表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/31

寒い空港(20XX年〇月21日)

寒い空港(20XX年〇月21日)


   ~友達でいる事を願う。争いが消える事を願う。いつまでもいつまでも~


                      一


 日本では、桜の開花宣言が聞かれるころであるが、今年は遅れていた。それでも南は開花のニュースが流れていたが、東京は寒い日が続いたため遅れると報じていた。久しぶりに今日は暖かかった。

 共和国代表団は、東京が初めての者が数名おり寒さに震えていたが、慣れてきたのか暖かくなった東京を喜んでいた。東京見物すると共和国に無いものが色々とあった。夜出かけても人は多く灯りが消えなかった。やはり女性だ、買い物は楽しい、見るだけでも浮き浮きした。高級品は変えなかったが洋服や化粧品は買った。食事するところでは、共和国にないレストランに入った。飲みにも行った。多くの人達が夜遅くまで働いていて、何という国だろうとジョイナは思った。これでも貧しい人が多くいる、心を痛める人も多いと聞いていたが、そんな様子を見ることは出来なかった。東京は天国だと思った。確かに路を歩いている人達は、声をかけないですれ違い無表情の人達が多い、でもひとたび買い物に寄れば違った。活気はあり、皆親切で応対は素晴らしかった。


                     二


 ジョイナは、アフリカを思い出していた。アフリカでは食事も満足なものが食べられない、戦場から逃げ惑う日々だった。共和国はそれから見れば天国だった。働く事も、学ぶ事も、食べる事も、住むところもあり、眠れない日々を過ごすことはなかった。しかし、東京は今まで感じた事のない魅力ある街だった。人の波を泳ぐように元日本人だった森田に連れられて歩いた。私達の街もこの様になればいいなと思ったりしていた。

 そんな時に、数名の男性グループから声をかけられた。コートきていて共和国では見た事がない服装だった。共和国でコートを羽織る事はないが、その人達は英語で声をかけてきた。一人の黒人男性は、同じ肌の色をしていた。陽気な顔でジョイナに話しかけた。

「一緒にどこかに行きませんか?」と誘ってきた。ジョイナは嬉しかったが断った。しかし、しつこく誘われ困ってしまった。あまりにもしつこく誘うので一緒にいたスザンナが怒った。それでもにこにこ笑って話しかけてくる。こちらが怒れば怒るほど誘ってきた。森田が行きましょうと言ってやっと振り切った。ジョイナは、知らない男の人から誘われたのは初めてだった。そんなジョイナを観てスザンナが笑ってからかっていた。

 そんな時、男が楊のところに来て囁いていた事を気がついたものは誰もいなかった。


                    三


 共和国政府は、明日台湾を訪問する事を発表した。台湾政府も報道したが、中国政府と親密な関係を損ないたくないとして貿易問題で打ち合わせすると報じた。

さらに共和国政府は、イスラエルを始めとして中東を訪問すると発表した。

 見方によれば、日本や中国、米国をさかな出る行動である。自分達をないがしろにした行動とみることもできる。一応共和国の独立を支持した国との形態をとっているが、各国としてはあまりいい気もちでないだろうと評論家達は報道番組の中で話していた。


                    四


 事務所に一人の男が訪ねて来た。

「仲野は、防衛省に行ったようですね。盗聴器はどうですか。彼らは、気が付いていますか」

「判らない。気が付いている様子が感じられない。防衛省にいつ行った」

「昨日です。防衛省から出てくる車をつけてわかりました」

「彼らの誰かを連れてくること出来るか」

「仲野や伊藤、藤本は厳しいかもしれない。日本も警備しているけど、随行しているスタッフならば可能かもしれない」

「彼らは、一両日中に日本から離れるだろう。それまでに可能か? 出来るだけ共和国を怒らせて日本に近づけないようにしたい」

「判らないよう始末しますか」

「手なずけるのが一番だ。今後彼らが来る機会が多くなる。その時の足がかりでもよい。問題がでたならば、始末するのも一つの手段だ。始末するならば幹部がよい。我々の手掛かりはのこすな」男は出て行った。入れ替わりに中年の男が入ってきた。

