南の島テレビに登場(20XX年〇月2日)
南の島テレビに登場(20XX年〇月2日)
~南の島遠き島より流れつく情報~
一
東京都都知事室において小泉知事は、渉外局課長の渡利の報告を聞きながら
「このような時代に、独立国を作る日本人がいるとは、アッパレと言うべきかね。何を考えているのか、うまく行くと思うかね。東郷などの人物とは、何者かわかったかね」今後の対策を練るために、矢継ぎ早に質問した。
「今、政府とも打ち合わせして、調査を始めています。政府の対策室に、東京都も参加したいと要請しました」
「アメリカは、何かいってきているのかね。相当怒っているだろう。在日米軍もかたなしだからね。無茶な行動はしないとおもうが」
「わかりませんが、慎重に対応することを期待しています。何分日本人が主役で、独立国を宣言していますからね。政府には、連絡が言っていると思います。お互いに情報の共有を図ることが、必要になると思います。どこまで情報を提供し合えるのか、課題となると思います。それにしても、平和気分でうかれていた日本ですから、一触即発的な状況は、いい刺激で済まないですね。アメリカと日本は、中東だ、北朝鮮だと騒いでいて、足元がみすかれたことがショックですね。アメリカは、戦略の見直しを含めて、色々と日本政府に強い要望がでてくると思います」
「自衛隊は、何をしていたのかね。南鳥島に常駐強化をしていく必要がでてくるね」
「・・・・・」
二
そのころ首相官邸では、緊急対策室が設けられていた。日本に対して脅威になるのか、独立を認めるのか。大和民主主義共和国からは、承認の要請と平和条約の協定及び貿易協定の要請がされていた。
日本政府は、共和国の建国した理由を測りかねていた。テロリスト集団として断定するには、10万人の人口が妨げとなっている。本当にそれだけの人数が存在しているのか、前例のない出来事であった。
日本人が、建国に拘わっているならば、何故独立なのか、日本国籍はどうするのかなど、簡単に認められるものでなかった。
一つは、日本に近接している島で、日本人が独立国として認めろといってきている事。日本国憲法に類似した憲法を持ち、新たな国を樹立しようとしている事。
一つは、アメリカとの関係である。日本は、アメリカに防衛力をゆだね、今日に至っている。沖縄などは、米軍基地に悩まされている。これを安易に認める事は、沖縄を含めた米軍基地や在日米軍との関係が、ギクシャクしていくことになる。日米同盟を基本としている日本は、外交・防衛・経済にも影響を及ぼす懸念がある。
一つは、誰にも知られずに建国まで持っていったこの国の力である。主力は、日本人のようだが、韓国・中国・その他の人達による国づくりである。日本と違う、新たな国を成し遂げる自信があるのか、その根拠は何か。大和共和国を国として判断するための情報が、不足していた。何も判らない、この事が、余計に得体の知れない不気味さを感じさせていた。全てにおいて、過去に例の無い国であることは、間違いがない出来事であった。内閣調査室長の影山は、調査状況を報告していた。
「総理。今ホームページに載っている日本人は、調査中です」
官房長官の野平は、緊急対策室を構成する名簿を、提出していた。
総務省、外務省、防衛省、法務省の各大臣と各事務次官、それと東京都渉外局局長、自衛隊からは陸・海・空の戦略本部から、民間からは、防衛、外交の専門家などで構成する大規模な対策室となった。
「ホームページの名簿から、人物に対する情報と背景、彼らの組織の存在を調べてほしい。それと至急、該当する島へ調査をしてほしい」総理の山鳩が指示した。防衛大臣の島が
「現在厚木基地から、現地の偵察として偵察機と調査機の準備手配をしました」と言った。海上自衛隊の海原は
「自衛隊は、いつでも出撃ができる準備態勢はできています」と報告した。外務大臣の加来が言った。
「アメリカは、駆逐艦を派遣したようです。いざとなれば、武力行使もやむ得ない体制で望むようです。在日米軍は、臨戦態勢に入っています。アメリカには、慎重に対応してほしい旨を、要請しています。また、情報交換を含めて、打ち合わせをしたいとの申し入れもありました」
「武力行使は、できるだけ避けたい。アメリカ政府にも要請しよう。いずれにしても、相手国の情報を仕入れてください。彼らは、本当に独立を求めているか。真っ先に日本へ承認を求め、平和協定を申し入れてきているから、こちらもそれなりの対応しなければならない。曲がりなりにも彼らは、我らの同朋、日本人だからね。“だった”というべきかな」総理が言った。
「気象衛星を通して、上空からの写真を手配しました」総務大臣がいった。
「いずれにしても、平和的な方法で解決したいものですね。駆逐艦は、すでに向こうの領海内に着いたようです。中国、ロシアの艦船も出撃したようです」防衛大臣の島が言った。
「ところで国民の反応は、どうかね」
「マスコミの状況では、まだ半信半疑の反応ですね」これらの会話が、交わされながら、対策が練られていった。内閣調査室の係官が入ってきて、影山に耳打ちした。そしてテレビが、つけられた
「皆さん、テレビをみてください。これは、インターネットで映し出された映像です。生中継になっています」影山が言った。映し出された画面を皆、食い入るように見入った。
そこには、アメリカの艦船とヘリコプタが写し出されていた。そして小さな監視艇が、写し出されていた。 日本の近海で緊張した情景が、映画を見ているような光景で、テレビ画面に映し出されていた。
東京は冷たい雨がふっていた。昨日の夜から、降ったりやんだりであるが降り続けていた。