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ブレーメンの屠殺場  作者: NiO
第21ー28日目 女子トイレ:トイレの花子さん
16/53

引きこもり

 鶏の少年、小鳥遊(たかなし) (あずま)は引きこもりでした。

 彼の『天才』発言にイラついたクラスのヒエラルキー上位層からやっかみを受けたからです。


 猫の少女、猫屋敷(ねこやしき) 西(あき)は引きこもりでした。

 彼女の他人を傷つける発言の数々に、周囲が辟易して、孤立してしまったからです。


 犬の少年、小犬丸(こいぬまる) (なみ)は引きこもりでした。

 彼の激しい攻撃性に、多くのクラスメイトが恐れてしまったからです。


 驢馬の少女、驢馬塚(ろばづか) (そむく)は引きこもりでした。

 引っ込み思案で不思議な雰囲気を放つ彼女を、力を持つ女子グループが排除したからです。



「も、もう一度言うよ。

 私たちは、『似た者同士』、『仲間』です。


 力を合わせて、戦っていこう……?」



 驢馬の少女の言葉に3匹は言葉をなくして静まり返ります。



「うふ、あは、あはははははははははッ☆」



 猫の少女が、声を上げて笑い出しました。


「え、あんたらみんな、引きこもりなの?

 全員、人生の敗者?

 なにそれ、面白いんですけど!!」


 少女の言葉は、仲間意識と言うより、まるで失敗した人たちを咎める様な物言いでした。


「ガリベン君は、『このままじゃいけない』と思ったんだね。

 リハビリのために夜の学校に忍び込んだんでしょ?」


「!!」


 猫の少女の言うことは図星だったようです。


「馬鹿じゃないの?

 自分で自分のことを天才とかいう人間を好きになるヤツなんていると思う?」



 猫の少女は嘲笑いながら驢馬の少女へ向き直る。


「根暗ちゃんが夜の学校に侵入したのは別の理由だよね。

 多分、『霊的な』とか、『オカルト的な』とかな理由なんでしょ?」


「!!」


「馬鹿だねー。

 そんなことしても、楽しかった学生時代は戻ってこないのに!」


 驢馬の少女は驚きます。

 彼女は、人の心が読めないのではありません。

 人の心を感じ取りながら、その上でそれを馬鹿にしているのです。


「野良犬くんも、まさか引きこもりだったなんてねー」


 彼女の傷つける言葉は続きます。


「分かってるんでしょ?

 あんたの暴力コミュニケーションは、人を傷つけるって。

 あんたが動けば、全員が傷つくって!」


 猫の少女は全員に当たり散らしています。


 驢馬の少女は思いました。

 完全に、私のミスだ、と。

 そして、驢馬の少女は、猫の少女を切り捨てることに、決めました。


「で、でも、小犬丸さんには友達は、い、いたと思う」


「……!?」


 驢馬の少女の突然の発言に、猫の少女は少し驚きながら耳をそばだてています。


「こ、小犬丸さんは、気が短くて、すぐに殴りかかる怖い人。

 でも情に厚くて、と、友達の窮地には自分を捨ててでも、た、助けに来てくれる人。

 友達が、いないはずがない」


 驢馬の少女は続けます。


「た、小鳥遊さんは、自分を天才とか言っていて、う、恨みを買っていたと思う。

 でも、と、とっても優しくて、頼りになる人。

 彼の変わった部分も含めて受け入れてくれた友達はたくさんいたと思う」


 猫の少女がぽかんとしています。


「私にも、と、友達はいたよ。

 オカルト仲間、とか、だけど。

 皆優しくて、気の良い人たち。

 でも、猫屋敷さん、貴女はどうだった?」


 驢馬の少女の攻め立てるような発言。

 もしかしたら彼女も、精神面でダメージを受けていたのでしょう。

 うっぷんを晴らすかのように話を続けます。


「人の失敗を喜ぶ発言。

 揚げ足を取って嘲笑うような発言。

 貴女には、友達がいなかったんで(・・・・・・・・・・)しょう(・・・)

 だから、引きこもりになったん(・・・・・・・・・・)でしょう(・・・・)?」


 完全に図星をつかれた猫の少女は、何の反論も出来ないまま、ただ口をパクパクとしているだけでした。

 目元には、涙が浮かんでいます。

 それでも、驢馬の少女は、言葉を止める訳にはいきませんでした。


「あ、貴女の性格は、皆に嫌われる、さ、最低の性格。

 いじめて、おいつめて、あおって。

 楽しいですか?

 愉快ですか?

 それで、人生、じゅ、充実していますか?」


「うあ、あ、あああああああああああ!!」



 人を呪わば、穴二つ。


 猫の彼女も、自分の物言いに自分で傷ついていたのかもしれません


 驢馬の少女の発言に、猫の少女は泣き叫んで。



 ゆっくりと、崩れ落ちました。

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