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ミラピュア~破滅回避への物語  作者: たかくん
初等部3年生編
122/315

119.後輩を引き込む先輩達

前半は奏、後半は清芽目線から


第119話



「わざわざ呼び出してすまないわね。」


「いいえ、お構い無く...」


4月も終わりに近づいたある日、奏は憩美をあの空き教室に呼び出していた。


「それで大炊御門先輩、私になにかご用でしょうか?」


「呼び出した理由?そんなの決まってるじゃない‼」


奏の言葉に憩美は全く心当たりがない様子を見せているが、しらばっくれても無駄だ。既に調べはついている。


「貴女‼私達を差し置いて、なに玲奈様の家にお泊まりしてるのかしら⁉」


「えっ⁉いや、それはですね...」


姫由良を介して初めてこの話を聞いた時、奏は動揺した。自分達同級生グループのメンバーですら玲奈様の家にお泊まりした事はないというのに...


「ううっ...本当に!貴女が‼...貴女が‼...」


「あの?お怒りですか?」


それなのに‼...この島津憩美とかいう子は春休みの間、ずーっと玲奈様の家でいい思いをしていたというではないか。つまり奏は憩美を激しく恨んで...


「貴女が羨ましいわ~‼」


「えぇっ?」


は、いなかった。


「確か玲奈様が直々に教育を施してくださったんでしょう⁉良かったじゃない‼玲奈様のお目に叶って‼」


「いや、あの...」


興奮している奏の話に憩美はついていけていなかった。だが、奏はそれに気づく様子もなく勝手に話を続ける。


「どんな事を教えられたの?ねぇ⁉教えてほしいな~‼」


「いいえ、単に私が公爵家の令嬢として相応しくなれるようにと...って‼それより怒ってないんですか?私、てっきり怒られるかと...」


「あっ、そんな風に見えたんだ...誤解させちゃったね。」


奏はこの話をするためだけにわざわざ人のいない空き教室に憩美を呼び出したのだ。奏から何らかのお叱りを受けると憩美に勘違いされても無理はないだろう。


「私はね、貴女が玲奈様に好かれたからといって嫉妬して【二度と私の玲奈様に近づくな!】なんて事は言わないわ。まぁ、あからさまに度が過ぎた独り占めは許さないけど...玲奈様のお目に叶ったのならそれなりに理由があるんだろうし...」


「そうだったんですね。良かったです...」


奏の本心を聞いた憩美はホッと胸を撫で下ろす。だが、安心するのはまだ早い。


「あくまで...()()()。グループの皆がそうとは限らないわ。特に清芽には気をつけなさい。」


「菊亭先輩ですか?」


「今のあの子は危険よ。実家に圧力をかけさせて玲奈様と同じクラスにするよう学園に強要したり、グループの皆で玲奈様と遊ぶ日に自分以外のメンバーに嘘の集合場所を教えたりしてるからね!」


「嘘...」


奏から清芽の事を聞いた憩美は唖然としていた。見た感じ、玲奈様から自分の友人である清芽は良い子とか頼れる存在とかいう話を吹き込まれたのだろう。当の玲奈様は清芽の本性を知らないため責める事はできないが。


(そもそも清芽はなんで変わったんだろう?)


初めてあったばかりの頃の清芽と今の清芽を思い比べて見ても違和感がありすぎる。もしかして清芽は自分の知らないところで他にも何かやらかしてるかもしれない。


「それと...島津憩美‼貴女は玲奈様が好きなの?貴女自身は玲奈様をどう思ってる?」


「それは...」


「正直にいいなさい、絶対に怒らないから。」


奏の言葉に憩美はうつむいてしばらく黙っていたが、やがて何か決心したかのように顔を上げた。



「私は玲奈さんが......好き......なのかもしれません。」








・・・・・


奏と憩美が話していた同じ頃、別の空き教室では...


「いやぁ~‼わざわざ教えてくれてありがとうございますね!陽菜さん‼」


「いいえ、清芽先輩、お構い無くです!」


「それにしても島津憩美さんを野放しにしておくのはまずいかもですね。」


清芽が自身が呼び出した陽菜に憩美の事について情報を聞き出していた。


「全く...陽菜さんという可愛い実の妹がいるのに玲奈ちゃんったら...ぽっと出の公爵令嬢をまるで妹のように扱うだなんて...」


「まぁ、はい...許せませんよね?」


〃実の〃という言葉に一瞬、陽菜がビクッとしたがそれどころじゃない清芽が気づいた様子はなかった。


「でも最終的には実の妹である陽菜さんと憩美さんがどっちが大切かと言われたら陽菜さんが選ばれるに決まってるじゃないですか‼憩美さんのどこに勝てる要素があるんですか⁉」


「そうだといいんですが...」


「はぁ...心配性にも程があります。」


清芽から見るとなぜ陽菜がこんなにも憩美を警戒するのか分からない。むしろ、ぽっと出の公爵令嬢である憩美よりも昔から玲奈ちゃんに家族同然の扱いを受けていたらしい三条莱們の方を警戒すべきではとまで思ってしまう。


実際、清芽もグループのメンバーのほとんどを玲奈ちゃんを巡るライバルとは見なしていない。なぜならメンバーのほとんどは学園に入学してから初めて玲奈ちゃんと出会ったのだ。そもそも学園入学前からの仲である自分とは同じ土俵に上がれていない。


陽菜に対しては玲奈ちゃんも可愛がってるようだが、それはあくまで妹としての姉妹愛にすぎず、自身が考える愛情とは別と考えている。なので自分と玲奈ちゃんには絶対的な絆があると信じていた。


(となると...厄介なのは奏と莱們さんだけなんですよね...)



大炊御門奏。彼女もまた、自身と同じく二条家のパーティーにて玲奈ちゃんと運命の出会いを果たしている。その時に自身を含めた3人は意気投合してこれからもずっと仲良くできると思っていた。...あの時までは。


そして、三条莱們。玲奈ちゃんが言うには幼い頃から彼女と姉妹同然の付き合いをしてきたようだ。そこまでなら姉妹愛で片付けられるが、陽菜と違って血の繋がりがあるわけではないので油断はできない。とはいっても奏ほどではないが。


清芽は自身にとって玲奈ちゃんを巡るライバルとなり得るのはこの二人のみと考えている。わざわざ玲奈ちゃんが春休みの間にずっと家に泊めたらしい島津憩美という少女も気になるが、この子は自身が手を下すまでもなく陽菜が何とかするだろう。


「とにかく...憩美さんには気をつけた方がいいですね。」


「ですよね!何かあったら清芽先輩も助太刀して下さいね!」


「ふぅ、考えておきますね...」



玲奈が歴史を変えたおかげでミラピュアとは違い、初対面の時にすっかり仲良くなれたかにみえた清芽と奏。彼女達が仲違いを始めたのも果たして本来の歴史の修正力の一環なのだろうか?




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