第1問 鉄と綿
時刻は22時ちょうど。
場所は中学校の体育館。
携帯の時刻の横が『第7日目』を示すと同時に、4人の携帯電話が一斉に鳴り出しました。
4匹がそれぞれの携帯電話の新着メールを確認します。
内容は、全員、同じでした。
『 鉄1000㎏と 綿1000㎏ 重たいのは どっち? 』
「「「「……は……?」」」」
そして、全員がメールを読み終わるタイミングを見計らったかのように。
体育館の天井にある2つの舞台照明が、真下の床に向けて光を落としました。
1つは体育館の右のサークルに、もう1つは体育館左のサークルに。
右のサークルの中には砲丸や鉄アレイが重ねて置いてあり。
左のサークルにはマットレスが同じく数枚重ねて置いてあります。
まるで……。
鉄なら右へ。
綿なら左へ。
……とでも、言うように。
「な……なぞなぞ?」
「お、おい、どっちが重いンだ?」
「え、え? た、多分、て、鉄?
いや、でも、あ、あれ?」
3人が慌てふためいている中で、鶏の少年はブツブツと何かつぶやきながら携帯電話を見ています。
「おい、小鳥遊ィ、なにブツブツいってンだ?
さっさと答えを考えろ!」 !?
「……落ち着いて、自分の携帯の時間を見てください。
ちゃんと時間制限も示されています。
まだ、8分はありますよ」
鶏の少年の言うように犬の少年が携帯電話を見てみると。
『10時00分00秒 “第7日目”
残り 08:23』
不思議なことに、時間の方は10時で止まっています。
そして、下に8分ちょっとの時間が示され、秒数が23,22,21とカウントダウンされていました。
犬の少年はまだ時間に余裕があることにホッとすると、再度なぞなぞを読み返します。
……普通に考えると、鉄ですが。
綿だって、1000㎏ともなればそれなりに質量があるでしょう。
というか、そもそも1000㎏の鉄や綿なんて見たこともないし、想像もつきません。
3匹はうんうん唸っていましたが、次第に携帯電話を見て頷いている1匹がうっとおしくなってきました。
「おい、小鳥遊……そろそろ、答え、考えろや……」 !?
鶏の少年はこれも無視してブツブツ携帯電話を見ています。
犬の少年の血管が切れる音がしました。
「あァ……もォいいわ、個別行動な」 !?
犬の少年はノシノシと右のサークル……つまり、“鉄”のサークルへ移動します。
「待って下さい!!」
ここでやっと鶏の少年が声を上げました。
犬の少年は半ギレで鶏の少年に振り返ります。
「……頭脳系のミッションなら、私の指示に従う、と言ったはずでは?」
「ほおォぉおお!? じゃあ指示を出してくださいよ、小鳥遊東“センセイ”?
問題の答えも考えずに、何ケータイイジッてるんスかァ?」 ビキビキ!?
「……え、え? あ、答え、分かってなかったんですか?」
鶏の少年は、まさかその考えはなかったとでも言う様に、呆れたように呟いた。
「え、あんたはもう分かったの?」
猫の少女が驚いて尋ねます。
「だって……1000㎏と1000㎏ですよ?
……同じ重さに、決まっているじゃないですか」