103.偽装デート⁉
第103話
「う~ん、耀心くんにはこれが似合いそうですね~。」
「あっ...ありがとうございます‼玲奈様。」
私は今、ミラピュアのヒロインの攻略対象の1人、三条耀心くんとデートをしている。彼は莱們ちゃんの双子の弟だが性格は正反対で大人しいタイプの男の子だ。
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ...」
「はっ...はい‼では次はどの店に...」
なぜ、こうなったのかというと...
・・・・・
それは、つい先週のことだ。
「わざわざ、呼び出してごめんね~。玲奈ちゃん。」
「いいえ、波季里様。お構いなく。」
私は莱們ちゃんと耀心くんの母である三条波季里様に何故か呼び出されていた。
「あのね、実はお願いがあるの。」
「お願いですか?私に言える事なら何でも言ってください‼」
もう昔の事だが皆曰く、岩倉家と三条家の交流が深まってからは私の事を娘同然に可愛がってくれたという波季里様のお願いだ。私も波季里様をもう1人の母のような存在と思って尊敬しているので出来る限りの事はするつもりだ。
「実は耀心ちゃんの事なんだけど~...」
そう言うと波季里様は語り始めた...
「...要するに見栄を張って耀心くんに彼女がいるという嘘を?」
「そうなのよ!困ったわ...」
波季里様の話を要約するとつい最近、九条公爵家と一条公爵家のご夫人方と話す機会があったそうだが波季里様はお二人に馬鹿にされまいと耀心くんにもう彼女がいるというでまかせを言ってしまったのだ。こうしてマウントを取る事には成功したのだが...
「しかも今後、自分達の子供が意中の相手を見つけた時に参考にさせるためデート現場をこっそり見学させてほしいと?」
「あはは...」
波季里様は普段は優しい方だが、ちょっとおっちょこちょいな部分もある。今回はそんな性格が大きく裏目に出てしまったようだ。
「そこで玲奈ちゃん‼耀心くんとデートしてくれないかな?」
「えぇっ‼私がですか?」
耀心くんの事は嫌いではない...というか、むしろ私自身の弟分としてたまに彼のクラスを訪ねたりとそれなりに気にかけてはいる方ではある。
だが、だとしても彼がゲームの攻略対象であることに変わりはない。私とヒロインの行動次第では本当にいつ敵対してもおかしくない関係なのだ。
「玲奈ちゃんも分かってるだろうけど耀心ちゃんは人見知りでそこらの女の子とすぐに打ち解けるなんて無理なの。その分、昔から交流がある玲奈ちゃんとなら...ね?」
「確かにそうですが...」
実際、ミラピュアの耀心くんもヒロインと出会うまでは公爵家の息子の割に取り巻きは少なく、ましてや莱們ちゃん以外の女性とは一切関わろうとはしないタイプの子だった。耀心くんルートではそんな彼がそこから1つ年上のヒロインと何かしらの要因で関わるにつれ次第に変わっていき...という筋書きだ。
「はぁ...分かりましたよ。耀心くんにもちゃんと話して下さいね。」
「ありがとう!恩に着るね‼」
一応、破滅回避のために耀心くんとはもう少し仲を深めたいという思惑もあったし今回は波季里様のために一肌脱いであげましょうか...
・・・・・
...というわけだ。
「いやぁ...玲奈様とお出かけできて本当にうれしいです...」
「そっ...それは良かったですね...」
さっきから耀心くんは私に気を遣ってばかりだ。どの店に行きたいとかも私の希望に添ってくれるし、私が買いたい物を全部奢るとまで言い出している始末だ。さすがに後者は断ったが...
(というか...姿は見えないけどいるんだよね...)
さらにこの場には私達のデートを参考にするためなのか、九条家と一条家の手の者も紛れ込んでいるんだろう。私に気配を悟られない辺り、よほど凄腕の人間なのかもしれない。
今のところは上手くごまかしているつもりだけどこの調子で一日を乗り越えられるのか本当に不安だ。
おまけ話②...実はこの話は本来なら37話にする予定だったがいろいろあってここまで引き延ばされたとか。(そのせいで攻略対象の割に耀心が今まで完全に空気でした笑)




