第弐話『夜狩就職』
どうも皆様、ブラックナイトメアです!
まぁ自身も最近、この名前を長いと感じる今日この頃(笑)
まぁとにかく、早速第弐話公開したので、見てくださるとうれしいです。
「はぁ~~、あの人たちどこに居るのよ」
拾った髑髏のブレスレットの持ち主に返すため、持ち主を捜索しているのだが中々見つからない……。拾ってすぐに追いかけたにも関わらず。あの二人はどうやら聖奈の持っていた以上に足が速い様子で……。
普通の人なら、落し物など見て見ぬふりをするか、警察に届けるかのどちらかだろう。
だが、聖奈の場合、生まれつきかなりのお人好しの性格。後々の事を思えば、この性格は彼女にとって吉だったのか、凶だったのか……。
ともかく捜索続けて既に何時間も経過……。
聖奈が気付いた頃にはもう時計は6時を回り、既に辺りは暗くなってきていた。
「これだけ探しても見つからない。仕方ない、もう交番にでも届けて帰ろうかな」
流石にお人好しの彼女ももう疲れたのか、交番に届けて帰ろうと振り返り、来た道を戻っていくのであった。
────とある事務所。
舞台は変わり、看板に「夜狩」と書かれた一つの事務所。
その事務所の中で何やら騒がしい声が……。
『あれ~?どこに行った?』
その事務所の中では、聖奈が探しているあの眼帯をつけた男性が居た。
その男性は何かを必死で探しているらしく、辺りをガサゴソ探っている。
『何探してるの壮也?もしかして私を探しているとか?』
そこへひょっこり顔を出す一人の女性。眼帯の男性を追いかけていたあの時の女性だ。その女性の言葉から、彼は壮也というらしい。
「このくそ忙しい時に誰がお前を探すか。一回寝てからもう一回さっきの言葉をほざいてみろ」
「相変わらずの憎まれ口。まぁそこがダーリンの格好いいとこだけどね」
「いいからさっさと探せ、俺のブレスレットを紛失したみたいだ」
「いいじゃない、ブレスレットがなくても十分ダーリンは格好いいしね」
「ルカ、いい加減そこから話題を外せ。あれがなきゃ仕事に支障が出るだろ?」
壮也の言葉から女性の名はルカと言うらしい。
「今時間って何時だっけ?」
「7時前だ、さっさとしねぇと奴等が出現しちまう。気が短い奴なら、もうお出ましになる頃だ」
「ふ~ん、それよりブレスレットの心当たりは?」
「あるとしたら、今日行ったあの川原ぐらいだ。もしそこになくしてたらお前のせいだな」
「何でそうなるのよ?」
「もとはと言えば、テメェがその訳のわからないスーツを着せようとするだろうが!」
怒鳴り散らす壮也はルカが買って来たであろうスーツを示しながら言う。
「だって似合うと思ったしね」
「俺はな、そう言う畏まった服が嫌いだ。とにかくさっさとブレスレットでも探しにいくぞ」
ルカを連れ、壮也と言う男性は事務所に止めてある一台のバイクに乗り、ルカも壮也の後ろに跨ると、すぐさまその場を後にするのだった。だが、二人は道中、空の様子が気になっている様子で……。
「随分遅くなっちゃった。もう夜だよ」
辺りはすっかり夜、家へと向かう足も次第に早くなる。
こんなことなら、さっさと警察に届けて帰るのだったと後悔しながら、走っていると、あの川原の辺りまでようやく着いたらしい。
『今度の女の子、まぁまぁ悪くないかな?』
「?」
そんな時、突然聞こえる声。明らかにその言葉は自分の事を指しているだろう。その声に思わずぴたりと彼女の足は止まってしまう。
「?……だ、だれ?」
辺りを見回すが、勿論誰もいない。
だが確かに声ははっきり聞こえた。気の性などではない。
『俺の名は、アブソディアノーグ。君を餌にする化け物だよ~!』
再び聞こえる声、そして聖奈のすぐ前から、まるで球体のような物が飛び出し、それは人のような形となる。
「!……きゃあッ!!!」
突然出現したソレに、聖奈はすぐさま悲鳴を上げる。
その悲鳴を聞いて、ディアノーグと呼ばれる化け物は笑みを受けべながら……。
「はいはい。いいね、人間の悲鳴ってのは俺の食欲をそそるぜ。まぁでも新品の死体になれるのは人間としても本望だろ?」
するとディアノーグの腕の形状は槍のように鋭く変化する。
「い、いやっ!来ないで!!」
慌てて逃げ出そうとするが腰を抜かし、その場を動こうにも動けない。
そして恐怖のあまり、声すら出せないほどになってくる。
だがアブソディアノーグはそんな事にお構いなしで、聖奈に襲いかかろうと近づいてくる。