「今出て行った男は誰ですか。イケメンですね」黙っていた。

「ゴミ屋さんの手配は出来ました。多分彼らと共和国は、つながっていますね。それと民主会ですね。一応地元を中心に暴力団を動かします。関西と福岡は、在日朝鮮人が動きます。役人は暴力に弱いですからね。警察の手配はお願いしますね」

「いつから動く」

「明日からといってあります」

「判ったくれぐれもこちらの繋がりを勘ぐられない様にしろ。彼ら自身でやったことにしろよ」こんな会話が交わされていた。彼らは共和国に対して反感もっているようだ。


                      五


 日本政府は、昨日に防衛省で話し合われた内容について主だった閣僚が、首相を交えて打ち合わせしていた。信じられない内容であった。世情では、日本は沖縄の軍事負担軽減の難問があり、沖縄県民は県外の移転を望んでいる。日本政府はアメリカに恫喝されていて動きがとれない。中国の沖縄近海での軍事演習は、盛んに行われおり、北朝鮮の動きも不穏な活動が為されていた。そうした中での米軍基地縮小、海兵隊の移転を願う沖縄県民に対して政府は煮え切らない態度でいる。

アメリカは、怒っていたがじっと我慢しながら日本の様子を見ていた。表だって日本に圧力をかけないでいた。遠まわしに新たな基地建設は、住民の了解をとれと言っていた。

 日米両国とも選挙を控えていることもあり焦りはしていた。しかし、共和国の登場は、早急な対応を欲していた。

 共和国の防衛システムが、本当ならば沖縄含めて日本の防衛は大幅に変わる。しかし信用できるものか疑問だった。何より共和国は今まで存在しない国であり、付き合いがない新しい国である。そんな国の防衛システムなど信じられるはずがなかった。日米同盟は、日本を前線基地とすることで機能していた。

 日米は、軍事面だけでなく経済含めて結びつきは強かった。この不況に対しても連携して対処してきている。日米関係は長い年月を通じて構築してきているのである。この関係を簡単に切り捨てることなど、政権を握っているものは、判断できるはずがなかった。

「いずれにしても、事の真意を確かめる必要があります。それと我が国の防衛にたいする弱点について聞く必要があります。また監視システムについては、検討しても良いのでないでしょうか。アメリカに報告するかどうか別として銃・刀・麻薬等を監視できるならば、見て判断しても良いかと思います。飛行機の問題は、軍事面に利用できるか含めて検討してもよいかと思います。さらに彼らが持っている環境技術は、我が国がCO2の削減を宣言していますのでこれらも交流戦略として折衝していく必要があると思います」防衛省の技官が言った。

「彼らは、日本を一番に交流先として指定しています。我々は、常にアメリカを気にして外交、貿易などしていました。はっきりと我々の見解、本音を言はないやり方です。日本人特有の相手を気づかう言い回しです。今回共和国とは、堂々と言い合って交流してもよいのでないでしょうか」外務大臣が言うと首相は苦笑いして。

「もっと早くどこにも言える形で進めば良かったね。彼らの登場が遅かったかな」

「時間がかかるかもしれないが、彼らを利用していきましょう。彼らに他の国を牽制させていきましょう。問題は我々が其処まで持つかです。世論が待ってくれるかです。不況は厳しいままです。財政は赤字です。増税しなければ成り立たない状況ですからね」寛財務大臣が言った。

「我々は政権を執ったが、色々な意味で未経験な事が多い、未熟な対応と思われている。彼らを利用するとなれば、彼らから学ぶ事も必要だろう。内部分裂起こさないように対処して行こう。当面我が国が必要と思われるものは、積極的推し進めよう」会議はその都度行うこととして共和国担当チームを強化することで終わった。

