脅迫
前話を大幅に改稿しました。タグにアンフェア宣告はしてあるので、開き直って驚かせに行くスタイルの方がいいかな、と思った次第であります。追加でだれるのを防止するという目的もあります。
どうしようか、これ。
とりあえず、これではどうしようもない。
セッペーに話しても、これじゃどうにもならない。手掛かりが足りないよ、と言われる未来しか見えない。でも、話すぐらいいいんじゃないか? 共有してもらうだけでだいぶ違うだろうし、僕なんかよりよっぽど推理力もある。うん、話そう。あ、でも今日の夜にしとこう。いまから連絡とっても邪魔なだけだ。こんな仕事してると人と時間の感覚がずれてくるのだ。
そう割り切って、僕は執筆に取り掛かる。
筆を走らせながらもやっぱり気にはなるのだが、無理矢理に思考の外に追いやる。どちらかというとそれを思考から追い出す事に意識を取られたがそれでも執筆は進んだ。
そして夜。
「もしもし」
「もしもし、セッペー」
「ああ、あんたか」
「そう、俺」
「で、何?」
「なんか、今日、謎の脅迫状が届いた」
そう聞いて、彼女は興味を惹かれたのだろうか、積極的になったように思われた。
「……詳しくお願い」
「中身は、私は、あなたが殺人を行った事を知っております。以上」
「は?」
拍子抜けしたような声が聞こえた。まあ、当然だが。要求の無い脅迫なんて、脅迫では無いし、何をすればいいのかもわからないのだから。
「で、私にどうしろと」
「一応情報共有。お前俺なんかよりよっぽど推理力あるし、話してたらいつか何かわかるかなって」
「ふーん。とにかく、まずは記録を取る事から始めれば?いつでも見返せるって便利だし、ネタになるかもよ?まあ、手掛かりが無さ過ぎるし、今はそのぐらいが関の山じゃない?」
記録か……確かにプロになってからは短編しか書いていないが、趣味で長編書いてた時、過去に書いた内容を見返しながら進んでいた。記憶に頼るより優秀なのは間違い無い。
「わかった、ありがとう。そうする」
「了解。じゃ」
唐突に電話が切られる。
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ここまで書いて手を止めた。謎の脅迫状、セッペーとの電話。
こうセッペーと向き合っていると、自然と思い出されるセッペーとの出会い。
「私あなたのファンです」
僕の小説が賞をとって数か月後、そう言って突然僕の前に現れた彼女。当時女性と無縁な暮らしを送っていた僕にとって、同い年に見えるような若さの、しかもかなりの美人な彼女はあまりに魅力的だった。ファンに手を出すなんて……なんていう自分の中の良心といったものは動物としての本能にかなうはずも無く、今思うと自分でもどうやったのか覚えていないが彼女の番号をゲットするに至っていた。
仲良くなるにつれてだんだん崩れていったのかどちらかというとツンデレ気味になっていったがそれも悪くない。そう思えた。