もう駄目。そう思ったその時、”ブォォォォオオオンッ!”とエンジン音のようなものが聞こえ、それは徐々に大きさを増し、ディアノーグが振り返った瞬間、それはすぐ目の前まで迫り、気付いた時にはもう遅く、そのバイクに突き飛ばされる。
「があああああッ!?」
3メートルほど吹っ飛び、化け物はその場に倒れる。
困惑寸前の聖奈は、もはや困惑寸前で化け物とバイクをきょろきょろとみている。
『おい、大丈夫か?そこの女』
そんな聖奈を我に戻したのが、バイクを運転している男の声。
ふと男の方を見ると、その男はヘルメットを外し、聖奈が無事かどうかを確かめている。
「怪我はねぇようだな……って、お前あの時の女か?」
「えっ!?」
男に言われると、聖奈もその男に見覚えがある事に気づく。
眼帯をつけたその男こそ、聖奈が探していた男性だった。
「誰かに言われた事ねぇか?夜は危ないってな」
「あなた、どうしてここに?」
「俺は仕事だ。夜狩っていうな」
「よ、夜狩?」
「それはそうと……お前、この辺でブレスレット見なかったか?大切なもんだ」
「もしかしてこれの事ですか?」
聖奈が取り出したのは、髑髏のブレスレット。それを見て、男は目の色を変える。
「それだそれ。アンタよく拾ってくれてたぜ。お陰で俺もアンタも無事に事をすませそうだ」
「それってどういう?」
「ともかく黙ってみてな。おいルカ!こいつを連れて安全なとこまで下がってろ」
すると、男の後ろに乗っていたルカと言う女性は、聖奈の近くまで行く。
「まっ、壮也が言うなら仕方ないね。早く安全なとこまで下がるよ」
「えっ、でもあの人は?」
「壮也なら心配ないよ。だっていつもやってる事だし」
「どういう?」
「ともかく黙って見てればいいのよ」
ルカは聖奈を連れて安全な場所まで移動し、聖奈は壮也と呼ばれる男性をじっと見ている。一方壮也と言う男性は、ブレスレットを腕につけなおし、立ち上がってくるアブソディアノーグを見る。
「うぐぐっ、俺の食事の時間を邪魔しやがって!」
「悪いな、これが仕事なもんでな」
「仕事だと?まさかお前……夜狩か?」
「ご名答。さて、今日の夜も粛清させてもらうぜ!」
アブソディアノーグを示しながら言い、壮也はブレスレットに手を掛ける。
「仕事の開始だ!」
ブレスレットの髑髏の部分に触れると、その髑髏の目が赤く輝き、そのブレスレットの形状が変化し、かなり大きめの手裏剣のような形になる。
「暗牙四斬!お前を殺す物の名だ」
「けっ、偉そうに……さっさと死ねや!」
アブソディアノーグ振り下ろす鋭器のような腕を暗牙四斬で受け止めていく。
”ガキィン”と斬り合う音が何度も響く。
「おらぁっ!どうしたよ、夜狩さん!」
何度も何度も腕を振り下ろし、後退していく壮也。
それを見て勢いづいたのか、攻撃の手を緩めないアブソディアノーグ。
「へっ、馬鹿が……」
だが何度も続く大振りの攻撃。それを見て、壮也は隙だらけの腹部に蹴りを叩き込み、アブソディアノーグが後ろに後退すると、壮也は一気に駆け寄り、暗牙四斬の切り先で、その鋭器のような腕を切り落とす。
「ぐぎゃあああああああッ!!!」
大きな叫び声、アブソディアノーグは痛みのあまり腕を抑えながらその場をのた打ち回っている。
「あがっ……がああっ!て、テメェ……俺の、俺の腕を……!」
「ふん、終わりだ!」
倒れているアブソディアノーグに壮也は暗牙四斬をクルクルと回しながら歩み寄り、アブソディアノーグはもう片腕を鋭器に変化させ、抵抗しようとするが、暗牙四斬でそれを弾き、弾いた片腕を右足で踏みつける。何とか逃げだそうとバタバタと動き回るが、腕を踏まれ、行動することもままならないアブソディアノーグ。
そんなディアノーグに容赦なく、壮也は暗牙四斬の切り先を首筋に向ける。
「うぐっ……お、俺の負けだ。だからそれを収めてくれ、命だけは……!」
もはや打つ手なく、必死に命乞いをするアブソディアノーグ。
だが、アブソディアノーグを見る壮也の目は冷たいものだった。
「俺はテメェらみたいな奴が嫌いだ。散々人を殺しまくった癖に、自分が死ぬとなると命乞い。散々好き勝手やったんだから、死んだって悔いはねぇだろ」
「い、嫌……た、助けて!助けてくれ!!」
「早く眠りにつけ。もっとも、テメェの場合は永遠だがな」
アブソディアノーグの首を暗牙四斬が貫き、声を上げる事すらなく地面に倒れるアブソディアノーグ。それを見て、壮也は暗牙四斬の中央にある髑髏をもはや息を引き取ったアブソディアノーグの額に当てる。
「消去完了だ」
