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東郷主席登場(20XX年〇月11日)

東郷主席登場(20XX年〇月11日)


     ~歳と供に思い出話に花が咲く~


                          一


 調査団の今日は、外での調査を中止とした。明日に行われる共和国との総合打ち合わせの準備をするためとして共和国に連絡した。調査団は、ホテル2階の会議室に全員集合した。

「体調壊した人は、いませんか」皆なれてきたのか、リラックスしていた。各自、着席するとプロジェクタに映し出されていくこの国の風景が写し出された。毎日行われていた会議の中で写しだされたものであった。

「昨日は、南区をやりました。本日は、中央区についてやります。そして皆さんの感想等気がついたこの国の弱点や注意事項について意見をかわしたいと思います」田中団長の司会で始まった。中央区は、団長を先頭に調査したところである。行政区の中心だ。他の行政区は、海に接しているがこの中央区は接していない。各省がおかれていることで中央官庁の役割を果たしている。産業地域や商業地域も存在していた。農業地域もある。建物は、他の地域より高い建物がある。中央はセンタービルである。各省庁の窓口機関、産業・商業・農業などの各組織事務所などが入っている。高層で300メートルである。居住階は、50階である。その上は、塔がたっている。国会議事堂、図書館、博物館、迎賓館、首相官邸、各省の幹部宿舎、美術館、劇場、音楽ホールなどもある。研究機関の建物も配置されていた。但し、閉館しているものもある。将来を想定して必要と思われるものを先に造った感じである。事務所なども空きが多い。これだけの建物に投資した資金は、どうしたものか。国土交通省から参加した、国松は言った。

「軽く見積もっても建物だけで、日本ならば1兆円、土地の埋め立てなど考慮すると3兆以上の資金が必要と思われる。この建設に参加した労働者は、すごい数になります。国家プロジェクトとしては、歴史的にみても最大の事業の一つでしょう」

「資金力を持ったスポンサが、ついているということですね」外務省の竹下が口をはさんだ。中央区の状況について、一通りの報告が終わると。

「政府幹部との聞き取りは、どうですか」総務省の山口が聞いた。

「話せるものは、積極的に話すが、この国を作った目的、資金力などとなると固く口を閉ざして話さないですね」

「主席となる人物は、明日でてくるのですか」佐藤幹事が聞いた。

「明日は、外務大臣だけです。他は各省庁からのメンバだけです。実務部隊だけです」

「警察関係者は、でてくるのですか」防衛省出身の前田が発言した。

「聞きたいことがあるのかね」

「今回、警備があまりにも手薄と感じました。周りには、アメリカ、中国、ロシアの艦船がいます。戦争放棄を掲げるのはかまいませんが、国民を本当に守ることが出来るのか、治安は安定しているようですが、今後海外から色々な人が入ってくる。治安や安全保障について聞きたいですね」

「判りました了解です。国会議員団としては、何かありますか」

「私は、今回の調査が交流の第一歩になったと感じました。しかし、日本でなく独立してまで作ろうとしている狙いは、反日本を意図しているとの想いが強くなりました。あまりにも出来すぎている国です。日本を反面教師としている感じです。憲法の問題、防衛の問題、高齢者の問題など日本で問題になっている事に対応しています。この意図は、日本でできないならば、我々がやってやるとのメッセージでないか強く感じました」自由党の佐々木議員が言った。民衆党の山田議員は、

「この国の独立を認めたくないね。この国を認めれば、沖縄の米軍基地を始め、米軍基地不要を認めたことになりますからね。それに佐々木議員が話されたように、日本への反乱を宣言している国です」断定したように言った。

「本来、我が国は、戦争放棄を宣言し武力をもたない宣言をしている。第二次大戦の敗北で二度と戦争をしない。そのために軍事力をもたないと宣言した。冷戦時、占領政策のなごりの延長で、日本を守るために日米軍事同盟を結んだ。しかし、現在在日米軍の役割は、日本を守ることを主としない。米国の世界戦略のなかでの役割としての位置づけになっている。そのためにアメリカの法律でも禁止している住宅密集地の基地を平気で使っている。地位協定でも日本人の主権はない。こんな関係を清算する意味でもこの国の在り方は、今後の日本の参考になる。私は、承認して国交を結び、助け合う形で連携することを提案します」革新党の宮本は言った。

「見解を異にするね」山田が言うと

「まあまあ冷静に。マスコミ関係者の皆さんはどうですか」

「今回の調査に参加させていただきありがとうございます。我々一同の意見でなく、私の個人的な意見としては、この国を承認してもよいのでないでしょうか。確かにこの国の発足には、不可思議なところがあります。しかし、あまりにも今の日本とは、差がありすぎます。本土とは離れていることから、独立を承認して切り離したほうが得策でないかと思います。将来は、日本語圏で憲法も類似しています。合体することも可能だと思います」佐藤がいった。

「分裂したとの見方もあります。極端ですが、戦争放棄を宣言し武力も持っていない、日本への敵対意思もない。日本の防衛においても安全だと思います。この国は、インフラが比べられないほど高い技術力で整備されています。今の日本政府や経済界では、取り込むほどの包容力はないと思います。却って混乱するのでないかと思います。だからしばらくは、交流を通じて日本の土台を強化するのが得策でないでしょうか」経済評論家の和久井が言った。

