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すべてがYになる  作者: 雪平 真琴
劇中劇の殺人
5/12

推理1

推理()開始

まあ適当なんですけど。

最後のどんでん返しに向けて作っているので、推理パートはそこまで……

ってかそれができないからこういうスタイルなんですけど。

 結局その夜中も電話の音に叩き起こされ、不機嫌にコードを抜く。

 ったくもう……


 それでも翌朝は機嫌よくやってくる。それを通り過ぎ昼。

 寝過ぎで重い体に鞭を打ち、また朝飯を作る……

「冷蔵庫になんも無い」

 この事実に気が付いた。このまま買い出しに行く。

 そして朝食を済ませ、電話のコードを差し込み、執筆を開始した。

 しかし、いざパソコンの前に座っていると、全然進まない。

 脳裏には、電話の音が焼き付いていた。

 気になる気になる気になる……

 結局何も筆が進まない。好奇心猫を殺すとはよく言ったもので、僕には気になりだすと止まらない所があるのだ。


 そんな時だった。また電話の音が鳴る。

 またかよ、そう思いながら受話器を手に取る。

「……もしもし」

「もしもし」

「なんだセッペーか」

「なんだって何よ」

「すまんすまん」

 そこで一呼吸おいて、僕は告げた。

「なんかさ、無言電話がよくかかって来るんだ」

「……無言……電話か」

「そう」

「……」

 何かを考え込んでいる、そんな沈黙。その後、彼女は口を開いた。

「なら、調べよっか」

「……は?」

「いや、どうせ気になってるんでしょ」

「まあそうだけど、悪いよ。手掛かりも何もないし」

「何言ってるの。脅迫状に加えて無言電話までかかって来たのよ。関係性は絶対あるし、だったら脅迫状の謎をとけば、必然に犯人もわかる」

「まあそうだけど、でもそっちも手掛かりないんだぞ」

「考えてみてよ。手紙だけならともかく、電話まで。これ、立派な犯罪よ。そこまでするって事は、何か事情があって、からんでるんでしょ。あんたは確かに有名人。だからこそ、逆恨みでも何かあるかもしれない。それを整理するの。恨まれてそうな事を。まあ長電話もなんだし、そろそろ切るね。あと、別にあんたのためじゃないから」

 典型的なツンデレのセリフを残し、彼女は電話を切った。

 わかってる。自分が気になるから、だろう。

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 ここまで書いて、不意に来客を告げるインターフォンの音を聞いた。

「はい」

「ども」

「……へ?」

 間抜けな声が漏れた。だって、いくら付き合ってるとはいえいきなり彼女がやって来たら、誰だってびっくりするだろう。

「……セッペー?」

「うん」

「開けるぞ、ドア」

 開いたドアから姿を現した彼女。そのまま靴を脱ぎ捨て、部屋に入る。

「ふう、いつ見ても片付いてるよね」

「散らかすものが無いからな」

「でも普通男って服とか散らかすもんじゃ無い?」

「散らかすほどの数が無い」

「なるほどね」

 彼女は変に納得している。それもそれでなんだかなーと思ってしまう。

 とりあえず、彼女にお茶をだす。もちろん自分の分も。

「それはそうと、その脅迫状って、どんなの?」

「えっと、ちょっと待ってよ……」

 探すまでも無く、机の引き出しに入っている。

「あったあった。これだよ」


 私は、あなたが殺人を行った事を知っております。


「ふうん、やっぱりベタね」

「でも、要求がなんも無い」

「まあ、それはおかしいんだけど」

「殺人……か」

 僕はお茶を口に含んだ。

「1つだけ聞くよ。殺人、してないよね」

 お茶を吹き出しかけた。あぶなっ。

「あた、ごほっ」

 むせてしまった。当たり前だろ、そんな事して無い。

「まあ仮にしてたとしても絶対言わないだろうけど、って、大丈夫?」

「だ、だいじょ、ごほっ」

 大丈夫じゃなさそうです……


「ああ死ぬかと思った」

「おおげさよ。むせたぐらいで」

「おおげさって言うけどさ。で、質問の答えだけど、無いに決まってるよ」

「よね」

「当たり前だろ」

「じゃあやっぱり、逆恨み、なのかな」

「なんじゃ無い?」

「ただ、殺人となると、相当重いわよね」

「そりゃそうだ。でも単体で見ると、よくよく考えるとただの嫌がらせの可能性もあったんだな」

「まあね。でもまあ、電話までかかって来るとなると、冗談じゃすまないわ」

「ああ。だから、とりあえず逆恨みされてそうな事を考えるのが正解かな。警察に届けても、大した事無いからって取り合ってもらえなさそうだし」

「それが辛い所よね」

「まず、僕はデビュー間もない小説家。一応賞はとったから、その事で誰かの逆恨みを買ってもおかしくは無い」

 そこで言葉を切った。それ以外の可能性を考えるためだ。だが、基本的に自己主張は乏しい方で、口の悪い友人など人畜無害なんて言ってきたものだ。そいつは、お前が小説家って、意外。なんて言ってきたが、むしろ僕だからこそなったんだと思う。

 ってか今はそれどころじゃ無くて。

 まあ僕はそんなキャラだから、小説以外に思い当たる節が無い。

「小説以外では特に思いつかないけど」

「そう。なら、そっちの話だと考えて話を進めよ」

「そうだな。まず思い当たるのはその賞に応募して、落ちた人」

「そりゃそうよね。でも、範囲が広すぎよ」

「うん……何とかして範囲を絞り込めればいいんだけど」

 沈黙が二人を包む。完全なる静寂の中、僕の頭はフル回転を続けていた。

「うーん、よくわかんないから、今日はもう帰るね」

 確かに、気付くともう夜だった。煌々とした月の光が窓から覗く。

 いや、そうじゃ無くて、男としてここで帰す訳にはいかない。

「泊まってけよ」

 セッペーはにっこり微笑んで言った。

「サイッテー」


 結局帰ってしまった。

「いつでも連絡をとれるように、電話は切らないでね」

と言葉を残して。

 ケータイでいいと思うんですが……まあ、この鬱陶しさは、経験しないとわかんないだろうからこんな事言えるんだろうけど。

トリックだの、論理的推理だの書ける人を、すごいなと思います。

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