113.憂鬱...そして、3年生に
第113話
「あっ!お久しぶりです‼玲奈様‼おはようございます‼」
「あつ!奏ちゃん、ごきげんようです!」
ついに今日から新学期、3年生になったわけだけど...
「あの...玲奈様、どうかしましたか?」
「いいえ、何もありませんよ?奏ちゃんと同じクラスになれるといいですね。」
「はい‼クラス替えが楽しみですね!」
私は昨日の夜、久しぶりに現れた麻呂さんに言われた事の件で頭がいっぱいだった。
(なんで、あの子と莱們ちゃんが?)
あの子こと高松美冬ちゃん。ミラピュアの耀心くんルートに登場する子爵家の令嬢で莱們ちゃんと同い年の子だ。
私がこの子を警戒するのは、ミラピュアでの彼女は耀心くんルートのライガオウボスであり、耀心くんとの仲を深めつつあるヒロインを目の敵にするという点...というよりは彼女が何故かヒロイン以上に三条家を毛嫌いしており、莱們ちゃんは彼女の手によって何度も危険な目に遭うからだ。
彼女は悪役令嬢ポジションだが、なにもヒロインと耀心くんを巡って対立する恋敵というわけではない。むしろ莱們ちゃんと耀心くんはもちろん、二人と親しい人間は全て陥れようとするなど根っからの悪人として描かれている。
恐らく耀心くんルートの玲奈お嬢様はまだ多少は救い用がある人物として描かれた事から彼女が代わりに従来の玲奈お嬢様のキャラを引き継いだともいえる。
ちなみに他のルートとは違い、子爵家の令嬢でしかない美冬ちゃんがなぜライガオウボスというポジションで振る舞えたのか。その最大の伏線はティランティーノボス編にて明かされる。なんと美冬ちゃんはティランティーノボスの...
「さぁ、早く‼新クラス表を見に行きましょうよ!」
「あぁ...そうですね。」
はぁ...とりあえず美冬ちゃんの件は後回しかな...今は新しいクラスがどうなるかを気にしないとね‼
・・・・・
運命のクラス分けはというと、
「私と蛇茨が1組⁉」
「あらあら~?また貴女と1年間一緒だなんて~‼まぁ、よろしく頼むね。」
1組に編入されたのは奏ちゃんと蛇茨ちゃんだった。この二人が連続で一緒のクラスになったのは私にも意外だったが、この二人は2年生の時に同じクラスになった時に身分関係なくお互いに相性が良く、クラスのムードメーカー的な存在だったそうだ。おかげで去年の2組は平民と貴族の距離を縮める事に成功した。それに味をしめた学園側が1組でまた同じ事をしようと思ってるのだろうか。
「私達は2組か~。」
「結構固まったね!」
2組に編入されたのは真里愛ちゃん、沙友里ちゃん、姫由良ちゃんだった。この三人も問題ないだろう。
そして私のクラスは...
「また3組ですか。」
「いいえ‼玲奈ちゃん!去年とは違います!今回は私と一緒のクラスなんです!」
私は清芽ちゃんと一緒に3組に編入された。その事に清芽ちゃんは上機嫌で私に話しかけている。
「私も清芽ちゃんと同じクラスになれて嬉しいです!」
「あぁ~‼玲奈ちゃん~‼
...ふふっ‼玲奈ちゃんと同じクラスになれるように実家を通じて校長にお願いしといて良かったです...」
「えっ⁉清芽ちゃん、今なんと?」
「いいえ‼何でもないですよ。なので気にしないでください。」
ふ~ん、最後の方はよく聞き取れなかったけど清芽ちゃんはとっても喜んでるみたいだしこれでいいんだよね...
「蛇茨ちゃん~‼優里ちゃんが心配なんじゃないの?」
「バカ言わないでよ‼気が向いたら顔を見にいかなくもないけど...」
「やっぱり‼」
「だから違うって‼」
「兼藤さん‼大坪さん‼落ち着いてください...」
残された優里ちゃんは5組に編入されている。私達のグループで一人だけとはいえ、5組に編入される生徒達は基本的に優しい子ばかりだし、蛇茨ちゃんも遠回しに気にかけてくれてるから完全な一人ぼっちというわけではない。
「う~‼清芽だけ玲奈様と...ズルい!」
「奏、去年は真里愛ちゃんが玲奈ちゃんを独り占めしてたんですから‼今年は私だって良いじゃないですか。」
「それだったら誰でも良くな~い⁉」
「私も玲奈ちゃんと同じクラスが良かったです...」
「ちぇっ‼私が皆が暴走しないように玲奈と同じクラスになって見張っといてあげようと思ったのになぁ~。」
「はいはい!確かに私は去年は玲奈ちゃんと同じクラスでしたけどまだまだ物足りないです‼今年も私が玲奈ちゃんを堪能する権利はあります!」
『『『『『それは一番ない‼』』』』』
「皆ひど~い...」
おや?なんか優里ちゃん以外の皆が揉めてるけど何でだろう?ひょっとして優里ちゃんが一人だけになるのをここまで心配してくれてるの⁉だとしたらみんな天使だよ‼
「というわけで改めまして玲奈ちゃん!1年間よろしくお願いしますね‼」
「あっ...こちらこそよろしくね‼清芽ちゃん!」
「うふふっ‼」
「......!!」
その時の清芽ちゃんの妖艶な笑みに思わず私はどこかキュンとしていた。
それを見た他のメンバー達が表情を曇らせて面白くなさそうにしていたのは恐らく私の気のせいに違いない...
おまけ話⑥...高松美冬がなぜ三条家をここまで恨んでいるのかはミラピュア本編では明かされておらず、攻略ブックにもはっきりと記載されていない。
(なので現時点では玲奈も美冬の過去なんかは当然知らない。)
全てを知っているのは美冬本人のみである。