「おもしろい意見ですね」田中が言った。

毎朝新聞の白井が言った。

「この国は、資源がない。日本よりない。だけど技術力はある。技術力で勝負しようとしている。この点は、日本と同じだ。また、他民族国家的色彩をとりながらも、日本語を取り入れて住民を選別している」

「考えすぎでないのかね」田中言うと。日日新報の轟が補足した。

「いや、考えすぎでないかもしれないですよ。日本語は、結構難しい言語です。この国の住民で日本人いや元日本人となるのかな、元日本人以外の人たちは、みな日本語がうまい。元日本人以外は、皆若いひとが多い。国民になる資格審査を日本語にすることで選別しているのでないかと思います」続いてカメラマンの平良が発言した。

「私が、昔アフリカに取材で行っていた時、子供たちを集めて日本語の学校を開いていたところを見ました。ODAか海外協力支援隊の人達だと思ったのですが、なぜアフリカで日本語学校かなと思ったものです。この事は、関係していますかね」

皆、平良のほうに顔を向けた。

「もしそうならば、渡航履歴をあらいだせば、関係者の洗い出しに役立つかな」総務省の山口が発言した。

「個人情報ですよ。犯罪者でないですからね」

「反乱分子となれば、国の安全面から調査しなければならいでしょ!」防衛省の前田が怒ったように言った。

「一応この国の幹部として公表されている人物については、政府として調査しています。全ての個人をとなると個人情報や国民の反感を招きかねないのであまり薦めませんね」総務省の竹下は言った。何か、日本国内で共和国関係者の調査に、行き過ぎた調査が行われているのでないかとの不安の影がよぎった。皆それを一瞬だが感じた。


                         二


 日本の調査団が、打ち合わせしている頃、共和国側も打ち合わせをしていた。打ち合わせに、警備局のジョンソン主任がいた。

「侵入者は、全員撤退したようだ。再度何らかの形で入国してくるだろうが。これからが本格的な警備になるだろう。今まで訓練したものを発揮するだけだが」ジョンソンが言った。ジョンソンは、かつて在日米軍の一員で沖縄にいた。ベトナム戦争にも参加していた。ベトナム戦争の末期に南ベトナム政府が崩壊する時脱出を指揮した。あまりその事を語らないが帰国後退役した。心が病み放浪していた時に民主会の石田に会った。心を取り戻すのに石田と会って2年かかった。退役して5年目である。年齢は30過ぎていた。石田が伊藤初代会長に会わせてくれた。伊藤は宗教家だと思った。面白半分で座禅を組んだりして仏教でいう修業をしていた。そして東郷主席と会った。東郷は厳しい訓練をジョンソンに強いた。理想と言う名の基で訓練を行わされた。軍隊とは別の意味で厳しい訓練だった。20年たった今日、警備隊として若いメンバの教官を兼ねて今日に至っている。現場が好きだから肩書は常に現場にいれる主任としてもらっている。隠居したくない思いからである。そのジョンソンが報告した。

「調査団が退出したら、通常の警備体制にしてくれ」内務省警備局長堺が言った。

「日本国内や世界の反応は、どうかね」外務大臣が聞くと堺は

「世界は、吃驚していますね。承認する国は、日々ふえています。日本は、承認するかについては五分五分です。逃げ出した人達が国を造った、日本国憲法をまねて造ったとの反発がありますね。この国の建設に関わった資金力とスポンサは誰かと話題が盛り上がっています。変な方向に振り向けているところもあります。内閣調査室などの情報機関で民主会を調査し始めたとの連絡が入っています」

外務大臣はうなずきながら言った。

「ここまでは、想定内だ。主席や総理は、日本に残っているメンバが、今後の動きに耐えられるか心配している。その他の国で活動しているメンバも同様だ。何かあれば、この国へ移送する体制も確認しておいてくれ。独立承認の世論多くなるならば、皆、全面にだし、我が国の人間として堂々と名乗らせ、動ける状態にしたい」

「経済的な締め付けは、出てきますかね」

「我が国の経済封鎖は、無意味だろう。各国の支持者達に対しては、密輸、脱税などで流通の道か資金力の道を封鎖させるかもしれないね」外務大臣の本山が言った。

「軍事的な動きは、どうですか」

「警備局長どうだね」堺に聞いた。

「孤立した島国だから、闇に葬ることが可能として各国は動いたかもしれないが、今回のようにネットで世論に発信することで闇に葬るような軍事介入は出来なくなりました。我が国を混乱させる方法として、情報機関などを通じて侵入調査させたようですが、これも失敗しています。今後は、交流などで我が国の文化や生活習慣をマスタして混乱させるやり方に切り替えるでしょう。それと資金を断つやり方を模索するはずです。守勢に回っていては、防ぐことに限界が出てくると思います。世界を引っ張る攻撃戦略が最大の防御になります。当初の方針通りに進めることが必要かと思います」佐古情報室長が言った。

