第7問 100の部屋
ポイント&ブックマーク、ありがとうございます!
8月6日になんとか間に合わせたいです!
時刻は3時53分14秒、残り時間は6分46秒。
場所は1階校舎奥の階段、10の12乗階の扉の前。
「10、100、1000……」
驢馬の少女が指折り数えて確認しています。
「1兆……10の12乗、間違いない……よね」
「だりィな、開けるわ」
驢馬の少女が検算している横で、犬の少年がそれを無視して扉をあけます。
「ちょ、ちょ、ちょっとぉぉ!!」
「おらよ」
犬の少年は携帯を見せつけます。
『4時53分53秒 “第48日目”
6問目 クリア』
「「……フゥゥゥ……」」
2匹は深くため息を吐くと扉を抜けたすぐの床に倒れ込みました。
次の問題まで時間は短いですが、少しでも体力の回復をするためです。
しばらく呼吸を整えた後、犬の少年が驢馬の少女に声を掛けます。
「……いよいよ、最後の問題だな」
「うん……」
「……絶対、生きて帰るぞ」
「うん……絶対……!」
2人が思いを確認したところで。
校内放送が流れました。
♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪
『全校生徒のみなさん。
夜中の4時です。
3階校舎にいる皆さんは
最後の問題を確認してください。
繰り返します……』
♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪~♪
「「3階?」」
2人が飛び上がり、今いる階を確認すると。
パネルはもちろん、『10の11乗階/10の12乗階』と書かれて……いませんでした。
「……あれ……3階……だね」
「あんなに頑張って上ったのになァ」
また謎の力が働いたのでしょうか。
パネルには、『3F』と書いてありました。
2匹は少しムッとします。
死ぬほど階段を上った努力を無にされたような気がしたからです。
「これで……『夜中の3時33分に』、『幽霊階段を上って』、『3階校舎に行く』
全部、満たしたわけかァ」
2人が起き上がり、のろのろと階段の踊り場から教室をぬける廊下に出ます。
「当然、校舎は……」
廊下が縦横無尽に走り。
あちこちに階段がついていて。
そして。
無限とも思える数の教室がありました。
まるでバグったゲームのマップ画面のようです。
横の教室には『9年7組』と書いていました。
当然、中学には3年までしかありません。
……留年を、しなければ。
「引き籠りまくったら何年か後にお世話になるかもなァ」
「通う頃には、20歳超えてるね」
2人は軽口を叩きながら、メールを確認します。
先ほどの放送で音が掻き消されていましたが、やはりメールは来ています。
『100個の部屋があります。
番号がふられている以外は、どの部屋もほとんど同じ形をしています。
さて、この100個の部屋のどこかに、誰かさんが隠れています。
それは、どの部屋でしょうか?』
「……最後の最後まで、難しいなァ」
「小犬丸くん、その前に」
驢馬の少女は上ってきた階段の壁に3か所ほど包丁でバツ印をつけながら喋ります。
「猫屋敷さんを、確認しに行こう」
「……は?」
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猫の少女は2階の階段の踊り場で血溜まりを作っていました。
「オイ……何しに来たんだァ?
流石に、墓を作る時間なんて、無ェぞ」
「小犬丸くん、見て。
猫屋敷さん、右手の人差し指に深い傷がついてる」
「……ハア?」
「そして、携帯電話と……なぞなぞのコピーの紙を左手で握りしめたまま、右手の包丁で自分の首を一刺しして死んでる」
「……なんだァ?
驢馬塚は”死体漁り”が好きなのかァ?」 !?
犬の少年も、可能であれば猫の少女を弔いたいと考えていますが。
今は、あまりにも時間がありません。
携帯電話を覗くと。
『4時00分00秒 “第49日目”
残り 17:32』
普段より時間は長めのようですが、それでも十分とはいえません。
「とりあえず今は、第7問目を解くことが先決、じゃねえのか?」 !?
「多分、猫屋敷さんはこのなぞなぞについて……小鳥遊くんが伝えたかったことが解ったのかも」
「おい、人の話を……」
「まず、大声で私たちにその内容を伝えようとして、思いとどまる」
「……?」
驢馬の少女は、まるで見てきたように話をします。
「なんだ、驢馬塚ァ……乗り移ったのかァ?」
「いえ、何も”見”えないけど、何となく分かる。
次は、携帯電話で伝えようとする、でも……」
携帯電話は『実はこれは』と書かれた後で止まっていました。
「なぜか、失敗。
仕方なく最後の手段、小鳥遊くんのように、血文字で伝えようとする」
「!! それが、この右手の人差し指か!?」
「そして、これも失敗。
そこで時間切れがきた。
……なんで自殺したのかは、解らないけど」
「……ンだよ。
結局、何も解んねェってことじゃねえか」 !?
「いえ、解る。
……猫屋敷さんは、どうにかして私たちに伝えたいことがあったことが解る。
そしてそれは、このなぞなぞノートの問題に関することだということも、解る」
「ンなん、解ってなンになるんだよ……」 !?
犬の少年は明らかにイライラしていました。
しかし、驢馬の少女は怯むことなく、おそらく犬の少年が激しく怒るであろう爆弾を投下します。
「第7問目に入る前に……小鳥遊くんが発見して、猫屋敷さんが伝えたかったことを、ハッキリさせよう」
「……はァァ!?」 !?
驢馬の少女はなぞなぞノートを取り出すと、ページを広げました。
犬の少年は力強く吠えます。
「オイオイ……言いたいことは解るがよ。
それが何を表しているか知らンけど。
第7問目を無視してまで解くものじゃねェだろう!!
だいたい、もう次の答えを出せば、クリアじゃねェか!!」
「うん、だから、ここから先は別行動。
私はこっちを何とか解決する。
小犬丸くんは、第7問目に取り掛かってもらえるかな」
「ほ……本気かァ!?」 !?
「うん、本気」
犬の少年と驢馬の少女の間に、不穏な空気が流れます。
犬の少年は顔を赤くしたり青くしたりした後。
「……あァ、勝手にしろや。
俺は3階に上がるわ」
犬の少年は何とか怒りを隠して、階段を駆け上がっていきました。
驢馬の少女は、なぞなぞノートを広げて、考え始めます。
普通に考えたら、第7問目をほっておいて全然関係ないなぞなぞに取り掛かるなんて、正気の沙汰ではありません。
……でも、命を懸けて何かを伝えようとしてくれた猫の少女の気持ちを、無駄にしたくなかったのでした。
「もう、どう行動すれば正解なのか、解らない。
この決断が、吉と出るのか、凶と出るのかも……解らない」
それでも驢馬の少女は、決断しました。
さて、一体どちらに転ぶか。
それが解るのは、さらに数十分後になります。