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大和共和国到着(20X×年○月6日)

大和共和国到着(20X×年○月6日)


     ~夢の島いつしか夢でなくなる島となる~


                         一


 羽田空港では、共和国調査団のメンバが全員集まっていた。マスコミや旅行者などもいて、集合場所となった第一ターミナルは、ごったがえしていた。海外のメデイアもニュースとして放送していた。メンバは、眠そうな顔を隠そうとしなかった。ベテランでも、今回の調査行きは、寝付かれなかったようだ。緊張地域に行くことから家族の見送りは、多かった。団長である田中から簡単に挨拶があった。その後、皆専用機に搭乗していった。飛行時間は、3時間である。飛行機での現地の空港管制センターとの通信は、事前に調整がとれていた。機長は、日の本航空のベテラン機長である。副操縦士を始め乗務員10名が、日の本航空のスタッフである。緊張地域へ初めての飛行することで、航空自衛隊からとの案もあったが、刺激を抑えることもあり、日の本航空の乗務員で落ち着いた。専用機は、順調に飛行していった。

「間もなく、現地大和民主主義共和国の空港に着陸します。」のアナウンスで全員緊張が走った。

アメリカ、中国、ロシアからの妨害もなく専用機は、静かに着陸姿勢に入り着陸していった。

調査団は、スクリーンから見る景色や、窓から見える景色にみとれ緊張したまま、声をだす者はいなかった。窓から見える島の周りの海は、きれいだった。島は、南の国で見かける風景と同じだが、近代的な建物も見えていた。専用機は、空港建物の近くで止まった。広い空港である。他に飛行機がいないから余計に広く感じられた。タラップが降ろされ、団長を先頭に降りると、南国特有の暑い日差しを受けた。湿った風、燦燦と降り注ぐ太陽、みな緊張しながら手をかざし、日光を防ぐしぐさをした。

地上では、共和国の外務大臣本山が、関係者と一緒に出迎えていた。

 制服をきた警備関係のメンバが、両側に並んでいた。顔から判断して。アフリカ系、ポリネシア系、アジア系の顔つきである。握手と簡単な挨拶を交わしながら、空港の建物の中に入って行った。

「外国のかたが、訪問されるのは、今回が、初めてです。申し訳ありませんが、簡単な入国審査を受けていただき、入国カードを受け取ってください。我が国に居られる間は、常時みにつけておいてください。荷物は、後ほど宿泊先にお持ちします。」日本語で、日本人と思われる人からいわれると、日本の様だが、やはり外国にきたのだなと皆感じた。緊張がもたらすこともあり、複雑な感情が交差した。

入国審査は、何事もなく順調に進んだ。緊張した割には、審査官が元日本人のため、雑談を交えた審査が行われた。全員、パスポートに対応した入国カードが渡された。これは、写真が貼り付けられており、ICチップが組み込まれたカードである。日本でよく見られる、首からかけている写真付きのものと同じである。


                       二


 空港は、近代的できれいであった。こんな小さな島で、立派な施設を有しているとは、皆驚いた顔をしていた。専用バスが、2台用意されていた。手荷物を受け取り、専用バスに乗り込み、宿泊するホテルに向かった。専用バスは、エコカーである。外観は、通常見かけるバスと変わらない。エコカーだと言われない限り、判らない形状である。道路は、整備されており、片側3車線の幹線道路をホテルに向かって走っていた。走っている車は、少ない。驚いたことに車は、全て電気自動車とのこと。そういえば、この専用バスの音も静かで、座席は広かった。空港から、30分ほど内陸に入ったところに、ホテルがあった。マスコミ関係者が多い車両では、やたらシャッタの音がしていた。現地時間は、17時近くになっていた。日本時間14時である。

 ホテルに着くと、フロントの前で、本日の予定と部屋割の説明があった。全員一人部屋である。ホテルでは、9階が政府関係者、8階はマスコミ関係者に割り当てられた。各階には、一部屋余分な部屋が、割り当てられた。それは、調整部屋として活用が出来るようにとの事だった。会議室は、3階に、大・中・小の会議室が提供された。インタネット用として、100台のPCと共に、専用の部屋が用意された。最上階には、レストランがあった。本日の夕食は、そこでとることとなる。

 専用機は、調査団を全員下ろすと、1時間後に日本へ帰って行った。調査団が、帰国する時に、再び、この空港へ迎えに来る。それまで、皆元気でいてくれることを願い帰国していった。

「各自、チェックインのサインをしたら、集合までフリーです」との声を聞きながら、皆荷物をもちカウンタに並んだ。このホテルは、貸し切りである。観光客もいない。日本の調査団だけである。

