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フツー少女  作者: 檸檬
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第四部「風邪」

 眠りが浅くなってきたとき、パサリと私の肩に何かが置かれてことに気づいた。

目を覚ますと博士が、白衣を着ないで私の顔を覗き込んでいた。


「あぁ、おこしてしまったかな?気持ちよく寝ていたから、起こすのはちょっと躊躇してしまったからね。

もう少しでご飯なんだけど、大丈夫かな?」


いま、私の肩に乗っているものは博士の白衣なんだ。

博士は、私の隣に座り、頬をそっと撫でた。


「は…博士?/////」


顔が赤くなっていくのが自分でも良く分かる。


「本当に、可愛い」

「えっ///?」

「久光の野郎……どうして、この子を……」


久光?久光の名前を何で知ってるの?


「あぁ、ごめんね。ごはんいこっか」

「あぁ、ハイ」


私をそっと立ち上がらせたはいいが、急に立ち上がったせいか、博士のほうに倒れこんでしまった。


「おっと、大丈夫かい?」

「ハイ……大丈夫です」

「調子が悪いみたいだね。ここに持ってきてあげるから、一緒に食べよう。

ベッドで休んでなさい」

「ハイ……」


そういうと博士は、私をベッドまで運び寝かせて、毛布をかけてくれた。


「スイマセン。迷惑をかけてしまって」

「いいの、大丈夫だから。迷惑かけてくれないと、ここになじんでくれてないかもしれないと思っちゃうからね。

あとで、体温計持ってくるから、待っててね」


博士は、後ろを向いてドアのほうへ向かっていく。

私は何故だか知らないが、博士の白衣の裾をつかんでいた。


「あ……、あの、行かないでぇ……」


一瞬だけ、久光に見えた。だけど、久光はもうここにはいない。

いないと分かってても、人肌は恋しいもの。

ぬくもりが消えてしまうと、寂しいもの。


「大丈夫、ちゃんとここに戻ってくるから」

「ぅん……」


博士は、戻ってくることを約束した。

ちゃんと……約束してくれた。


「じゃぁ、持ってくるからね」


そういうと、博士はすぐ戻ってきてくれた。


「自分で食べれるかな?」


そういって持ってきてくれたのは、今日の夕食。

お盆に載って言うのは、おかゆだった。


「博士?今日の夕飯はこれなんですか?」

「いやぁ、明奈が調子を悪くしたって言うから、速攻で作ってきたんだ」

「本当のご飯はどうしたんですか?」


そういうと博士は、『あぁ、僕の分を持ってくるの忘れたww』

といって、今日の夕食となるはずだった食事をお盆に載せてもってきた。


「今日のご飯だよ。トマトサラダと、魚の煮付け、それにご飯とお味噌汁。

トマトはたべれるかな?リコピン入ってるし、栄養価高いよ?」

「食べます」

「よし」


私のお皿にトマトを数切れのせてきて、『いただきます』といった。


「い、いただきます」

「はい」


博士が作ってきてくれたご飯はほとんどがおいしいことは知っている。

そっと、れんげにのせたおかゆを口元に運ぶ。

食べてみると、丁度いい熱さで、とてもおいしかった。


「おいしい……」

「でしょ?僕の作るものは天下一品なんだから」

「ふふw」


久しぶりに自然に笑えた気がする。


「笑ったね」

「え?」

「だって、ここにきてあんまり自然から出た笑顔、僕見てないもの。

明奈の笑顔が見れて良かったよ」

「ご、ゴメンナサイ」

「いいよ、謝らなくていいよ。僕だって、ここにつれてきて、何にもしていないからね。

また明日からがんばればいいしね」

「ハイ!」

「よし、いい返事だ」


食べている間も他愛も無い話をした。

話が終わる頃にはもう、食事も終わっている状態だった。


「じゃぁ、僕は片付けてくるから、明奈はお風呂に入っておいで」

「ハイ、ワカリマシタ」


 お風呂の場所に着き、衣服を脱いで大きな風呂に入った。

プールみたいに広く、何人でも入れそうな広さだった。

湯船につかると、ふーっと息を吐いた。


「外見はフツーの少女って書いてあったけど、お風呂まで入れるんだね」


本当に何が起きているのかさっぱりわかんない。

私はなんでここにいるんだろう……。


「明奈ー?服、ここにおいて置くよ?」

「あ、スイマセン。アリガトウゴザイマス」


博士が曇りガラスに映っている。博士は、私がお風呂に入っていているときは、絶対に入ってこない。

あるとしたら、ふざけているとき。ふざけているときでも、ちゃんと意味はあると思う。

私の人間性が失っていないかどうか。多分それだと思う。


「ゆっくり浸かっていると、熱があがっちゃうよ?」

「あぁ、スイマセン。もう少し経ったらあがります」

「りょうかいw」


博士がいなくなったのを確認すると、私は脱衣室にいった。

博士が用意してくれた服は、少し大きめのワイシャツだった。

膝くらいまであって、ミニスカートみたいでうれしかった。


「博士、服ありがとうございました」

「ううん、いいよ。似合ってるから」

「い、いえ///」

「照れなくてもいいんだよ?僕は本当のことを言ってるだけだからね」

「ハイ////」


博士は、私のことをかわいいとほめてくれた。

私はもともと身長が小さいから、この服を着るとこの服が大きく見えるのかもしれない。


「じゃぁ、もう就寝時間だ。さ、自分の部屋に行こうか」

「ハイ。おやすみなさい」

「うん、お休み」


私は、自分の部屋に戻ろうとしていたとき、いきなり手をつかまれた。


「博士?」

「あぁ、いや。一ヶ月経ったら、経ったら出いいから、一回外に出てみようか。

明奈の新しい学校見つけなきゃいけないしね」

「新しい……?」

「うん。ずっと引きこもっていたら、近所の人に不安がられるでしょ?だからだよ」

「わかりました」

「うん、今度こそ、おやすみ」

「おやすみなさい」


手をつかまれていたが、話が終わったから離してくれて、私は、自分の部屋に向かうことができた。



「久光……お前だけは絶対に許さないからな」



博士が呟いた言葉は、私には聞こえないまま、暗い廊下に消えていった。




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