 内閣調査室の影山は、警察庁と防衛省に特別チームの編成を要望して、早速要員が派遣される事が決まった。人選はそれぞれの省庁が推薦し指揮は内調が執ることになった。


                        六


 アメリカ政府は、日本が急速に接近して結び着く事を恐れていた。建前上独立を認めないと表明した日本であるが、人的交流と貿易交流は進めるとして協定まで結んだ日本が、共和国と連携して自立することを恐れた。

 日本が、アメリカから離れようとしているように見えた。アメリカ政府は中米大使を呼び、共和国の状況の報告を求めた。暗に圧力をかけていた。


                        七


 アメリカ政府は、来日している共和国代表団との接触を諮り、ローカルに打ち合わせを仲野に申し入れていた。仲野は、前向きな回答をしていた。共和国を取り込む一環としてアメリカも動き出していた。航空機の登場は、アメリカにとって見逃すことは出来なかった。さらに通信技術である。すでに通信衛星を配備していることが確認されていた。

          

 中国政府も同様に代表団に申し入れていた。共和国政府に以前中国に居たメンバがいるとしても共和国の持っている技術力等は、現在急激に経済成長している中国に必要な物であった。さらに共和国政府は建て続けて、北朝鮮、台湾の訪問を表明し実行してきた。アジアの盟主を狙っている中国にしてみれば、共和国が勝手に動き回るのを牽制する必要があった。


 ロシア政府は、アメリカ、中国が独立を支持しないとしたが、ロシアは賛成し共和国政府に訪問を要請していた。しかし日本に飛来した航空機をみてアメリカ、中国が急速に共和国対策を変化させた動きをみて、ロシアも打ち合わせを来日している仲野に申し入れていた。こうした動きはヨーロッパの各国や中東の各国も同じであった。今や共和国は時代の寵児であり、独立を支持、不支持に関係なくまず直接話をすることを求め、その窓口は来日しているメンバだった。


                        八


 仲野は、昨日ホテルに帰ると楊、林、森、島、ケイト等警備関係者を呼んだ。盗聴器が取り付けられている事を告げ日本政府と打ち合わせしている時に撤去する事を指示した。それと随行員を拉致する動きがあるので注意することを周知した。楊は思い当たることがあるので頷いていた。その後に伊藤、藤本の局長を呼んだ。

「明日の説明は、伊藤君にやってもらう。森田、楊、ジョイナを同行させる。藤本君には明日中国の要人に会ってもらう。彼らから申し入れがあった。その後にロシアの関係者だ、一応通訳できる人間も同行させてくれ。私はアメリカの関係者とイスラエル関係者に会う。そして中東関係者だ。ヨーロッパの関係者は藤本君が対応してくれ。それと色々な組織が我々に敵対する行動の動きあると連絡が入っている。伊藤君には、電力会社と環境省の打ち合わせで日本の提携会社指名してほしい。日本政府に保護させたい」と昨日の夜に話をしていた。打ち合わせの申し入れの数は予想より多かった。その分日本の関係者と会う事が出来なくなった。共和国に関係がある会社に対する嫌がらせを防ぐ必要が出て来ていた。寺門さんと話をして、すでに調査で判明している日本の関係者は、オープンにする事にした。共和国側は、まだ受け入れ態勢が十分でなかった。日本語を国語としたのは、体制が十分でない事も起因していた。差別化を図り入国規制が出来るメリットがあった。そのために日本人だけはビザなしで渡航を可能にした。但し、宿泊先の明確化を求めた。


                        九


 本山外務大臣は、北朝鮮外務省に感謝と交流の窓口開設を促進することを最優先課題であると挨拶した。

 共和国は、東アジアの中で扱い憎い国の一つとして北朝鮮を挙げていた。独立の支持の表明をきっかけに、北朝鮮との交流が図れればとの思いで訪問した。北朝鮮は、日米韓そして中国が大和民主主義共和国を認めないと声明を出したことで接近したいと思っていた。孤立を防ぐ意味もあり、日本やアメリカ、韓国を牽制する意味もあった。また、インフラなどの技術力を取り入れたい野望を持っていた。日米韓から支援が中断しており、経済的に困窮していた。

