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第陸話『怪物暗躍』

どうも皆様ブラストです!今回は中々更新できてなかった夜狩の第6話公開したいと思います!日曜日に公開したかったんですが、バイトが中々忙しくて(汗)


あと最近ヤマタノヒドラを一昨日と昨日の連続で二枚入手しまして、その新デッキ構築とか、ポケモン+信長の野望をやりこんでいるもんですから(笑)

雑談が過ぎましたが、早速読んでいただければ幸いです。





人気のない街を静粛と暗闇が辺りを包む時間、それが夜。

本来ならこの静粛は夜が明けるまで続けられる筈だった。だがその静粛を打ち破る例外が一つ、この星に存在していた。


「ぎゃははは!俺の餌だ!!」


奇妙な笑い声を上げ、血に塗れた人を喰らう化け物。それが夜の静粛を崩す正体でもあるディアノーグ。彼等は常に夜だけ行動をすることが許され、その行動の内に人を喰らい自分の糧とするのが彼等の生態、しかしそれだけがディアノーグの生態でないのは、まだ誰にも知られていない。


“ドンッ!”


人を喰らっている一体のディアノーグ。その丁度真上に位置する建物から突然足音が起ち、その主である影は、真下を見下ろすとそこへ一気に飛び降りる。


「あぁ?」


時既に遅く、気配を感じて上を見上げたそのディアノーグは次の瞬間、瞳に自分と同じ怪物の姿を捕らえたかと思うと落下してくるそれは自分を踏み潰し、その衝撃に“バキッ!”と肋などの骨が砕ける音と“ドォンッ!”と着地の衝撃音が同時に響く。


『グオオオオオォォォォォ────ッ!』


宝石のように輝く鱗を持ち、強靭な身体を持つソレは自分の足元にある残骸と液体を見ながら声を上げ、耳を劈く程の轟音が闇夜に響き渡った。









翌日、舞台は「夜狩」と書かれる事務所に代わり、その一任者である男性、暁壮也は早朝早々テーブルに一つのアタッシュケースを置く。


「これって」


「報酬金だ、ロックディアノーグのな」


暁壮也であるサポーターである聖奈とルカ、彼女達に言いながら壮也はアタッシュケースを開け、聖奈とルカは期待に胸を膨らませながらその中身を覗き込み、アタッシュケースの中身に会ったのは、ケースから飛び出そうなほど敷き詰められた万札の束だった。


「ざっと報酬金は2000万」


「二千万!!!??」


今までの10倍に値するその額を前に、悲鳴のように声を荒げる聖奈。今まで不服な様子ルカもさすがにこの額には満足なようで札束を眺めているが、壮也はまだ満足していないかのように全く笑みを浮かべていなかった。


「まっ、所詮はこの程度。中級でもまだまだだな」


二千万で満足して居ないなんてどれだけこの人は強欲なのだろう?、などと心の中で呟く聖奈。呆れた様子の彼女であったが次の瞬間彼女の手に札束が投げられる。


「へっ!?」


「ルカに五百万、お前には百万の取り分だ。精々管理しとけ」


呆気に取られリアクションが出来ないほど硬直している彼女、我に返った途端手に持っている百万と言う額に思わず絶叫した。


「えっ?壮也さん。この額、私の?」


「ああ」


言葉でさえもカチコチになり、夢ではないかと頬を抓るも、後に赤くなった頬から感じる痛みのまま彼女の視界の光景は変わらない。生まれて初めて握る100枚の札束に彼女は喜びつつも唖然とする額に怖いと思う恐怖の両方を抱えていた。


「まっ、動揺するのは分かるけど直になれると思うよ」


動揺が残りつつもルカに背中を叩かれようやく心が落ち着く。前に壮也は命を掛ける以上これぐらい貰って当然とは言っていたが、それでも尚これ程の額を貰う事に罪悪感を感じる。そんな聖奈を余所に壮也はなぜか出掛ける準備をしている。


「行くぞ、お前等。さっさと支度しろ」


「あれ?ディアノーグの出現は夜なんじゃ?」


「情報収集だ。たまにはお前も様子見ぐらいしてもらわないとな」


「は、はぁ……」


隣に居るルカはいつの間にか準備が出来ているらしく、自分が遅れている事に気付いた彼女は慌てて二階へ駆け上がり早々に自身の準備を終わらせ、三人はいつもの様にバイクに跨ると、目的の場所へとアクセルを踏み込んだ。









