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ブレーメンの屠殺場  作者: NiO
閑話:ブレーメンの遊技場・再演
39/53

圧倒

 話は少しさかのぼって。


 時刻は朝の9時前。

 場所は遊園地の噴水前。


 1時間以上も早く集合場所で待ち合わせをしていた鶏の少年と犬の少年は、さっそく話を始めます。


「おィ、小鳥遊“センセイ”……お前、ぶっちゃけ、どっち狙いだ?」 !?


 犬の少年が犬歯を剥き出しにして笑いながら、下世話な話をします。


「僕は……驢馬塚さんの方です」


 犬の少年は静かに告白します。


「例の……『ブレーメンの屠殺場』でこそあまり話はできませんでしたが……。

 病院での彼女の、どんなことにでも真摯な態度で接する姿に……」


「そっか、良かったぜェ。

 正直、お前と被ると、勝てる気がしねェからな」


 鶏の少年の話が長くなりそうだったので、犬の少年は途中で話を遮りました。


「……じゃあ、小犬丸さんは」


「ああ。俺はクソ猫の方だ。

 一緒にいると、楽だしよォ」


「……そうですか……ならば、話は早い!」


 鶏の犬の少年は不敵に笑うと右手を差し出し、それを犬の少年が握り返します。


「……今日は僕たち……」


「あァ……共同戦線、だな……!」


****************************************


 時刻は戻って、昼の12時。

 場所は遊園地の女子トイレ。


 驢馬の少女は悔しそうに猫の少女に話します。


「……とても信じられないけど、グーとパーの攻略法が、あると思う」


 昔から使われてきたであろう、グーとパーでの組み分け。

 まさか攻略法が存在するのでしょうか。


 ……実は、ありました。


 まずは、犬の少年が猫の少女の手に注目します。

 そして、少女の出すものが『グー』であるか『パー』であるかを、スロットの目押しの要領で判断し、同じものを出します。

 それと同時に、『パー』を出すときは右手で『パー』を出しつつ、左手で鶏の少年の背中を叩きます。

 鶏の少年は、背中を叩かれた時は『グー』を。叩かれなかったときは『パー』を出していたのです。


 もちろん、理論と実践は違い、やってみると普通は後出しになってしまったり、あからさまに違和感が出たりします。

 しかし、犬の少年の恐ろしい動体視力と。

 鶏の少年の恐ろしい頭の回転という。

 まさに『知恵』と『力』の双璧を用いて。

 驢馬の少女すら欺くイカサマ(・・・・)をやってのけていたのです。


「……一体、どうすれば……」


 当然少女2匹は、そんな常軌を逸したような詐欺行為に気づくことはできません。


 驢馬の少女ががっくり肩を落としていると。

 猫の少女が彼女に提案します。


「えと、じゃあさ……」


****************************************


「あー、そろそろ、ご飯にしない?」


「一応、お店の予約もしてありますよ。

 ただ、2人席を2つという形でしか取れなくて……」


 驢馬の少女の提案に、鶏の少年は、予想通りの答えをしました。

 悔しそうな顔をしていますが、鶏の少年を除く全員が、それが仕込みであることを理解していますし、鶏の少年もバレていることを理解していました。


「じゃァ、グーとパーで……」


「あ、ちょっと待って!

 今度は、別の物で決めようよ!」


 驢馬の少女が提案しました。


「え? 別に、グーとパーでも……」


 鶏の少年のその声に、猫の少女が反応しました。


「あれ?

 ガリベン君、なんでグーとパーにこだわってるの?


 ねえ(・・)ねえ(・・)なんで(・・・)?」


 相変わらずの気持ちの悪い笑顔で猫の少女が煽ります。


 ……少女たちの案は、簡単なものでした。


 グーとパーが攻略されているなら、別の物で決めれば良い、と。

 それならば5分と5分。

 そしてもし強く反対してきたら、それをきっかけに猫の少女がなんやかんやと暴論をねじ込んで、『鶏・猫チーム』と『犬・驢馬チーム』に持ち込むというものです。


「……何だか、疑われているようですね。

 それは、酷い言いがかりですよ。

 全く、残念な限りです」


 3匹は『白々しい!』と心の中で叫び声をあげましたが。

 鶏の少年もそう思われていることを分かっているようでした。


「分かりました、別の物に変更しましょう。

 じゃあ、何にしましょうか、猫屋敷さん」


 意外とあっさり引く鶏の少年に、猫の少女は慌てます。


「え、あーっと……そうだねぇ……



 ……あ! あみだくじとか!」


「あみだくじ、ですね。

……良いでしょう」


 鶏の少年はそう言うと、リュックサックから、紙とボールペン、そして、回覧板などで使われる木の下敷きを取り出しました。


「「「……は!?」」」


 素早く4本の縦線を引き、下の方に○○××と書いて、書いた部分を折り曲げて隠しました。

 さらに4本の縦線に何本か横線を入れると。


「僕があみだくじを作ったので、最後の残りで結構です。

 好きなところを選んで、横線を好きなだけ付け足してください」


 そういって猫の少女にあみだくじを手渡し、テキパキとゲームを進行させます。


(ああ……これも、駄目だ!!)


 驢馬の少女はオチが見えました。

 

 あみだくじの上の名前と下の組み分けの場所が分かれば。


 ……時間さえかければ、線を付け加えることでいくらでも自由に結果を操作できます!


 そしてそれが出来るのは1番最後に線を書きこむ、鶏の少年だけです。


 驢馬の少女が出来ることと言えば。

 なるべく横線を大量に引いて、少しでも結果を読みにくくすることくらいでした。

 猫の少女も気づいたらしく、鶏の少年が横線を引く時間が長いようであれば糾弾しようと考えているようです。


 しかし、鶏の少年は。

 あみだくじを見るや否やシュッと線を1本だけ引いて。

 ……それだけでした。

 残った空白に鶏の少年が自分の名前を書くと。


「さあ、じゃあ、開示しましょうか!」


 と、笑顔で。


 まるで、結果が分かっている(・・・・・・・・・)ような笑顔で(・・・・・・)、3匹に話しかけました。

鶏の少年はチート。

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