「理想の理念だね。現実の対応に追われると埋没するところだったね。各部隊、各省庁に初心貫徹を再度伝えておいてくれ」

「武力介入は、ないと思ってかまわないね」内務大臣の朴が言うと。“武力介入のタイミングは外した”と警備局長は言い切った

「各国の艦船は、いつ引き揚げるかね」

「日本の調査団が引き揚げるタイミングでしょう。待機する根拠がなくなります」

「今回警備状況は、あまりにも隙だらけの状態をみせておきました。どうとるか見ものです。アメリカは、近くの島の基地を強化すると思います。世界戦略も見直すでしょう。資金面で日本に圧力をかけると思います。軍事力の強化にはお金がかかりますからね」

「ハハハ・・。我が国は、軍隊を持っていないけど、世界最強の国民がいるから問題ないか」

「日本もいら立つでしょうね。ところで国連加盟後の国連出席は、どうしますか」

「主席は、あまり乗り気でないけど、首相は、出席する気になっている」

「独立承認した国を招待しますか」

「招待については、外務省と内務省で検討しています」

「ところで、調査団はどうだね」

「今回の調査団の人物は、優秀な人達が多いですね。それとマスコミ関係者も5名ほど注意する人物がいました。住民と仲良くしようとする振りをしながら、鋭い質問をしていました。平良カメラマンは、依然アフリカで会ったことがあると学生のケニーがいっていました。宮本という議員は、社会主義社会を建設しているのかと聞いていました。西区の農業やっている寺田さんが、彼の選挙区出身でした。向こうは気がつかなかったようですけどね」

「こちらの顔がテレビに映っていたりしているから身元がわかり、つながりを調べるだろうね」外務大臣は、一瞬暗い顔をした。

「ここまで来たのだから、弱気はだめだね。仲間のためにも、何より未来のためにも」皆うなずいていた。


                         三


 東郷は、海岸の砂浜を散歩していた。空には沢山の星が輝いており、熱い昼間と違い、潮風が気持ちよかった。人工の島であるが、出来るだけ自然に近い形態をもつ島にした。

 ここまでくるのに50年の月日を費やしていた。誰もできると思わなかった。国を作ろう。理想の国を。単純な発想からよく仲間が集まったものである。60年安保闘争の仲間たちが立ち上げた。70年安保闘争の仲間が加わり広がった。しかし、それだけであった。理想は、所詮空想であった。喧嘩もし、挫折し離れて行った仲間もいた。名目会員が多くなっていた70年代の中ごろに東郷は、2代目会長になった。バブルに投入していた時に彼らに会ったのである。名目会員と実践会員に分けた。60年闘争の仲間たちが作った民主会を解消の話しもでたが、夢来人むらびとかいと希望の会を民主会の会員の中に造った。夢来人会は、国内に夢来むらを作る事を主とし、希望の会は海外に夢来むらを作る事を目的とした。彼らと会い日本国内に10か所を目標とした。同様に海外も10か所を目標にした。

「主席。ここでしたか。主席は、この国の顔になったのですから、これからは、用心してもらわないとこまります」

「おいおい。時代劇じゃないからね。それにこの国は、理想を目指している国、治安が一番保障された国として立ち上げた国だぞ。石立君。これからは、君たちの時代だから」

「何かあったのですか? 物思いにふけっていましたよ」

「玉には息抜きをしないとね。きれいな空だ。静かで波の音が聞こえてくると、昔の出来事が打ち寄せる波の如く浮かんできたところだよ。それを君が中断させたところだ」

「そうですか。失礼しました。いい島になりましたね。ここまで30年ですか。先日、老人会のメンバの人たちと飲んだら思い出話で花が咲きましたよ」

「何か用があったのでは?」

「そうそう、総理が打ち合わせしたいと言ってきました」石立は、東郷の専属秘書官である。武術百般で語学堪能であった。東郷の秘書を五年前から担当していた。

石立の親と東郷は、幼馴染であった。石立の父親は、20年前に病気で亡くなっていた。石立が12歳の時であった。妹が一人いた。大学卒業する時、石立の母親の勧めで訪ねてきた。父親の遺言で大学卒業する事ができたなら東郷に会う事が遺言だったと聞かされ会った。その時に父親の手紙を渡され、東郷に渡すようにと託された。東郷はこの島に来る直前だった。当時、石立は就職が決まっていた。妹は学生で母親を少しでも楽にさせてやりたいとの思いもあり大手の情報処理会社に就職が決まっていた。東郷に会い、父親の手紙をみた時から東郷の元にいる。母親に東郷の元に行くと話した。母親は何も言わないで静かにうなずいたと言う。妹も賛成してくれた。妹もその後この国にきた。母親は3年前に来た。東郷は厳しかった、修業はつらかった。何で父親はこの空想みたいなものを望んだのだとつらい時は思った。今思えばよく耐えられたものだと思う。3年前から東郷の秘書をやることになった。

 潮風が気持ちよかった。暗い浜辺に月の光だけが注いでいた。東郷は父親みたいなものだが雲の上の存在でもあった。


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