数時間後、エンジン音が止まり、その後の彼等の視界に移る光景は高層ビルが建て並ぶ一つの街だった。ここで情報収集をする様子の壮也だが、新人の聖奈にとってどこからその情報を得るのか、その情報は何なのかと具体的な事を今だ知らない。壮也はこの街に当があるかのように迷うことなく歩き出し、ルカもその後を追い、聖奈も戸惑いつつも二人の後に付いて行き、彼らが向かった先はそこから少し人気が寂しい喫茶店、名はアイルーム。何用があるのかと気になる聖奈、壮也はそれにかまう事無く扉をあけると、店内へと入っていく。


『もうそろそろ来る頃だと思ってましたよ』


入店直後の声、目の前に居たのは狐の耳を連想させる黄色い髪型に、小学生ほどの身長。見た目からして10歳程と思われる一人の少年だった。


「よぉ、コン。用件は言わなくても大体分かるだろ?」


手元から10万程取り出したかと思うと、コンと呼ばれた少年に投げ渡し、それを受け取ると少年はゆっくりと口を開く。


「最近になって消去されてないディアノーグの死体が何件か見つかったらしい。夜狩牙倒した訳じゃないのは明白だけど、そのディアノーグが誰にやられたのかは今だ不明。まぁ本部の方も調査中だけどね」


何も聞いていないにもかかわらず、いきなりそこまで言い切り、手元に置いてある水を飲み干す。


「新着情報はこんなもんかな?後、この近くでディアノーグの目撃情報が何件もあるよ、もしかしたらさっき話した情報に関連してるかもね」


「分かった。礼を言うぜ」


こんな小さな子がディアノーグの情報を持っているなんて、そう思っている私はふと隣に居るルカの方にも目を向けてみる。するとルカの眼はなぜかキラキラと輝いていた。


「いっつも情報ありがとね、コンちゃん!」


「ルカさん言っときますけど今日は────」


コンちゃんと呼ぶルカに呆れ半分の様子で、口を開いてその言葉を最後まで言い切ろうとした次の瞬間には、まるでぬいぐるみのようにルカに抱き抱えられていた。


「コンちゃんやっぱかわいい!君みたいな子供絶対欲しいな」


「子供扱いはやめてください」


ため息を付くコンを無視しながらルカはもふっ、と言う擬音が似合いそうな動きで彼の髪に顔を凭れさせ、聖奈にとってその光景は狐のぬいぐるみで遊ぶ一人の女の子という風に見えて仕方がなく、何だかとても可愛らしく思えてきた。


「あ、あの壮也さん、あの子は?」


「ん?あいつは月宮コン。一言でいえば情報屋だ」


「情報屋?」


「あぁ、ディアノーグ一体の情報を仕入れる事に関してはお手の物。多くの夜狩があいつから情報を聞きいれる。まぁその情報料としていくらか支払わなきゃならない。ちなみに言うと、ルカとはいっつもあんな感じだけどな」


いつもあんな事されているならコン君大変なんだろうな、と心の中で呟き、その後壮也が止めに入ったお陰でようやくコンはルカから解放された。


「いつも悪いなコン」


「もう慣れっ子ですよ」


疲れたように吐き捨てるコン、ふと隣にいた聖奈と眼が合い、聖奈を見て何か疑問を感じたように壮也の方を見る。


「壮也さん、その人は?」


「こいつは千里聖奈、俺の新しいサポーターだ」


「へぇ~、僕月宮コンって言います。宜しくお願いします」


「あっ、はい。宜しくお願いします。にしても、夜狩の情報屋は君一人だけ?」


「一応ね、まぁその内別の情報屋が現れるかもしれないけど、現れた所で所詮2流、3流程の情報ぐらいだと思いますけどね」


「す、すごい自信……」


「まぁ当然ですけどね」


適当に荷物をまとめた後、コンは椅子から立ち上がる。


「じゃぁ僕はこの辺で、次会う時にはそれなりの情報を持ってきますよ」


「おぉ、じゃぁな」


適当に返事を返して見送る壮也、だがコンがその場を立ち去る事にルカは不服な様子で、それを見たコンはまたルカに抱きつかれる前に逃げるようにしてその場を立ち去って行った。


