんですよ。」
この腹黒い理事長はいったい何を考えているのだろうか?この時の嘉孝には全く分からなかった。




