108.距離感は違和感に①
第108話
私は今更ながら疑問に思っていた。
(う~ん、グループの皆...普通のお友達だけの関係にしては私との距離近すぎない⁉)
本当ならずっと前から気づくべきだったのかもしれない。新学期で再会した時なんかみんな私にべったりだったし...
「大丈夫‼友達ならそれくらい当たり前だと思うよ?」
「えっと、そうでしょうか?姫由良ちゃん...」
「うん‼」
休み時間を削ってまでそんな私の相談に乗ってくれてる姫由良ちゃんには本当に感謝だ。
彼女は私達みんながずっと仲良しでいる事を願ってくれているのだ。そこにはかつて自分をいじめていたグループに所属していた優里ちゃんまで含まれている。ここまで優しくて心も広いなんて...
「姫由良ちゃんは天使みたいな子ですね。」
「えっ?天使⁉私が?」
私の言葉に首を傾げてキョトンとしている姫由良ちゃんはとても可愛らしかった。
(ゲームの姫由良ちゃんも確かに優しい性格だったけど最初は蛇茨ちゃん以外の子達に対してはどこか心を閉ざしていた...だけど今の姫由良ちゃんは全然違う...これって私のおかげなのかな?)
姫由良ちゃんがどうかいつまでも純粋に育ってほしいと思った私なのであった。
・・・・・
「姫由良、まさか玲奈にここまで心を開くとはねぇ。」
「それは蛇茨ちゃんの方なんじゃない?」
姫由良は玲奈と別れた後、入れ替わるようにして現れた蛇茨と話をしていた。
「いや、昔あんな事があったからもう私以外の人には心を開かないとばかり思ってたからさ‼」
「あれ~?蛇茨ちゃん、嫉妬しちゃったぁ?」
「そんなんじゃないよ...」
「ほんとに~?」
姫由良もそうだが蛇茨もずいぶん変わった。昔はツンツンしていてかっこ良かったのに今ではただのツンデレ女子に成り下がっている。姫由良はそこが少しだけ残念だった。
「私達は8人で1つだもん!誰か二人だけの距離が近くなるとかはダメ‼みんな公平なお友達でいたいの!だから私もグループのみんなには心を開くことにしたんだよ。」
「......」
姫由良は8人の友情を乱したくなかった。
「だから清芽ちゃんが冬休みに私達を騙そうとした事も玲奈ちゃんに教えるつもりはないし、蛇茨ちゃんが私から見て少し遠くの人になってしまったことを咎めたりもしないよ。」
「姫由良、別にそんなつもりじゃない...私達は大切な友達でしょ?」
「うん、そうだね‼
...............今の所は...」
姫由良は同時に危機感を覚えていた。自分達の関係がいつか何かの拍子で壊れてしまうかもしれない可能性を...
(みんな...特に清芽ちゃんが勝手な事しないように気を配らないと...せっかくの私達の関係が壊れちゃう‼)
だからこそ自分がなんとかしないといけない。
「ビックリしたー‼つい姫由良に嫌われたと思ったよ‼」
「もう‼蛇茨ちゃんったら!そんなわけないじゃん‼」
「本当に良かった!
..............................もし姫由良に嫌われたとなるとあの人達に怒られるのは私...」
二人っきりで会話する中で姫由良と蛇茨はお互いにどこか複雑な思いを抱いていたがそれを相手に伝える事は決してなかったのだった。
このグループ、思ったほど1枚岩ではない?