「じゃぁ今後私達はどうするんですか?」


「コンの話を聞いてただろ?この付近でディアノーグの情報を掴めてると」


「まさかここで張り込みとかですか?」


「呑み込みが早い。その通りだ」


「やっぱり~~」


まだ昼前、夜までかなり時間がある。それなのにこの付近で張り込みはきつい。それに見かねたのか、壮也は適当にルカと聖奈の方を見る。


「暇なら二人でどこかに行って適当に時間潰してろ」


「じゃ、ダーリンも一緒に行かない?」


「お前の意見は聞いてない。とっとと行くなら行け」


口を挟むルカを簡単にあしらい、聖奈達はその場を後にし、近くにあったショッピングモールに足を向け、二人が立ち去るのを見届けると先程までの疲れた表情を一変、目つきをを鋭くさせる。


「ディアノーグの急死……まさかな」


コンから聞かされた話は壮也の心の奥隅で何かを感じさせていた。しかしまだこの時、この内に秘めた予感が後々の事に大きく関連しているのは本人を始め、まだ誰も知らない。









数時間後、日も沈み夕暮れとなるこの時間、ルカ達は壮也と合流し、徐々に闇に満ちていく街の下を歩くのだった。


「へっくしゅ!」


だが外は寒くこの仕事に入って間もない聖奈にとって、夜の環境にはまだ適応できておらず、自然とくしゃみが出る。だが寒さに身震いしつつも何とか我慢する彼女。だが、今回の仕事にとってまだ重要な事を聞いていなかった彼女はソレを思い出したように。


「あの?壮也さん、ディアノーグ捜しは今回どこを当たるんですか?」


「安心しろ目星は付けてある」


いつものように3か所の赤いマークを付けた地図を聖奈に投げ渡し、それ受け取るとマークの書かれた場所を見つめ、地図を見ただけではどこがどんな場所なのかは正確にわからないが、どれも街外れにあり、人気が寂しそうな事は分かる。そんな地図を確認する聖奈を置いて、壮也はそのまま口を開く。


「チェック場所は三か所、そして俺達は丁度三人。今から一人ずつその場を直接調査だ」


「一人ずつ────って!もしディアノーグに気付かれて襲われちゃったらどうなるんですか!?」


調査と言えども、その調査対象がディアノーグであれば聖奈の言うとおり安全は保障できない。下手して見つかれば、最悪命を落としかねない。


「前に言ったろ、これは命掛ける仕事だ。いい加減お前にも本気で取り組んでもらわないとならない」


「……それはそうですけど」


「まぁ一応ディアノーグ発見後、その場所を報告後すぐに戻るだけでいい。ディアノーグどもは案外鈍感だから、ヘマしなけりゃ命は保証できるだろう」


口で言うだけでは簡単なものの、その事を「行動」に移せば話は別。命を掛けるだけあって、後戻りしたいという思いが次第にこみ上げてくる。


「まぁ頼んだぜ、ディアノーグ退治はお前らで言う人を助けるって事にも繋がるからな」


ルカと共に聖奈の下を去り、内心怖いと思いつつもディアノーグによって犠牲者が出ると考えると、責任感が強い彼女にとって逃げる訳にはいかない。一呼吸の後、気合を入れるように自分の顔を叩くと、気持ちを切り替え壮也達が去った逆方向に向けて足を進めていく。









────エリアA 担当ルカ。


「さ~て、ダーリンのために頑張らないと」


捜索範囲の内の一つである場所は、今は誰も使ってない無人の駐車場のような場所。軽い口調ではあるが、彼女自身もまだディアノーグを相手にできる訳がなく、なるべく周囲を警戒しながら辺りに気を配っている。


