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ブレーメンの屠殺場  作者: NiO
閑話:ブレーメンの遊技場・再演
41/53

萌芽

新旧大黒柱対決・中盤戦

 時刻は昼の1時前。

 場所はオシャレなカフェ。


 猫の少女と犬の少年は向かい合って昼ご飯を食べていました。


 猫の少女の前には季節の魚のムニエルが。

 犬の少年の前には牛フィレステーキがあります。


「やっぱり猫は魚が好きなんだなァ」


「やっぱり、犬は肉が好きなんだねェ」


 2匹は楽しそうに軽口を叩き合います。


 ……ふと。

 猫の少女が、鶏の少年に視線を移しました。


(オイオイ……これで何回目だよ……)


 流石に犬の少年も辟易しています。


 犬の少年も分かっていました。

 猫の少女が、鶏の少年を好きであることを。

 恐らく最初の恋心は、『ブレーメンの屠殺場』での、鶏の少年の発言。

『友達になりませんか』。

 悔しいですが、あれをされたら自分でも惚れる自信がある、と犬の少年は舌打ちをします。


「あー、肉も良いねー」


 悶々としていると、猫の少女がいつの間にか犬の少年の肉を1切れ取っていました。


「一番美味しい、最初のひとくち。

 大事に、大事に、頂きます」


 猫の少女は、いつもの嫌な笑顔で。

 フォークに刺さった肉を、頬張りました。


「……オイオイ、手前(てめぇ)、この“泥棒猫”がァ!!」 ビキビキッ!?


「あははははは!

 ねえねえ、どんな気持ち?

 よそ見してたら一番美味しい所を『泥棒猫』にさらわれたワケだけど。

 ()どんな気持ち(・・・・・・)?」


 犬の少年は怒っていたはずなのに、その言葉を聞いて思わず吹き出してしまいました。


(ヤバいな。

 こんなムカつくことされても、許せてしまうぞ……)


 自分の気持ちの根深さに、少し危機感を抱きながら。



*************************************


 時刻は昼の2時過ぎ。

 場所は遊園地の大広場。


 鶏の少年と驢馬の少女の組み分けデッドヒートは、激しさを増すばかりです。



 そして、鶏の少年の宣言通り、猫の少女と驢馬の少女にターンは一切回ってきません。


 最初はハラハラして見ていた猫の少女でしたが。

 楽しそうにしている2匹を見て。

 なんだか此方まで面白くなってきました。


「さぁ驢馬塚さん、右と左、どちらにしますか?」


「ぐぬぬぬぬ!!」


「ガリベンくーん、今回も根暗ちゃんを撃破だ!!」


「驢馬塚ァ! イッペンくらい、ビッと“イ”てこませェ!」 !?


 お互いが、敵チームを応援したりしています。

 “ブレーメンの屠殺場”における、右脳と左脳コンビ。 新旧大黒柱対決。

 遊園地のアトラクションよりも、ずっと面白い(・・・・・・)


***********************************


 時刻は午後の4時前。

 場所はトイレ前。



「わ、私、蛍を見に行ってくるね!」

「あ、あたしも、雉を打ってくる!」


 女子チームは、本日何度目かのトイレ休憩に入ります。


 洗面台でがっくり項垂れる驢馬の少女に、猫の少女は声を掛けました。


「ちょっと、ガリベン君が鉄壁過ぎるね……。

 まさかスマホの『ランダム組み分け』アプリにまで対応してくるとは……」


「……『実行』ボタン押すまでに30秒以上かかってたからね。

 あれ、絶対、乱数調整してたよ……」


 驢馬の少女は溜息を吐きました。

 人間チートが事前に万全の準備をしてきたのです。

 ポッと出の少女が勝てる道理がありません。


「……で、勝算は?」


「……あるよ、1つだけ」


 おお、1つもあるのか、と猫の少女は声を上げます。

 そりゃあそうです、普通に考えて無理ゲーですから。


「その前に、確認だけど」


 驢馬の少女が猫の少女に向き合います。

 いつも優しい目をしている彼女がなかなか見せない、厳しい目。

 だけど、いつか自分を叱責した時には見せなかった、優しい目。


「猫屋敷さんは、本当に(・・・)どうしても(・・・・・)小鳥遊くんと付き合い(・・・・・・・・・・)たい(・・)

 正直(・・)小犬丸くんでも(・・・・・・・)良いと思っていない(・・・・・・・・・)?」


 猫の少女は、ハッとしました。

 確かに、遊園地では1度も鶏の少年と一緒のチームにはなっていません。

 それなのに、こんなに楽しく過ごせているのは、犬の少年のお陰なのです。


「そ、それは……」


 だから、猫の少女は2の句が継げません。

 もちろん、驢馬の少女には悪いとは思いますが……。


「ううん、良いの。

 私も正直、小鳥遊くんのこと、良いなーって思っているし。

 ……もしも猫屋敷さんがそれで良いなら(・・・・・・・)、だけど」


 その言葉に、猫の少女は反応しました。


 いつも優しくて頼りになる鶏の少年。

 酷い言葉を投げかける自分を許してくれた。

 自分に、友達になろうと声を掛けてくれた。


 そんな彼の隣にいる、驢馬の少女を想像して。



「……いやだ(・・・)



 やっと、自分の本音に気づいたようです。



「……そうだよね。


 良かった(・・・・)


 じゃあ、作戦を伝えるよ(・・・・・・・)


 驢馬の少女は、猫の少女の両肩を掴んで、黒い笑顔を湛えています。


「言っておくけど、この方法しか無いので。

 拒否権は(・・・・)存在しません(・・・・・・)


 驢馬の少女の、有無を言わせぬ圧力を前にして。

 まるで屠殺場に送られる(・・・・・・・・)猫の様に(・・・・)

 少女はただただ、涙目でオロオロするのでした。

かなり甘ぁくなってきた・・・が、まだ耐えられないことも無い・・・!

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