彼の秘密(Ⅱ)
開いたドアの向こうには瞬がいた。
「愛?」
「瞬大丈夫?…風邪だって聞いたけど」
「大丈夫だよ…わざわざ来てくれてありがとう」
瞬がそう言うと私は届け物を彼に手渡す。
「明日は学校来れそう?」
「うん…たぶん行けるよ」
「そっか…」
よかった。
瞬の声。いつもと同じだ。
顔色も悪くないし…
顔が見れてホッとした。
「じゃぁ用も済んだし……私そろそろ…」
ホントはもっと一緒にいたいけど…
明日は元気で学校へ来てほしいから、
今日は我慢して帰るね?
「そう…そこまで送ろうか?」
瞬が私に言う。
「ぇ…」
ちょっとだけ胸がドキドキした。
高鳴る鼓動を押さえながら首を横に振る。
「大丈夫」
「そう?」
「うん…風邪、振り返ったら大変だよ?」
「…そうだね」
瞬が申し訳そうにそう言った。
「でもありがとね?」
瞬は首を振って言う。
「こっちこそ、ざわざわ来てくれたのに何も出来なくってゴメンネ?」
瞬は優しい。
「来てくれてありがとう」
でもその優しさに己惚れたら駄目なんだ。
それがなんだか…ちょっぴり切ない。
「じゃぁね…」
そう言って私はドアを締めよとした。
ドアが閉まるホンノ僅かな隙間から
「瞬チャン」
誰かの声が漏れる。
扉はそのまま閉まる。