「とりあえずこの辺にはまだディアノーグはいないみたいだね」


物陰に身をひそめ、なおも辺りを警戒するルカ。今のところディアノーグは出現していないものの油断はできない。









────エリアB 担当壮也。


「さて俺の予想じゃ大方この辺が黒の筈なんだが」


壮也が来た二か所目に当たるこの場所は、人も寄り付かない無人の廃墟だった。そして壮也より少し離れた材木の影が怪しく揺らめくのを彼の眼は決して見逃さなかった。


「大方予想通りだな」









────エリアC 担当聖奈。


「はぁ、はぁ……」


一方の聖奈方はと言うと、三か所目に当たる街外れの場所。ここがどういう場所かは分からないが、丁度目の前にある森林と街の狭間に位置する所で、ここも今までの二つ同様人気が少ない場所だった。ただ、この場所だけが唯一距離が遠く、この場所に足を運ぶだけでも息を切らしてしまう程。


「こんな場所にほんとに来るのかな……」


まだ荒い息を整えながら呟く彼女だが、突然携帯が鳴り何事かと携帯を開くと、次の内容が書かれたメールを送られるのであった。


『ディアノーグをエリアBにて発見。よってエリアA、Cははずれ。ルカにもすでに伝え済み。お前もすぐに俺と合流しろ』


「はっ?」


送られた以上の文章に、呆気にとられた彼女はポカーンとしていたが、我に返った彼女は再度文章を読み返し、「はあああああっ!?」と怒りに満ちた声を無人の地帯に響かせた。


「ここからかなり離れてるのに、行くだけ行かしてまた戻れって正気か!!!」


目星が三か所あるため、残り二つは外れとなる。その事は決して予測できない事ではないが、彼女にとってここが外れの場所以前に、この場所から移動させられる事など夢にも考えておらず、送られたメールを怒鳴り散らすように声を荒げつつも、渋々後ろに方向転換し、そのまま来た道を辿り壮也の元へ足を急がせる聖奈。だが彼女が走りだした直後にCエリア付近の影が怪しく揺らめいていた事に、今の彼女が気付く訳がなかった。









「さ~て、化け物。聞こえてんだろ?聞こえてんなら始めようぜ?今宵の夜も静粛させるからな」


怪しく揺らめく影。壮也の言葉にその影はピタリ、と動きを止めた次の瞬間、水辺から飛び出す魚の様に、影から姿を現すと鋭く尖った獣の牙を剥き出しに、一直線に壮也へと向かい、瞬間的に取りだした暗牙四斬を構え、怪物を受け止め、動きを止める。


「怪物、名は?」


『この名を冥土の土産にするといい、俺の名はファングディアノーグ!貴様を静粛させるものだ』


「冗談。怪物が俺の立場に成り上がるのはとても笑えん」


『ぬかせ!』


暗牙四斬を弾くように顔を振り上げ、ガラ空きとなった壮也の腹部目掛けて、牙を突き立てるも、ファングディアノーグの牙が自分に付きたてられる前に顔を蹴り上げ、ファングディアノーグを後ろに後退させる。


「けっ、この程度……こいつも所詮下級ディアノーグなのかよ」


『舐めるな人間!!貴様らが俺を見下すなど百万年早い!』


「テメェが俺に舐めた口を聞く事こそ百万年早いんだよ!」


ファングディアノーグが飛び掛るタイミングに合わせて、壮也も暗牙四斬を振り下ろし、ファングディアノーグは地面に着地するも、ピキッ、と聞き慣れない音。その音と共に、自身が誇っていた牙の破片がバラバラと足下に落ちて来る。


『き、貴様ぁ!!』


「騒ぐな。決着はついてる」


「何だ────!?」


突如としてポタッ、と水滴が落ちるような音。足下を見れば、牙の破片だけでなく赤い液体も地面に落ちており、ふと自分の体を見てみると赤く染まった腹部からなおもポタポタと赤い液体、血を流す自分の体が……。


『ぐ、ぐおっ……』


深い切り傷。自分の状態を脳が理解した瞬間に感じる鈍痛に膝をつき、苦しみに耐えきれずうめき声を上げるディアノーグ。そんな彼の後ろから『消去』という言葉が聞こえ、振り返った次の瞬間、振りかざされた暗牙四斬によって意識が途絶えた。


