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従兄の心情

拍手小話を修正したものです。既読の方は内容変わりわりませんのでご注意ください。

 従妹を女として見ていると自覚したのはいつだっただろう?


 小さい頃から伯母の家に、自分と弟はよく遊びに行った。


「よく来たわね。おばさん、お菓子たくさん作ったから仲良く皆で食べるのよ」


 伯母が手作りしてくれたお菓子はちゃんと3人分あった。

 でもわざと弟と二人で従妹の分を食べるようにした。


「いいの?」

「いいの。いいの。いないのがわるいんだから」


 弟は最初は従妹の分のお菓子を食べるのを躊躇った。

 だがやはり子供だったし兄である自分が平気だというのだからと素直に食べた。

 自分も同じように従妹のお菓子をほんの少しだけ残すだけして食べた。


「ひどーい! わたしのおかしは?」

「たべた」

「たべていいよってお兄ちゃんがいった」

「うわーん! おかあさーん! このいじわる兄弟何とかして!」

「あらあら。お菓子足りなかったの? 少しは残ってるじゃない? 今は何もないからあとであげるわね」

「ううー」


 泣きながら仕返しをしてくる顔が可愛かった。


「わるいことしたらあやまるのよ!」

「ごめんー」

「はいはい」


 素直な弟は従妹にすぐに謝ったが自分は聞き流した。


「こらっ! ちゃんとあやまってよ!」

「いなかったお前がわるいんだろ」

「食べたあんたがわるいに決まってるでしょ。あやまらないならこうだからね!」


 自分の隙をついてくすぐってきた。


「あははははっ」

「どうだ! あやまんないとやめないからね!」

「あはははっ」


 次は何をするだろう?


 仕返しを楽しみにしていたが、その内に従妹がおいしそうに食べている物が気になっていった。

 試しに簡単なお菓子を従妹に作った。


「ほら、作ってやったんだからしっかり食べろよ」


 うさんくさそうな顔をしておそるおそるお菓子を口に入れた従妹は、飲み込んだあと目を丸くした。


「おいしーい! こんなの作れるなんてすごいね!」


 そうして嬉しそうに笑った顔が印象に残った。

 泣き顔ばかりの従妹の笑顔に胸の奥が熱くなった。


 これが料理に目覚めるきっかけになった。


 それとともに、長い片思いの始まりにもなった。


 鈍い従妹に男となかなか認識されず、何年かは正月くらいにしか会えずやがてはこの気持ちも薄れるんじゃないか。そう思いもした。

 だが、会ってしまえば想いは募る。


「ひさしぶりー! 調子はどう?」


 昔と同じように笑う従妹に腹立たしい思いをしたこともある。

 だが最近になってようやく男だと思われるようになったんだ。

 この好機を逃してたまるものか。


 今日こそ捕まえてやる。


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