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すべてがYになる  作者: 雪平 真琴
劇中劇の殺人
4/12

電話

 とにかく眠りに就いた僕。しかし、安眠はいとも簡単に奪われる。突如として鳴り響いた電話の音によって。

 「うるさいなあ」

 そう言いつつ不機嫌になりながらも受話器を手に取る。

 「もしもし、なんですか、こんな夜中に」

 しかし、受話器は何も語らない。聞こえるのは自分の息遣い。それだけだ。

 僕は相手に聞こえるように大きな声で言う。

 「ちっ。イタズラかよ、暇人め」

 受話器を叩き付けるように置き、布団に潜る。そのとき、何の脈絡も無く、ふっとある考えが下りて来た。

 これ、あの脅迫状と同一人物なのでは無いか?

 夜中に電話する……執念に似た感情が感じられ、僕は電話のコードを引っこ抜いた。


 翌朝。カーテンを通り抜けてなおその輝きを完全には失わない朝の陽ざしは、しかし僕の目を覚ます事は無く、結局昼10時になるまでずっと眠っていた。目が覚めてからも、春眠暁を覚えずで、布団の中でしばらくぼんやりする。

 あれ、小説書かないと……

 そう気付き、慌てて布団から抜け出すと、電話のコードが抜けている事に気が付いた。

 なんでだ? しばらく悩んだが、単純すぎて、悩んだ事に恥を覚えた。コードを差し込む。

 とにもかくにもまずは朝食を作る。冷蔵庫にあったキャベツとタマゴを炒め、トーストしたパンに乗せただけの物。でもとりあえず、三大栄養素はとれている。人間必要最低限の栄養があれば生活はできる。それ以上を望みはしない。今は仕事もあるが、それでも人気作家という訳でも無いので、贅沢は出来ない。まあ、セッペーと会う時はそこそこ、いや、かなり旨い飯が食えるんだけど。


 昼過ぎからようやく仕事に取り掛かる。

 トリックを元にストーリーを考える。どういう動機なのか、犯人は普段はどんなキャラか。探偵は……やっぱあいつを使おう。シリーズはキャラ設定が楽だ。まあその分行動は縛られるけど。


 電話が鳴った。プロットがかなり乗って来た所だった僕には、殺意すら覚えるようなタイミングだった。

 「もしもし」

 しかし受話器は一言も話さない。

 受話器を下ろし、プロット作りを再開する。


 「できた」

 プロット完成である。後は肉付けをしていくだけ……あ、Yには話さないと。


 「いいんじゃないでしょうか」

 打てば響くような返事。返答が早すぎて、こちらが戸惑うほど。もうむしろ嫌われてるのでは、とすら思わせる。

 「じゃ、じゃあこのまま進めて行きますね」

 「わかりました」

 仕事を終わらせた彼女はそのまま帰って行く。結局仕事は進んだんだけど、なんだかなあ。


 外を見るともう夜だった。今日はここまでにしておこう。

そろそろ話が動き始めます。

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