その言葉と共に、アブソディアノーグは一瞬にしてその場から消滅し、壮也は悠々とルカ達の元へ歩み寄る。
「終わった。もう大丈夫だ」
「さっすが私のマイダーリン!手際良いわね!」
壮也に抱きつこうとしたルカを軽くスルーし、聖奈の方を見る。
「お前は大丈夫だったか?」
「は、はい……」
さっきまでの光景を見ていたのだから、壮也に対しても少し恐怖を感じる。
そんな聖奈の気持ちを察したのか、壮也は……。
「ともかく一旦俺の事務所に来な。一先ずそこで休ませてやる。安心しろ、俺の事務所はそんなに物騒なとこじゃねぇ。落ち着くには最適の場所だ」
「えっ?この子を連れてくの?」
「お前はいちいち気にすんな。ともかく乗れ」
バイクに跨り、その後ろに聖奈とルカも乗る。
さすがに三人乗りはきついので、バイクのスペースはギリギリだった。
だが、そんな事を気にせず、壮也はエンジン音を鳴らし、そのまま事務所へ向かう。
かなりスピードが出ているので、聖奈は思わず壮也の背中にしがみつく。
さっきまで彼女は恐怖で一杯だったが、今ではそんな恐怖はすっかりなくなっていた。
そんな中で、唯一人ルカは聖奈と壮也の様子を見て……。
「(何でだろう?私の勘が、この子邪魔だと伝えている)」
「ほら着いたぜ?」
ようやく事務所に着いたのか、「夜狩」と書かれた看板を差しながら三人はそこに向かう。
事務所の中は、まるで風都にいるあの二人の探偵事務所に似ており、壮也は椅子に腰かけながら、一息ついている。
「あ、あの……」
「何だ?」
「さっきの化け物一体何なんですか?あと夜狩とか」
「それを知ってどうする?」
「い、いえ……ただ興味範囲って言うか」
「ふ~ん、まぁいいさ、適当に教えてやる。まずさっきの化け物はディアノーグと呼ばれる化け物だ。必ず夜に出現し、そして人間を襲う。俺達はそのディアノーグを即刻消去。それが俺達夜狩の仕事だ」
「夜狩……ですか?」
「親が心配するかもしれねぇが、今日はここで休んでけ、奴等は朝方には絶対出現しないからな」
「奴らって、夜ならあんな化け物がまた出るかもしれないんですか?」
「悪魔で可能性だが、絶対に出現しないとは言い切れないしな」
「ご迷惑ではないんでしょうか?」
「それはこっちの台詞さ、親とかは心配してんのに悪いな」
「いえ、私一人暮らしですから」
「ふ~ん、じゃぁ仕事とかは?」
「今は就職活動中ですから、今は何にも……」
「就職活動中か、ならここで就職するか?」
「はい!?」
それはとっても大胆な発言だった。
思わずそれに動揺する聖奈。まぁ当然と言えば当然だろう。
「壮也何言ってんの!?何でよりによってこんな子を!私じゃ不満なの!」
「ルカ、お前はどこを気にしてやがる。俺はただ、お前の他のもう一人サポーターが欲しいと思って行っただけだ」
「あ、あの……私、あんな化け物とっても怖くて、それに夜狩何ていう仕事、聞いた事なくて、よく分からないですし」
「始めたばかりの頃は、ルカだって一緒だったさ。俺はお前に才能があると見込んで言ってるんだが?」
「!?、壮也の浮気者!!」
「だからお前はどこを気にしてやがる!!!」
ルカの叫びに的確な突っ込みを入れる壮也。
そんな様子を見て、苦笑いをする聖奈。
「あのお気持ちはありがたいですけど……やっぱり……」
「あっ、ちなみに初任給は結構期待していいぜ?」
「やります!ぜひやらせてください!」
一人暮らしで、早く就職したいと思っていた上にもうすぐ生活難に陥りそうになっていた彼女にとって、壮也の言った言葉は何とも魅力的な言葉だった。だから思わず口が動き、即答だった。
「決断早っ!」
そんな聖奈の切り返しの早さに動揺する壮也。
どうやらこいつもこいつでツッコミどころ満載らしい。
「まぁともかく、本人の承諾もいただいたし、決定だな。宜しく頼むぜ!新人」
こうして、聖奈は夜狩の仕事に就職することを決めた。
唯一人、ルカの鋭い視線に彼女は背筋に冷たいものを感じた。
いかがでしたでしょうか?第弐話!
夜狩、初の戦闘描写。まぁうまくは書けてないんですが……。
あと夜狩、やはり残酷な部分がありますので、今日残酷描写ありという警告タグをつけました。なので、夜狩はそういう場面も含める事をどうかご了承お願いします。
そして、夜狩は本編でも言ってる通り勿論複数形ですから、壮也以外にもいます。近いうちに他の夜狩も登場するかもしれません、また今後の夜狩もみてくだされば嬉しいです。ぜひ今後も宜しくお願いします!