 北朝鮮は、打ち合わせの中で次の質問をした。

「共和国の外交姿勢と防衛問題、日本の米軍基地について」聞いた。

「共和国は非武装中立、戦争放棄を憲法で定めている、外交についてはいかなる国とも話し合いを通じて対等、平等、内部問題については相互不干渉を基本、貿易に対しては相手の産業を圧迫しないギブ&テイク、技術協力については戦争や軍事面に利用されない事を前提である」と本山は話した。

北朝鮮側は、笑いながら

「きれいごとですね。現実的に日本では同じ戦争放棄を掲げながら軍隊を持ち、国民の反対を押さえて外国人に基地を提供して戦争の準備をしている」など言ってきた。

本山は、笑って反論しなかった。

「日本の問題は、日本国民が解決することです」と言った。

 北朝鮮側は、技術支援、取り分け電力などインフラ整備技術を要請してきた。

本山は、共和国の支援は条件さえ整えば問題ないと話した。

今後技術支援については、条件など含めて実務レベル担当者を派遣して打ち合わせして行きましょうとした。但し、今北朝鮮に対して世界各国が注目している六カ国協議、拉致問題について、会話を通して解決に向けて前進させてほしいと付け加えた。

 北朝鮮は、余計な御世話だと言わんばかりに北朝鮮の正当性を言ってきた。本山は予想された言い訳なのであえて反論はしなかった。

「我が国は、元日本人が造った国です。核の問題や拉致家族の問題については敏感に反応します。友好は進めて行きたいが、併せてこれらの問題解決も期待しています」

本山が話した。北朝鮮の外務大臣が話しを切り替えて次の事を聞いてきた。

「本山さんのところの副主席の立場で孫副主席と朴副主席が居られますが、二人の副主席は我々の同朋ですか。2人以外に南の人間含めて共和国に何人いますか」

「我が国は、個人情報扱いとなるものは非公開です。本人達が話すのは妨げませんが、質問された件について答えることはできません」と本山は返答した。

北朝鮮は、代表団が乗ってきた航空機について質問してきた。金総書記と軍部が関心を寄せていたようだ。航空機については、性能関係は機密扱いで販売する予定はなくレンタル方法を検討している事を本山が説明した。レンタルで航空機の提供する方法とは、北朝鮮側は驚いた。しかし、その後の質問はなく打ち合わせは終了した。一応友好的な雰囲気で会議が終了したことに安堵感を感じながら共和国代表団は、一部の要員を残し、夕方には引き揚げた。北朝鮮に、連絡事務所か大使館レベルまで格上げした場所の選定、必要な情報収集のためとして、要員を提案して受け入れられた。

 帰国に当たって、共和国から航空機を呼び寄せた。まるでハイヤーを呼ぶ感覚である。1泊2日の短い日程だった。それにしても日米韓の空の監視網に引っかからないで、航空機が到来するのである。到着寸前で監視網に捉えられる。ある意味では危険な飛来であった。共和国は、今後の空路の確保を世界中に通知していく課題があった。


                        十


 共和国の航空局は、今回の北朝鮮への飛来と日本への飛来の結果、世界中に共和国航空機の空路確保を求めた。飛行機の登場で世界は狭くなった。さらに、共和国の航空機の登場は狭くさせた。しかし、快く思わない人達がいた。

 かつて本山は、世界を旅した。人々と触れ合い、その地域の文化に敬意を表した。共和国の文化は何か、人間の理想を追求する人達の集まり、生きていて良かったを実現する国の文化、笑い、喜びでないだろうかと思った。


 寒い空港をあとにした。いつかこの国も寒いながらも暖かい思いが生まれる事を願って後にした。雪がふりだしていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