1
「あなた、私に仕えなさい」
飛ばされた世界で周りから笑われる上に、
見ず知らずの女性にいきなりそんなことを言われました。
俺の名前はアレン。
しがない勇者をやっている。
一つ補足しておくと勇者は職業の一つ。
魔物の生息この世界で、討伐することによってお金を貰っている。
勇者になるには世界資格がいるんだが……。
まぁ俺は小さな頃から魔力を人一倍持っていたためなれた。
そのために嫌な経験をしたけどそれは後日。
ちなみに試験は四年に一度で、十歳から受けることができる。
倍率はおよそ五万倍。
五万人受けて一人受かるか受からないか。
毎年十万人近く受けるが受かるのは二人前後。
合格者0人の時もある。
まぁその分給料はすごいいいけどね!
俺は十二歳の時に取ったので当時最年少として大きく取り上げられたこともあった。
まぁ最近十歳四ヶ月で取って俺の記録を抜いた天才君が出てきちゃったけど……。
それはおいといて、今では俺も世界で代表する勇者である。
いや自慢じゃないよ?ムフ。
んで今日も一仕事を終えてきたわけで。
今はいつもしているマイルーティンをしに来ている。
何かと言うと、伝説の勇者エルナスがまつられていると神殿を訪れて仕事の報告をすること。
なぜそんなことをしているかって?
強い勇者っぽいじゃないか。
俺は形から入る派なんだよ。
ちなみにエルナスって人は三百年前にこの世界を救ったと言われる勇者。
三百年前に本気で世界を滅ぼしかねない魔王がいたらしい。
まぁそれを倒したといわれている勇者一行がまつられているわけだ。
え?お決まりとか言うな。
まぁエルナスは俺がリスペクトする勇者だ。
それだけわかってもらえればいい。
一連の報告をして立ち上がる。
さて、俺はこれから自宅へ帰って寝るとしよ……!
そんな時であった。
手元の小型通信機にメッセージが入る。
何よ……誰よ?
俺は帰って寝るんだよ。
ぶつくさ言いながら確認する。
「今すぐ我が屋敷にくること」
…………。
え、横暴過ぎない?
「いやなに、久しぶりに貴様の顔でも見てやろうと思ったわけさ」
「ハハハ、それはそれは。血反吐が出る位光栄です、殿下」
俺が今対峙している馬鹿……いや、お方はレイストン伯爵。
一応女性。
この国は伯爵が関白を勤めている。
実際この国も殿下が指揮を取ってから成長し始めたようで、実績は大きい。
それに国民を思う気持ちを常に持ち、
それに準じた法を作るので人気も高い。
だが気が強く男勝りな一面もあるため、
着いたあだ名はあだ名は【姫将軍】
ちなみに誰も本人の前では言えない。
言ったら……ああ、恐ろしい恐ろしい。
身の毛もよだつことが待っているに違いない。
ちなみに殿下は不老不死というナニソレオイシイノ的なチートスペックを持っている。
そのため見た目は二十歳ぐらい。
【見た目は子供、素顔は大人】ならぬ、
【見た目は大人、素顔は老婆】である。
だがしかし見た目は世界三大美女の一人と言われ、
未だに求婚の数も半端じゃないとか。
全部見向きもせず断ってるらしいけど。フフ。
年齢を知る者は一人もおらず、
つい最近死んだ百二十歳の婆ちゃんが、
『あのお方は私が物心ついた頃には関白として頑張っておられたよ』
と言う証言をしたのはあまりにも有名。
つまり百四十歳以上であることは間違いないのである。
となるとババ……年配である。
まぁ殿下の紹介はこんな所だろうか。
「それで、久しぶりに見る私の顔はどうでしたか?相変わらずハンサムでしたか?」
「うむ、相変わらずムカつく顔をしておる。蹴り飛ばしたいくらいだ。」
な、何だよそれ……。
いくら関白様でも言っていい事と悪いことはあるんだぞ!
「いくら殿下からの呼び出しとはいえ、これは権力の濫用では?」
皮肉を込めて言い返す。
「私は強制したことは一度もないぞ。ただ“できれば”してほしいと言ってるだけだ。それに苦言を垂れながらもやるのは貴様の意思だろう?」
「…………」
「そうだな。今思えばかなりの無理難題も貴様はやってきたな。何故だ?」
「何故……ですか?」
「ふむ、貴様私に特別な感情でも抱いているのか?」
なっ!?
「そ、そんな訳!自惚れないで下さい!」
「はっはっは。何、冗談だ。貴様の慌てる様、愉快だぞ。」
くくくと笑う殿下に流石の俺も腹を立てた。
「失礼します」
立ち上がりそう言うと踵を返す。
「何だ、帰るのか。また来い」
「ええ、気が向いたら来ます」
そう言い残し俺は部屋を出た。