白娘の恩返し
この話は短く、切ない系です。
寒い冬のことだった。
白い雪が降り積もる街で、私は君と出逢った。
「 お前、一人か?」
多くの人間が素通りする中、君は私の前に立って、
「 なあ、俺と、来るか?」
そう言って、手を差し伸べた。
結局私はその手を取らなかったけど、君は笑って私を抱いて、
「 俺と一緒に生きよう。俺がお前に、世界を教えてやる。」
白い息を、吐き出した。
そして私は彼奴らと出逢う。
騎士とは思えないような個性的な彼奴らに。
悪人のように姫を攫い、英雄のように街を国を民を守る彼奴らは、後に勇者と呼ばれた。
魔王なんてものが出て、国を出て旅をするなんて言った彼奴らは、ただ笑っていた。
それが偽りなんて知らない民は、彼奴らを英雄と呼び褒め讃えながら見送った。
危険を彼奴らに押し付けて笑う民を罵って、私はそっと後を追い、
結局バレて怒られたけど、共に旅をした記憶は、案外悪くはなかった。
だから、私は感謝しているのだ。
あの日君と出逢ったことに。彼奴らと出逢い、共に笑い、悲しみ、生きたことに。
だから、これは私の、
ただの、恩返しだ。
( ザシュッ )
( メイ!!)
出逢えたことに感謝した。
これで終わりと思うと何だか頬が濡れたけど、
初めて見た君の涙はとても綺麗で切なくて、
彼奴らの驚いた声と歪んだ顔に私は、
自然と頬が緩んだ。
( ありがとう、私の、)
( 愛しい、人よ。)
神様なんて信じないけど、もしもいるなら伝えて欲しい。
( 出逢ってくれて、ありがとう。)
( メイ!!メイィ!!!)
さよならは、しなかった。
ありがとうございました。