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【書籍化】捨てられ令嬢は錬金術師になりました。稼いだお金で元敵国の将を購入します。  作者: 束原ミヤコ
閑話

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ナタリアとセレスティア 1



 ナタリア・バートリーは、ラシード神聖国にある異界研究施設、フォレース探究所で産まれた。

 両親ともに優秀な異界研究者であり、魔導師だった――らしい。

 らしい、というのは、ナタリアが物心ついたころにはナタリアの両親は異界の門から冥府に降りて、命を散らしてしまっていたからだ。


 フォレース探究所においては、良くある話だ。

 国家機密に値する情報も多くあるため、一度研究者になるとフォレース探究所から抜け出すことは不可能に近く、そもそも異界の神秘に魅了された人間が研究者になることもあり、人の入れ替わりはほとんどない。

 新しい者は入ってきても、出て行く者は少なく、大抵の場合は天寿を全うする前に仕事中に命を落としてしまう。

 それは冥府で悪魔や魔物によって命を奪われてしまう場合もあれば、悪魔の力を封じるための刻印師となって、命を燃やして魔力を使い、衰弱死してしまう場合もある。

 兎角、フォレース探究所という場所では人の命は軽い。

 ナタリアが育ったのは、そんな場所だった。


 魔法指南書を絵本代わりに、錬金釜や素材を遊び道具にしながら成長したナタリアは、十歳を過ぎる頃には魔導師としても錬金術師としても大人と遜色無いぐらいには優秀で、フォレース探究所の職員達から将来をとても期待されていた。

 十五歳を過ぎたら冥府の探索に連れて行こうと、秘密裏に話し合われていたことに、ナタリアは気づいていた。

 だから、抜け出したのである。


(冥府に降りて死ぬなんて、絶対に嫌)


 そう思っていた。

 その頃のナタリアは、大人達に見つからないように封印の間に忍び込んでは禁書を読み漁り、捕虜のように繋がれた魔力を封じられた悪魔を見物し、飛竜の改良施設(と大人達は呼んでいた)を見て回り、フォレース探究所の一番奥にある、魔物が湧き続ける異界の門をこっそり見に行っては魔物を倒して錬金術の為の素材を集めていた。

 ナタリア以上にフォレース探究所に詳しい者はいないぐらいに、隅々まで調べ尽くしていたのである。

 それなので、十歳のナタリアにはもう、フォレース探究所は面白みの無い場所でしかなかった。

 陰気で、つまらない場所。

 それがナタリアの、フォレース探究所への評価だ。


 フォレース探究所の冥府の研究は、最終的な目標は生と死とは何か、人は不死になれるのかを知るのが目標らしい。

 その為の研究で命を落としてしまうなんて、馬鹿馬鹿しいにも程がある。


 ナタリアは錬金術で作った魔法の箒に跨がって、着の身着のままフォレース探究所を抜け出した。

 追っ手がかけられていたので、なるべくラシード神聖国から離れようと、砂漠を抜けて隣国に向かった。


 アストリア王国に向かったのは、他の国に比べて住みやすそうだと思ったからである。

 ディスティアナ皇国は、民族意識が強い。

 排他的で、他民族を奴隷のように扱っているらしい。


 他の国はディスティアナ皇国程では無いけれど、やはり他民族が入り込むと目立ってしまう。

 フォレース探究所から逃げるためには、目立たない場所が良かった。


 アストリア王国は他国と貿易を盛んに行っており、移民者も多い。

 ラシード神聖国からの移民も多く、血が混じり合うことも良くあると、図書室の本で読んだので、ナタリアは知っていた。


 ナタリアは、アストリア王国の中で一番人が多く、人混みに紛れやすい王都で暮らすことにした。

 とはいえ十歳のナタリアが一人で身を立てるのは、中々厳しい。

 魔法も錬金術も大人以上に扱うことができるけれど、隠した方が賢明だろうと判断して、孤児たちの中に身を潜めた。

 ありがたいことに、アストリア王国の国王というのはかなりの名君らしく、孤児たちの扱いはとても良かった。

 ナタリアはすぐに、孤児院を運営している教会に拾われた。


 それから数年。

 ナタリアの優秀さに気づいた教会の修道長が、ナタリアが自由に錬金術や魔法の研究ができるようにと、王都の中心地にある二階建ての自宅を、もう誰も跡継ぎがいないからという理由でナタリアにプレゼントしてくれたのである。


 アストリア王国の錬金術は、ナタリアの目からしてみたら児戯に等しかった。

 けれど最初はレベルを合わせて錬金術を行い商品を作り、商売などをしたりしていた。

 なんせ金がなかったのだ。

 金がなければ、生きていけない。

 働くことは性に合わないと気づいていたけれど、仕方ない。食べなければ死んでしまう。

 どんなにナタリアが世界最強の錬金術師だとしても、やはり食べなければ死んでしまうのである。人間なので。


 この頃には、まだナタリアに自宅をくれた修道長が生きていた。

 修道長が度々ナタリアを心配して様子を見に来るので、仕方なく頑張って仕事をして、きちんと食べたり寝たり、人間らしい生活をしていた。

 けれど更に数年。

 修道長が天寿を全うすると、ナタリアを心配する人は誰も居なくなってしまった。

 それが悪かったのだろう。


 向かない仕事を頑張ってこなして、アストリアの子供だましみたいな錬金術に自分を合わせていたナタリアは、全てが馬鹿馬鹿しくなってしまった。

 

 それなので、再び魔法の箒に跨がって、世界中を見て回った。

 もうフォレース探究所からの追っ手もない。ナタリアは自由だ。

 フォレース探究所は相変わらずろくでもない研究をしているようだけれど、もう関わりたくも無いと思っていた。

 世界中を回りながら、各地で出現している異界の門の、門の魔物を倒して素材を集めたり、珍しい動物や、植物、魔物からとれる素材を集めたりして数年。


 結局またアストリアの自宅に戻ってきたナタリアは――もう外の世界には興味が無くなってしまったので、自宅に籠もることにしたのである。



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