消去(デリート)完了」


一つの声と共に廃墟は再び静粛へと包まれ、消去完了後、目の前の遺体は壮也の前から消えさった。


「仕事の終わりだ。随分とお前等は遅かったな。仕事ならとっくに終わらしたぞ?」


仕事を終わらした直後、自分の背後に向けて言い放つと、後ろには「遅れてごめん」と謝罪するルカと、ゼェ、ゼェと息を切らしながら膝に手を置く聖奈の姿が。


「お、遅くなったって!これでも全速力で来たんですよ!?そもそも私が担当したエリアCだけ、何であんなに遠いんですか!!」


「慣れだ慣れ。そうすりゃ疲れない」


この男は私をプロ並みのアスリートにでもしたいのだろうか?エリアCからBまでの移動距離は少なくとも3キロ程ある。それなのに慣れろというのは聖奈にとって不可能と言ってもよい物だ。


「所でディアノーグの方はどうだったんですか?」


「下級も下級。はっきり雑魚と断言できるほどだ」


「そうなんですか……」


「まぁともかく疲れたろ?さっさと帰って体休めるぞ」




「何言ってんの?夜はまだまだ長いわよ、私とダーリンでこれから……♪」


「ルカ、誤解を招く言い方はやめろ。置き去りにされたいか?」


「だってダーリン最近私に構ってくれないもん」


「最近どころか一度もお前に構った事はねぇよ、つーか抱きつくな」


自分の腕にしがみ付くルカを無理やりどかし、仕事を終えた三名はいつもと同じ様子でバイクにまたがり、事務所に戻るため、バイクを走らせようとするのだが、突如壮也はそのアクセルを踏もうとする足を止め、辺りを見回す。


「そ、壮也さん?」


「ダーリン、どうしたの?」


二人の言葉に対しても全くの無言。ヘルメットを外し何かの気配を読み取ったかのように周りを見渡すも、壮也の視界にあるもの全て異常がなく、眉間に皺を寄せつつも壮也は二人に「何でもない」と告げ、アクセルを踏み、エンジンを鳴らしながらその場を後にした。


『グルルルルル……』


だが、先程感じた壮也の気配は気のせいなどではない。静粛に戻った筈の廃墟から聞こえる唸り声。刹那、大きく揺らぐ影から黒い飛沫を上げて飛び出す一体のディアノーグ。その姿は強靭な肉体に、黒光りする鱗、そして全体的に龍の様な顔が特徴的で、ドラゴンディアノーグとでもいうべき怪物だった。


『夜狩か……何とも目障りな!』


先程の様子を見ていたような口振り、苛立ち気味に呟き、溜まるストレスを発散させるかのように隣に置かれていたドラム缶に拳を叩きつけると、ドォンッ!と大きな轟音を響かせながら、ドラム缶はまるで破裂した風船のように原形を留めないほど砕け去り、残骸が足下に散らばる。


『ドラゴンディアノーグ、少し落ち着いたらどうですか?』


ドラゴンディアノーグとは違う別の声。上を向くと頭上の鉄材に腰掛ける人、ではなく人型の姿に半壊した仮面とマントを取り付けた別のディアノーグ。


『エルディアノーグ、お前か』


エルディアノーグと呼ばれるそれは、飛び降りると共に杖を地面に付きドラゴンディアノーグをじっと見る。


『今あなたが為すべき事は夜狩の始末ではないでしょう?力の蓄え、それがあなたの為すべき事。違いますか?』


『貴様に言われるまでもない!我が為す事は己がよく知る』


フン、と鼻を鳴らしながら意気込むように拳を握りしめるドラゴン。そんな様子に満足したのか唇を上げて微笑む。


『安心しました。それにさすが『傲慢』のドラゴン。その自信は私も見習いたいぐらいですよ』


『ふん、当たり前だ。それより今日の俺の糧は用意できているのだろうな?』


『探し出すのはあなたですよ。あなたには早めに力に目覚めてもらわねば』


『この俺を誰だと思っている?頂点に登り詰めるこの俺にとって、然程手間もかかる訳がないだろ』


『安心しました。では行きましょうか?我々の宴に』


闇に向けて歩き出す二体のディアノーグ。静粛に包まれた場に彼等の足音だけが静かに響いた。



次回もできるだけ早めに更新したいと思います。

もっともっと良いストーリーとなるよう日々頑張りますのでこれからもぜひ注目していただければ幸いです。

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