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ブレーメンの屠殺場  作者: NiO
第28ー35日目 美術室:人食いモナリザ
20/53

安心感

 時刻は1時10分過ぎた頃。

 場所は中学校の3年3組横の女子トイレ。


 トイレから出てきた鶏の少年と猫の少女が話しています。



「ねえねえ、花子さんの顔見た?

 噂より怖かったよねー!」


「は?

 見るわけないでしょう。

 目を瞑っていたに決まってるじゃないですか」


「うっわー、せっかく花子さんを見るチャンスだったのに!

 え、もしかして、ガリベンくんって チ キ ン 野 郎 ?

 あ、そうか、名前からしてチキンだったもんね!」


「……慎重と言ってください。

 全く……猫屋敷さんにはイギリスのことわざを教えてあげましょう



 『好奇心は(・・・・) 猫を(・・) 殺す(・・)』」



「完全論破された!」



 ……鶏の少年と猫の少女は、なんだか楽しそうです。



 一方別の場所では、トイレから出られた犬の少年と驢馬の少女が会話をしています。


「こ、小犬丸さん、本当に有難う……。

 ごめんなさい、な、なんかしっかり歯型残っちゃって……手、き、傷になっちゃったね」


「あァ、良いって、こんなン、舐めときゃア治るわな」


「え、ちょちょちょちょっと、なななな舐めるのは駄目じゃないかななな!?」


「え? ああ、そうか?」


「え? あ、あ、あああでもでも、舐めたいなら舐めても良いんじゃないかな。うん!」


「いや、確かに傷口にバイ菌とか入るとマズいしなァ。

 洗うことにするわ」 


 驢馬の少女の言う通りに洗面台で傷口を洗う犬の少年と、何故か残念そうな驢馬の少女。

 ……こっちはなんだかラブコメをしています。


 先ほどのピリピリした空気が、少しだけ、いや、大分改善されているみたいです。

 なんとなく全員の顔に穏やかな笑顔が見られます。


 4匹がそれぞれ人心地が付いた後、鶏の少年が声を上げました。


「次は、美術室ですね」


「……っていうことは、『人食いモナリザ』かな」


「あ、そ、それは私も知ってる」


「有名な話だなァ。

 っつーか、それ以上でも以下でもないというか」


「一応『人食いモナリザ』説明しておくと。

 『美術室のモナリザの絵が夜な夜な徘徊して出遭った人間を食べる』というお話だよ」


 猫の少女の説明に、3匹が頷きます。


「皆さん、新しい情報はありませんか?

 ……無ければ、少し早いですが美術室へ向かいましょうか」


 鶏の少年の発言に3匹は力強く頷きます。

 当初は不安そうだった4匹の表情は、いつの間にか強い自信をにじませています。


 不安な出会いから、離散の危機を経て、それぞれへの信頼関係が構築されたことからの強い自信と希望―――それらは、安心感と言い換えてもいいのかもしれません。

 全員が頑張れば、なんとかなるとだろうという根拠のない安心感。



 まともな精神状態を取り戻した4匹がそれに依存するのも仕方がないことなのかもしれませんね。






 それが良いモノの(・・・・・・・・)はずがないのに(・・・・・・・)





 根拠のない安心感(・・・・・・・・)―――その別名は、油断(・・)





 そして、気づいた時には、手遅れ(・・・)です。


 『出会って』、『話をして』、『喧嘩して』、『仲直りして』。


 当然、次は、『お別れをして』、ですよね。

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