推理1
推理()開始
まあ適当なんですけど。
最後のどんでん返しに向けて作っているので、推理パートはそこまで……
ってかそれができないからこういうスタイルなんですけど。
結局その夜中も電話の音に叩き起こされ、不機嫌にコードを抜く。
ったくもう……
それでも翌朝は機嫌よくやってくる。それを通り過ぎ昼。
寝過ぎで重い体に鞭を打ち、また朝飯を作る……
「冷蔵庫になんも無い」
この事実に気が付いた。このまま買い出しに行く。
そして朝食を済ませ、電話のコードを差し込み、執筆を開始した。
しかし、いざパソコンの前に座っていると、全然進まない。
脳裏には、電話の音が焼き付いていた。
気になる気になる気になる……
結局何も筆が進まない。好奇心猫を殺すとはよく言ったもので、僕には気になりだすと止まらない所があるのだ。
そんな時だった。また電話の音が鳴る。
またかよ、そう思いながら受話器を手に取る。
「……もしもし」
「もしもし」
「なんだセッペーか」
「なんだって何よ」
「すまんすまん」
そこで一呼吸おいて、僕は告げた。
「なんかさ、無言電話がよくかかって来るんだ」
「……無言……電話か」
「そう」
「……」
何かを考え込んでいる、そんな沈黙。その後、彼女は口を開いた。
「なら、調べよっか」
「……は?」
「いや、どうせ気になってるんでしょ」
「まあそうだけど、悪いよ。手掛かりも何もないし」
「何言ってるの。脅迫状に加えて無言電話までかかって来たのよ。関係性は絶対あるし、だったら脅迫状の謎をとけば、必然に犯人もわかる」
「まあそうだけど、でもそっちも手掛かりないんだぞ」
「考えてみてよ。手紙だけならともかく、電話まで。これ、立派な犯罪よ。そこまでするって事は、何か事情があって、からんでるんでしょ。あんたは確かに有名人。だからこそ、逆恨みでも何かあるかもしれない。それを整理するの。恨まれてそうな事を。まあ長電話もなんだし、そろそろ切るね。あと、別にあんたのためじゃないから」
典型的なツンデレのセリフを残し、彼女は電話を切った。
わかってる。自分が気になるから、だろう。
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ここまで書いて、不意に来客を告げるインターフォンの音を聞いた。
「はい」
「ども」
「……へ?」
間抜けな声が漏れた。だって、いくら付き合ってるとはいえいきなり彼女がやって来たら、誰だってびっくりするだろう。
「……セッペー?」
「うん」
「開けるぞ、ドア」
開いたドアから姿を現した彼女。そのまま靴を脱ぎ捨て、部屋に入る。
「ふう、いつ見ても片付いてるよね」
「散らかすものが無いからな」
「でも普通男って服とか散らかすもんじゃ無い?」
「散らかすほどの数が無い」
「なるほどね」
彼女は変に納得している。それもそれでなんだかなーと思ってしまう。
とりあえず、彼女にお茶をだす。もちろん自分の分も。
「それはそうと、その脅迫状って、どんなの?」
「えっと、ちょっと待ってよ……」
探すまでも無く、机の引き出しに入っている。
「あったあった。これだよ」
私は、あなたが殺人を行った事を知っております。
「ふうん、やっぱりベタね」
「でも、要求がなんも無い」
「まあ、それはおかしいんだけど」
「殺人……か」
僕はお茶を口に含んだ。
「1つだけ聞くよ。殺人、してないよね」
お茶を吹き出しかけた。あぶなっ。
「あた、ごほっ」
むせてしまった。当たり前だろ、そんな事して無い。
「まあ仮にしてたとしても絶対言わないだろうけど、って、大丈夫?」
「だ、だいじょ、ごほっ」
大丈夫じゃなさそうです……
「ああ死ぬかと思った」
「おおげさよ。むせたぐらいで」
「おおげさって言うけどさ。で、質問の答えだけど、無いに決まってるよ」
「よね」
「当たり前だろ」
「じゃあやっぱり、逆恨み、なのかな」
「なんじゃ無い?」
「ただ、殺人となると、相当重いわよね」
「そりゃそうだ。でも単体で見ると、よくよく考えるとただの嫌がらせの可能性もあったんだな」
「まあね。でもまあ、電話までかかって来るとなると、冗談じゃすまないわ」
「ああ。だから、とりあえず逆恨みされてそうな事を考えるのが正解かな。警察に届けても、大した事無いからって取り合ってもらえなさそうだし」
「それが辛い所よね」
「まず、僕はデビュー間もない小説家。一応賞はとったから、その事で誰かの逆恨みを買ってもおかしくは無い」
そこで言葉を切った。それ以外の可能性を考えるためだ。だが、基本的に自己主張は乏しい方で、口の悪い友人など人畜無害なんて言ってきたものだ。そいつは、お前が小説家って、意外。なんて言ってきたが、むしろ僕だからこそなったんだと思う。
ってか今はそれどころじゃ無くて。
まあ僕はそんなキャラだから、小説以外に思い当たる節が無い。
「小説以外では特に思いつかないけど」
「そう。なら、そっちの話だと考えて話を進めよ」
「そうだな。まず思い当たるのはその賞に応募して、落ちた人」
「そりゃそうよね。でも、範囲が広すぎよ」
「うん……何とかして範囲を絞り込めればいいんだけど」
沈黙が二人を包む。完全なる静寂の中、僕の頭はフル回転を続けていた。
「うーん、よくわかんないから、今日はもう帰るね」
確かに、気付くともう夜だった。煌々とした月の光が窓から覗く。
いや、そうじゃ無くて、男としてここで帰す訳にはいかない。
「泊まってけよ」
セッペーはにっこり微笑んで言った。
「サイッテー」
結局帰ってしまった。
「いつでも連絡をとれるように、電話は切らないでね」
と言葉を残して。
ケータイでいいと思うんですが……まあ、この鬱陶しさは、経験しないとわかんないだろうからこんな事言えるんだろうけど。
トリックだの、論理的推理だの書ける人を、すごいなと思います。