18時前には、皆最上階のレストランに集合していた。すでに調査団の幹事と共和国側で明日からの調整行われていた。電話は、携帯電話を登録することで、通信可能となった。衛星中継用設備は、NHKに貸し出されていた。皆、日本に向けて電話をしたようである。ホテルの周りを散策した者もいた。

レストランでは、日本食が出された。


                         三


 その頃、共和国の首相官邸の一室では、首相の張、副首相兼内務大臣の朴、警務局長・堺、情報調査室長・佐古を中心に、関係者が集まっていた。

「警備状況は、大丈夫か?」張が言うと

「大丈夫です。問題は、すでに不法入国している連中が、30名程確認されている事です。全員武器を携帯しているようです。海岸近くに武器と逃走用ボートなどを隠しています。全員逮捕しますか?」

堺がいつでも出来るかのごとく話すと、佐古が言った。

「今のところ、泳がせておこう。危険を感じたら、即身柄を確保できる体制にしてほしい。国民に危害を加えたら、そんなことは、許せないが、処置は任せる。調査団がいる間、静かにしてくれればよいが」

「彼らの飛び道具は、無効に出来るようにしますか。但し、ナイフなどは別ですけどね」佐古が、古い言葉の“飛び道具”と言った。

「平和的な方法で、対応したいね。何もなく調べるだけ調べて、この国から出て行ってほしいね」朴が言った。

「今回は、警備を甘くしています。いつでも進入出来る国だと、思わせるようにしています。

しかし、生活習慣など違うので、国民の中に入り込むことは、出来ないと思います。顔は日本人でも、この国の人間でない事は、すぐ判ってしまうでしょうね」堺がいった。

「多分進入しているメンバは、アメリカ、中国、韓国、ロシア、日本から送られてきたと思われます」佐古が言うと

「アメリカ、ロシア、中国の艦船と潜水艇はどうだね。東郷主席につたえておくか?」張が言うと、佐古がすでに報告してあるといった。

「しかし、調査団と別に、日本人の部隊も侵入するとはね」堺が言った。

「張首相、明日の調査団との、打ち合わせですが、出られますか」朴が言うと

「挨拶は、しましょう。表敬訪問ですからね」

「宇宙局の質問については、構想だけにしておいてほしいですね。まだ、あまり刺激を与えたくないですからね。それと、彼らは、我々の支援者の実態をつかもうとしていますから、これも、ぼかしてほしいですね」佐古がいった。

「ハハハ・・。そうだね、切り札は後だね。一応想定された施設の根回し、準備は大丈夫ですか。本山さん。大変だろうけどよろしくたのみます」張が笑いながら話した。

「わかりました。日本人同士で、外交交渉するのですから、少しやりにくいですね」

「おいおい! 本山さん。もう我々は、大和人だからね」

「ハハハ・・。失礼しました。いつまでも、郷愁に浸っていてはだめですね」本山は、苦笑いした。

国内警備をつかさどる堺、情報局の佐古は、日本の検察局で同期であった。東郷が90年に同郷の集いでスカウトした。型物の堺と対照的な佐古がいた。幼馴染だった。

 東郷は、知りあってから3年後に、話をして検察局を辞めさせた。それから、過酷な訓練を二人に強いた。二人は、結婚して、子供もいた。今では、全員この島にきているが、家族との葛藤は、訓練とは別に、彼らを苦しめた。

「理想では、食っていけない」堺の妻がいった。もっともな事である。

訓練中は、海外の仕事をしていることにしていた。2000年にこの島が、ほぼ出来上がった時に話した。その時が一番離婚の危機だった。東郷の妻も同じであった。東郷の妻が、緩衝材の役割をはたした。同じような、境遇から、彼女達を慰め、引っ張って行った。民主会初代会長の伊藤の妻は、住職の妻らしく静かに、話しを聞き諭した。同じ境遇の妻達は、仲間がいる事で、心を癒し困難に向かって行った。東郷は、島の警備体制を、朴と構築するように、堺に命じた。佐古には、要職にある人達の警備をどうするかを検討させ、各国の情報分析をさせた。それと、出雲達の夢と影の調整する職務に、2000年から就けた。唯一影部隊を知る人物である。二人とも今では、50歳になっていた。今までは、検討し対策、体制を嵩じてきた。これからが、本格的な仕事だと思っていた。


 首相官邸では、ずっと灯りが、ついたままであった。外では、南国で見かける星が輝いていた。流れ星が、一つ、また一つと流れた。


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