第2問 正直村と嘘吐き村
時刻は23時ちょうど。
場所は中学校の理科室。
家庭科室で包丁とまな板を手に入れた4匹は、既に理科室の中にいました。
前回同様に、携帯の時刻の横が“第14日目”を示すと同時に、4人の携帯電話が一斉に鳴り出します。
どうやら今回も、なぞなぞのようです。
全員がメールを確認しました。
『貴方は『正直村』を目指して歩いています。
道を進んでいると、二股の分岐路がありました。
どちらかが『正直村』へ、どちらかが『嘘吐き村』へ繋がる道です。
『正直村』の住人は必ず本当のことを。
『嘘吐き村』の住人は必ず嘘を言います。
どちらの道を進もうかと貴方が迷っていると、道の先からどちらかの村の住人がやってきました。
貴方は彼になんと尋ねれば、『正直村』へたどり着けるでしょうか』
そして、下にスクロールしていくと例の文字が書いてあります。
『ただし、間違った答えをすると、死にます』
4匹がメールを読み終えて顔を上げると。
そこにはいつの間にか、人体模型が1体立っていました。
「「「「ギャ―――――――!!」」」」
虚を衝かれた4匹が叫び声を上げます。
「え、あれ。
……なーんだ、ただの人体模型か、驚かせないでよ……」
猫の少女が「ちょっと漏らしちゃったじゃん」と誰にも聞こえない声でつぶやきました。
急なことで皆は考える機会を失っていますが。
これがただの人体模型でないことは明らかです。
だって、さっきまで、なかったんですから!!
「つまり、人体模型が、『村人役』ということですか」
鶏の少年はそう呟きながらなぞなぞを考えます。
考えられる可能性は4通り。
① 『正直村』の道から正直村の村人が来た場合。
② 『嘘吐き村』の道から嘘吐き村の村人が来た場合。
③ 『正直村』の道から嘘吐き村の村人が来た場合。
④ 『嘘吐き村』の道から正直村の村人が来た場合。
この4パターンを質問1つで解決しなくてはいけないのです。
村人が正直なのか嘘吐きなのか。
そして正直村がどこなのか。
たった1つの質問で、です。
そんなこと、できるのでしょうか?
普通に考えたら、無理です。
そもそもどのよ
「『貴方の村に、連れて行ってください』!!」
他の3匹がいろいろ考えている横で、猫の少女が人体模型に向かって答えました。
「へ?」
「は?」
「ほ?」
相談なしの突然の解答に、他の3匹が驚きの声を上げます。
「ちょっ……何を、勝手なことを!
答えが解ったらまず皆で吟味して……」
「あれ~?
さっき、『今後、なぞなぞがミッションに出る場合、解答が解ったら速やかに答える』って言ったのは、ガリベン君だよね~?」
「が、ガリベン……」
鶏の少年は突然のガリベン呼ばわりに思わずメガネを正します。
「あたしは何も悪いことはしていないよ?
むしろ、さっきの方針通りに動いているのに、何で怒られるの??
ねえねえなんで?」
猫の少女は先ほど立てた『方針』の穴をついて、無茶苦茶な事を言い始めました。
なるほど、こういう意地の悪い性格だからこの問題がすぐに解けたのでしょう。
「そ、そうか。
これ、別に村人が正直か嘘吐きかは、き、聞いていないんだ
よ、要は、『正直村』に着きさえすればいい」
村人が『正直村』出身ならば『正直村』へ連れて行ってもらえるし。
村人が『嘘吐き村』出身ならば嘘を吐かれて『正直村』へ連れていかれる。
村人がどちらの村出身なのかは、この際どうでも良いのです。
「ねえ、なんであたしは怒られたの?
ねえねえなんで?!」
「“ネコ”は“丸く”なってろ」 ビキビキ!?
懲りない猫の少女の腹部に再度、犬の少年の男女平等パンチが飛びます。
「ぐえええええちょっとまじ煽り耐性つけてくださいお願いします」
猫の少女は再度地面で丸くなろうとしますが。
ガシッ。
「……え?」
……倒れ込みそうな猫の少女を支える影があります。
鶏の少年は、自分の常識がひっくり返されています。
猫の少女は、現実を受け入れられていません。
犬の少年は、信じられずに佇んでいます。
驢馬の少女は、唯一状況を理解した上で青ざめています。
「え、うそ、なに、これ」
倒れ込みそうな猫の少女の右手を取ったのは。
村人役の、人体模型でした。