無名の星
お題:無名の星
「僕は、あの星に行ってみたいんだ」
夜空に光る一点の星を指差し、唐突に言い出す彼。
「どの星? 何て言う星?」
私は星の事に詳しくない。もっと言うなら興味も余り無い。
けど、彼の話しは楽しいし、出来れば同じ知識を共有したい。
「さあ?」
さあって……
「何て言う星かは知らない。でも行ってみたい。知ってるかい?
あそこで光る星は、もう無いかも知れないんだ。
だから、そこから地球を見れば昔の地球が見えるかも知れないんだって」
うん、彼が何を言っているのか解らない。
大体、無いかも知れない星にどうやって行くと言うのか。
彼の事は嫌いじゃ無い。むしろ好きなんだけど、時々こう言う訳の解らない事を言い出して、私を困らせる。
折角2人で星空を眺めているんだから、もう少しロマンチックな話しをしてくれても良いんだけどな……
「私を置いて行くの?」
彼を困らせてやろうとちょっぴり意地悪な質問をする。
せめてもの意趣返し。
彼はうーんと少し悩み、
「君を危ない目には合わせたく無い。
でも、好きだから一緒に行きたい」
真面目な顔で答える彼の言葉に、私の顔は一気に熱を持つ。
「な、何言ってるの! 突然過ぎよ……」
「そうだね、じゃあ行く時にまた言うよ。
その時までに考えて置いて!」
それじゃあ、いつまで経っても返事出来ないじゃ無い!
はぁ……なんでこんな人好きになっちゃったんだろう……
私は、彼と一緒に星空を見上げる。
そこには沢山の無名の星が何時迄も輝いていた。