図書館
ブックマーク、また増えてました。本当ありがとうございます!
時刻は2時30分過ぎ。
場所は中学校の図書室。
「あった、なぞなぞノート!」
3匹の携帯電話が目当ての物を照らしだします。
「小鳥遊くんが一体何について言及したかったのか、私たちには分からない。
『これが怪しい』と思ったら、みんなも教えてちょうだいね」
驢馬の少女はそう前置きをすると、ノートのページをめくっていきました。
ペラリ……
『さんかくなのに 四角いもの なーんだ』
ペラリ……
『切っても切ってもきれないものなーんだ』
ペラリ……
何枚かページをめくって。
そして、手が止まります。
『絵本が大好きなニッケルさんは、車に跳ねられて死にました……』
「「「……これだ!!」」」
全員が同時に声を上げます。
7不思議の1つ……“図書館のニッケルさん”が文章に記載されていたからです。
なぞなぞ本文を確認していくと……内容は、どうやらよくある都市伝説。
長々とした文章が続いた後。
『……さて、今までの話の中に、明らかにおかしいところが1か所あります。
それはどこでしょうか?』
という言葉で終わっていました。
いくつかのピントのずれた解答を目で追っていると。
タイピングしたような綺麗な字で、簡潔に書かれた解答を発見しました。
まるで、書いた人の性格を表している様な文章の内容は。
『×跳ねられる→○撥ねられる』
……という、明らかにおかしい、“漢字の間違い”を指摘するものでした。
「さすがは”センセイ”。
”はねる”の漢字なんて普通分かンねえよ」
「うわ、ガリベン君が書きそうな字!」
「確かに」
3匹はしばらくそんな言葉を交わし合いました。
「……残念だけど、ここで考えている時間はないね。
ノートを人数分コピーして持っていこう。
そして、空き時間で『小鳥遊くんの伝えたかったこと』をみんなで考えよう」
他の2匹は頷きます。
まるで人が変わった様な驢馬の少女の積極性に、少し驚きながら。
驢馬の少女自身も驚いていました。
前に出るのが苦手で、何をするにも裏方に徹していた驢馬の少女ですが、『前任のリーダー』の遺志を継ぎたいという思いが、積極性を出しているのでしょう。
「私の考えを言うね。
……私たちが、……いわゆる“ブレーメンの屠殺場”へ連れてこられたのは、この問題が『引き金』になったんじゃないかと思う」
「え!? でもガリベン君はそんなこと一言も……」
「……まァ、言えないわなァ。
俺たちがおかしな世界に連れてこられたのは自分のせいです、なんてよ」
「もちろん、言い難かったのはあると思うけど。
……多分それ以上に、私たちのチームワークが壊れることを恐れたんじゃないかな」
驢馬の少女の台詞に、2匹は頷きました。
確かに、出会った当初にそんな話を聞かされたら、とてもまともな関係は作れなかったでしょう。
「それに、これが今までのような一連のなぞなぞだったとしても、もう、解き終わっている。
だから、言う必要もないだろう、と考えていた」
驢馬の少女は、コピーした紙を2匹に手渡しながら続けます。
「だけど、死に際で、何かに気づいた。
この問題を見られて、私たちの関係が壊れる可能性も考慮したうえで。
それでも伝えなくてはいけなかった、何かに」
驢馬の少女は原本であるノートを持っています。
どうやら図書館から無断で持ち出すようです……まあ、この際、悠長なことは言っていられませんが。
「……じゃあ、行こ。
もう時間が無い」
時計を確認すると、既に2時50分を回っていました。
「ねえねえ根暗ちゃん、ちょっと聞きたいんだけど」
1回校舎奥の階段を目指しながら、猫の少女が驢馬の少女に話しかけます。
「さっき、ノートの問題が“今までの様な一連のなぞなぞ”のうちの1つ、みたいな言い方したよね。
つまり、『図書館のニッケルさん』はクリアした……ってこと?」
「うん……多分」
「そうは言うけど、ええっと……確か、7の倍数日にしか問題は出ないんじゃなかったっけ?」
「ああ……。
実は、私、最初から気になっていたあることがあって。
そして、そのことに小鳥遊くんなら当然気づいていたはずなんだ。
なのに、彼は指摘もしなかった。
どうしてかな?と思ってたんだけど……」
驢馬の少女は、要領を得ないような話を始めました。
「今回の図書館の問題を見つけたことで疑問が解けた。
なんで小鳥遊君がそのことについて指摘しなかったのか」
驢馬の少女は少しもったいぶった後、そのことについて話しました。
「『第0日目』も、7の倍数だよね」
「「……あっ」」
0は全ての数字の倍数で。
当然7もその倍数に含まれています。
「だから、7不思議と関係している、今回の一連のミッションは」
驢馬の少女は重要なことを伝えるように言葉を一度切って、それから改めて話し出しました。
「……合計で、『8つ』、ある」




