レプリカ(Ⅰ)
月曜日。
教室のドアが開く。
その瞬間、私は注目を浴びた。
皆の話声(ヒソヒソ声)が聞こえてくる。
『あれ…清水さん?』
『どうしたの?あれ??』
『さぁ?』
『何かあったの?』
『でもあれ…』
そんな私の元へ近寄ってくる足音。
「愛子!?どうしたの!??」
朝海…
「ちょっとね?…やっぱ、変かな?」
朝海は少し驚いていたけど、首を横に振って言った。
「全然…寧ろ可愛くなったんじゃない?」
可愛い…
「ありがとう…」
初めて、言われた言葉かも…
なんだか、少しくつぐったい。
頭の両端で止めていた髪を下し、
少し明るめの茶髪。
ただまっすぐに下していただけの前髪も、
右から左へと分けた。
いつも限界まで閉めていた、制服のボタン。
上からふたつ程、胸元が見えるか見えないかぐらいまで開けた。
膝下まであったスカート。
何重にも折って、膝上まで上げた。
如何にも、真面目そうに見えていたメガネ…
コンタクトにした。
慣れない下手くそなメイク。
見よう見まねでした、初めてのメイク…
長さは足りないけど、
あの人と同じ髪型(前髪込み)。
あの人とみたいに、明るい黄色じゃないけど、明るい茶色。
あの人みたいに、胸も無いし、ナイスバディー(セクシー)でもないけど…
少しだけ外見を派手にした。
少しだけ…自分を変えてみた。
…全部、あの人の真似だけど。
私、分かったんだもん。
私みたいなお子ちゃまじゃ…駄目だって事。
彼に…少しでも近付きたいから…
そんな中、瞬が登校して来た。